現在のデジタル教科書の状況と今後の課題、海外のICT教育事情は? ―令和3年6月現在―

GIGAスクール構想により児童・生徒に対して端末を1人1台配布され、校内のWi-Fi環境も整いつつあります。

このような状況の中で、2021年6月、文部科学省は2024年度(令和6年度)から学習者用のデジタル教科書を本格導入すると発表しました。

デジタル教科書の発行状況および現在の普及率

令和2年度において、デジタル教科書の発行状況は、小学校で約94%、中学校では約25%程度とされていました。

これが、令和3年度においては、小学校・中学校ともに95%にまで達しています。

しかし、デジタル教科書の普及率については、文部科学省「令和2年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」によると、指導用のデジタル教科書の普及率は小中学校ともに約72%、高校で31.5%。学習者用のデジタル教科書は小学校で6.4%、中学校で5.9%、高校で5.3%にとどまっています。

学校における主なICT環境の整備状況等/文部科学省

諸外国のデジタル教科書・教材の使用状況について

日本国内では、デジタル教科書の普及がまだまだ進んでいませんが、諸外国の使用状況はどうなっているのでしょうか。

◎韓国

韓国では、デジタル教科書は法的根拠のある「教科書」のひとつと定義されていて、2015年から、すべての学校においてデジタル教科書の使用が解禁されています。

デジタル教科書の使用率は、2018年8月時点で小学校では80.4%、中学校では69.8%となっています。

◎オーストラリア(クイーンズランド州)

オーストラリアのクイーンズラインド州では、デジタル教科書は「教材」として位置づけられていて、教科書としては位置づけられていません。

少し古い情報ですが、2014年に8年生(日本の中学2年生に相当)を対象に行ったICT教育に関する調査では、ほぼ全員がデジタル教材・ソフトを使用していました。

また、2016年の調査によると、全体の約64%の学校がオンライン教材と印刷教材を日常的に併用しています。

◎デンマーク

デンマークでは、デジタル教科書は「教材」として位置づけられていて、児童生徒・教員・保護者・学校・デジタル教材をつなぐ「Uni-Login」というサービスにより無償でデジタル教科書を利用できるようになっています。

◎アメリカ

アメリカでは州によって異なりますが、電子媒体や電子機器を用いた「教科書」「教材」の授業での使用は認められていて、公立学校においては、デジタル教科書を無償で利用できます。

2015年時点で80%の初等中等学校でデジタル教科書を含むデジタルコンテンツを利用しています。

デジタル教科書メリットとデメリット、そして今後の課題とは?

デジタル教科書とは、子どもたちが学校の授業で使うことを前提に、紙の教科書と同じ内容をタブレットやパソコンで表示できるように電子化した教材のことを言います。

デジタル教科書イメージ/文部科学省

デジタル教科書のメリットとしては、次のようなことが挙げられます。

デジタル教科書のメリット

  • 文字やグラフ、地図などを拡大表示できる。
  • 音声や動画を再生できる。
  • 書き込んだマーカーやメモを何度でも修正でき、保存ができる。
  • 学力分析ができる。

一方で、デジタル教科書のデメリットとしては、次のようなことが考えられます。

デジタル教科書のデメリット

  • 視力低下の可能性がある。
  • 徹底したセキュリティ対策が必要
  • 端末の破損や故障のリスクがある。

また、今後の課題として費用の問題が挙げられます。

現在、義務教育の「教科用図書」の購入費は年間約460億円です。しかし、無償の対象となっているのは紙の教科書のみです。

デジタル教科書は紙の教科書と同様、1冊200円~2,000円程度ですが、学習者用のデジタル教科書は無償の対象外となっていて、購入に係る費用は市町村教育委員会等が負担することになっています。

つまり、場合によっては、保護者が一部を負担する可能性もあるということです。

デジタル教科書の今後の在り方等について、文部科学省は、次の小学校の教科書改訂時期である令和6年を見据え、有識者会議において検討を行うとしています。

デジタル教科書を導入するにあたり、今後検討しなければならないこととは…

デジタル教科書は、子どもたちの学びに対する興味を広げたり、深めたりする可能性があるツールです。

しかし、まだまだ検討しなければいけないこともたくさんあるのも事実です。

文部科学省は、今後の検討しなければいけないこととして、次のことを挙げています。

今後、検討する必要があること

  • デジタル教科書に共通して求められる機能や、デジタル教材等との連携の在り方
  • 障害のある児童生徒や外国人児童生徒への対応
  • 児童生徒の健康面への配慮
  • 教師の指導力向上
  • デジタル教科書を学校や家庭で円滑に利用するための環境整備の確保

また、文部科学省は、今後の教科書制度の在り方について、次のことについて検討する必要があると考えています。

今後の教科書制度の在り方についての検討課題

  • デジタル教科書にふさわしい検定制度について
  • 紙の教科書とデジタル教科書との関係について

■さいごに

コロナ禍において、教育現場でのICT化が急速に広まりました。

しかし、諸外国に比べると、まだまだ日本の教育現場でのICT化が遅れているのも事実です。デジタル教科書が本格導入されたあと、教育現場がどのように変化していくのか。

koedoでは、今後も観測を怠らないようにしていきたいと考えています。

koedo事業部

<参考>