AIには書けない自分の強みをみつけよう

2022年7月29日

新年も迎え、冬休みも終わり、新学期。あれよ、あれよという間に1月も後半となり、塾業界は大忙しな時期を迎えている。

私立の専願入試を皮切りに私立前期入試、公立推薦入試、公立一般入試と続く。その中でも今の時期は、私立専願、公立推薦入試、私立前期の対策にてんてこ舞いだ。

特に公立推薦入試は、自分がどうしてその高校に入学したいのか志願理由や自己PR文を書き、さらには面接対策も必要になる。

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毎年、ほとんどの生徒が志願理由や自己PRを書けずに頭を悩ませている。学校で書き方を教えてもらったこともないし、練習したこともないからだ。

でも、「用紙は渡しておくから、次までに書いて来てね」と言われる。生徒たちはどうすれば良いのかわからず、毎年途方に暮れている。

単純に「そちらの高校に入れてください」と書けば良いわけではなく、自分がどういった人間で、どういった志を持って入学を希望するのか高校側に伝えられなければならない。

面接対策の原稿も然り。とことん自分と向き合ってもらわなければならない。

向き合うって? どうすれば向き合える?
私は1つ1つ生徒に質問を投げかけ、自分自身と向き合ってもらいながら生徒に文章を書いてもらう。

最初は「自分とは」「自分の強みとは」と言われてもまったく書くことができない。自己肯定感が低いというより、自分について考えてみたことがないからである。

そして、こればかりは、「自分」で書かなければ誰にも書くことができない。

単なる課題作文であれば、上手な人が書いた文章を学んだAIの方がきっと上手に書くだろう。

だが、唯一無二の「自分」について……となるとそうはいかない。AIは学んでいないことは絶対にできないし、AIは自意識を持たない。ここが人間と大きく違う。

「自分とは……」と私自身が自分の人生を振り返ったとき、感情が大きく揺さぶられたときに自己が1つ1つでき上がってきたように思う。

それは自分の子育てを通しても感じた。

その時々の感情や思いが重なって自己ができ上がり、学びも生まれる。同じ経験をしたとしても、感じ方や受け止め方は千差万別。

その出来事を強みとして自己成長の糧にするか、苦手意識として残り自己成長の課題となるかは、AIでは判別できない。プログラミングでは組み上げることができない。

AIは「出来事」を学ぶことはできても、「感情」を学ぶことができないからだ。そして、それは他人にもできない。自分の心は自分にしかわからないからだ。

人の能力を評価して数値化するなど、AIで判別可能なところもあるだろう。

しかし、フローチャートのように「YES」「NO」では測れないところにこそ、強みがあり、それこそが「個性」であると思う。

そして、私はこの「個性」を最大限に引き出す手伝いをしたい。どんなに手伝いをしたとしても、最後の最後は子どもたち自身で文章を書き上げなければならない。書き上げた文章はあまり手を入れず、その子のカラーを失わないようにしている。

少しくらいデコボコしていても、中学生らしくまっすぐな気持ちが伝わる文章こそ意味があると思うからだ。普段、何気なく発している言葉にこそ、その子の強みや個性が詰まっている。言葉こそが自分の心を映し出している。

綺麗な文章はAIに学ばせればいくらでも書ける。でも、デコボコでまっすぐな思いはAIでは絶対に書くことができない。

これからもっとAIも発達するだろう。それでも子ども達には自分の中にある「己」を見失わず、自分の個性を意識し、伝えられる人になってほしい。

そして、相手の個性も受け入れることができるような大きな心を持ってほしいと思っている。それは、今後ボーダーレスな世界がやって来たときに、彼らの大きな武器となると信じている。

AIでは測れない強みを見つけ、未来の自分へバトンを渡してほしい。

この記事を書いたひと

松本 正美
(まつもと まさみ)

「学ぶ力は、夢を叶える力!」松島修楽館代表。中学3年生の時に「将来は塾の先生になる!」と決意し、大学1年生から大手個別指導塾で教務に就く。卒業後、そのまま室長として10年間勤務。その後、新興のインターネット予備校で生徒サポートの仕事に携わった後、2013年に松島修楽館を開業。単なるテストのための勉強だけではなく、「どんな夢でも、正しい努力によって叶えることができる」ということを子どもたちに伝えるため、根本的な「学ぶ力」を育むことを重視した指導を行っている。2人の高校生の母。趣味はサックス、タップダンス。