文部科学省によるICTを活用した「学びのイノベーション事業」とは
子どもたちを取り巻く社会が大きく変化している現代。新学習指導要領が改訂され、文部科学省は、子どもの学びをさらに進化させるべく、外国語教育やICTの活用などに力を入れています。今回は、文部科学省が平成23年度から行っている学びのイノベーション事業についてご紹介します。
学びのイノベーション事業は、平成23年4月にスタート。2020年度に向けた教育の情報化に関する総合的な推進方策を取りまとめた「教育の情報化ビジョン」に基づき、総務省の「フューチャースクール推進事業」との連携とともに実施されています。
目的は、教育の情報化を通じて21世紀に求められる力を育成し、新たな学びを推進すること。これからの未来を生きる子どもたちが、学校での学びを活かして自主的に人生を切り拓いていく力を育むために、ICT教育の取り組みやその成果、実証実験の課題をまとめています。
主な調査研究事項は5種類
ICT教育の良さは、時間的・空間的な制約に縛られず、双方向の授業やカスタマイズが可能という点が挙げられるでしょう。
文部科学省の「教育の情報化ビジョン」では、ICTを活用した授業のあり方として、
- 基礎的・基本的な知識・技能の習得
- 思考力・判断力・表現力等の育成
- 主体的に学習に取り組む態度の育成
といった学力の3大要素に基づく学びの例が示されているため、情報通信技術を活用したICT教育の推進は、一斉授業の学びに加えて、一人ひとりに対応する個別学習、子どもたち同士が学び合い教え合う協働学習がより深化していくことが期待されます。
学びのイノベーション事業の調査事項は主に5項目。
- デジタル教科書・教材の機能のあり方
- ICTを活用した効果的な指導の開発
- ICTを活用した教育の効果の検証
- 特別支援教育におけるICTの活用
- 日常的なICT活用が子どもの健康に与える影響
実証校では、国語、算数、理科、外国語活動といった各教科のデジタル教材を研究するとともに、実際にそれらの教材を活用し、その効果についてアンケートや学力テストなどを行い調査・分析しています。
ICT教育の可能性は未知数
文部科学省の調査によると、ICTを活用した教育の効果として、
- 画像や動画を活用したわかりやすい授業による、学習意欲の向上
- 児童生徒の学習の習熟度に応じたデジタル教材活用による、知識・理解の定着
- デジタルデバイスや電子黒板等を用いた発表・話し合いによる、思考力や表現力の向上
を挙げています。
また、実際にICTを活用した授業を受けた生徒に対してアンケートを行った結果、小学校では90%以上、中学校でも80~90%の児童が、「楽しく授業をすることができた」「コンピュータを使った授業はわかりやすい」という肯定的な回答をしていることが報告されています。
一方で、コンピュータを使って発表してみたいか、コンピュータに文字や絵を書きやすいかといった項目に関しては、肯定的な意見が全体の約50%~70%台と若干低いことから、自主的な表現やスキルの習得が今後の課題と言えるかもしれません。
しかしながら、「もっと多くの授業でデジタル教材を使った勉強をしたい」という肯定的な回答が70%以上を占めるのを見ると、ICT教育の継続によってこれらの能力が将来的に伸びることが期待できそうです。
また、ICT教育活用に対する教員の意識に関するアンケートでは、授業について約80%が全肯定的に評価。実際にICT教育が、児童の意欲や理解を高めるだけでなく、表現や技術を高め、思考を広げることにつながるという効果を感じていることがわかります。
実証結果をふまえると、ICT教育の可能性は未知数。まだまだ、すべての子どもたちにICT教育が行き届いている状態ではありませんが、これからますます発展することが期待できるのではないでしょうか。
出典:学びのイノベーション事業実証研究報告書/文部科学省
この記事を書いたひと
basico
1980年生まれ。埼玉県在住。小5の息子の母。大学では初等教育を専攻し教員免許を取得するものの、アパレルの世界へ飛び込む。結婚後、接客業を経てライターの道へ。仕事においても子育てにおいても“伝え方”に奮闘中。座右の銘は「継続は力なり」。日々の“気づき”を大切にしています。