小学校の「社会科」におけるICT活用の事例やメリット 教師に求められるスキルとは
GIGAスクール構想による1人1台端末が推進される中、各教科でICTをどのように活用していくかについて議論や研究が活発になされています。今回は、文部科学省の資料を元に、社会科におけるICT活用の事例のほか、教師に求められるスキルについて解説します。
社会科におけるICTの活用
文部科学省の資料によると、小学校の社会科でのICT活用は、情報収集をする過程で「何が必要か」ということを読み取ったり、さらにはその情報を分類や整理してまとめたりしながら、共有していく授業の構築がポイントになるとされています。
そのためにはまず、すべての児童が日常的にICTを活用できるように、タブレッドなどのデジタルデバイスや、通信環境の整備を進めることはもちろん、教師がICTを効果的に活用できる授業設計が必要です。
主な学習過程のイメージとしては、学習課題の設定後、社会のさまざまな事象を知り、クラスで問いに対する気づきや疑問などを出し合います。次に、課題解決の見通しとして、問いに対する予想や仮説を立てたり、それに対する調査方法を考えたりしながら、調べることにつなげていきます。
この調べるという過程では、下記3点がポイントに。
- 情報を集める
- 情報を読み取る
- 情報をまとめる
ICTの活用は、これらの「調べる」過程において、とても有効だと言えるでしょう。
小学校および中学校社会科、高等学校地理歴史科・公民科の学習指導要領解説参考資料には、情報活用能力の育成とICT機器の活用を図る学習活動の一層の充実という点が追加されており、社会科の授業では特に「社会的事象などについて調べてまとめる力」が身に付く学習が求められています。
また、その情報に対する自分の考えを共有するという場面や、学習過程を振り返るといった場面でもICTの活用が有効のようです。実際に、どのように子どもたちの学びの場面で活用されているのか、具体的な例を見ていきましょう。
小学校の社会科におけるICT活用の事例
小学校第3学年の「身近な地域や市の様子」「地域に見られる生産や販売の仕事」の授業では、市内の見学時にタブレットが活用されています。
ICTの活用は、写真や動画機能を使った記録や、インタビューの録画などを可能にします。そのため、従来のメモをとって記録するといった活動よりも、効率的に情報収集することができるだけでなく、メモだけでは見えにくい情報を可視化できるようになります。
例えば写真や動画の撮影は、見学時に気づかなかったことに後から気づくことができるでしょう。何度でも繰り返して表示したり、再生したりできるデジタルデバイスの使用は、調べたことをベースに、物事をより深く考えていく力を身に付けていくことにもつながります。
また、ICTの活用は、収集した情報を元にクラスで話し合うといった場面でも有効です。文章以外の表現で情報をまとめられるということは、表現の幅を広げ、相手にわかりやすく伝えやすいように情報発信できるという良さもあります。
さらに、「地域のマップづくり」の授業では、土地利用や交通、公共施設、地形など、各グループに分けて調べた情報をひとつに重ねて1枚にまとめるということも簡単にできるように。すなわち、自分のグループの問いだけでなく、他のグループが調べた情報と関連付けて市の特色を考えることを可能にしてくれるのです。
このことから、ICTの活用は「情報収集し、読み取り、まとめ、共有し合う」場面において、子どもたちの学習活動の幅をより広げてくれる有効な手段になると言えるでしょう
子どもたちが主体的に学べる授業の構築が重要
教師は、授業を進めるだけでなく、子どもたち一人ひとりが、取り残されることのないよう、ICTの使い方の提案やフォローなどを積極的に行っていかなければなりません。
社会科の授業においては、ICTを効果的に授業に取り入れ、子どもたちの学習に対する意欲や興味・関心を高めていくとともに、わかりやすい授業の提供が求められるでしょう。
また、情報を取り扱う場面においては、情報モラルについての指導も忘れてはいけません。
小学校の社会科が目指す、社会的な事象を知り、主体的に問題意識を持って、解決していく力を育むために、これからますます教師のICTスキルや考え方が問われていくと言えるのではないでしょうか。
■出典:社会科,地理歴史科,公民科の指導におけるICTの活用について/文部科学省
この記事を書いたひと
basico
1980年生まれ。埼玉県在住。小5の息子の母。大学では初等教育を専攻し教員免許を取得するものの、アパレルの世界へ飛び込む。結婚後、接客業を経てライターの道へ。仕事においても子育てにおいても“伝え方”に奮闘中。座右の銘は「継続は力なり」。日々の“気づき”を大切にしています。