【STEAM教育①】STEAM教育とSociety5.0。いま、社会に起きている変化とは?

2022年12月20日

はじめに

STEAM 教育というと、理数系英才教育というイメージが根強く残ります。

背景としては、STEAM が Science の S、Technology の T、Engineering の T、Art(Arts)の A、Mathematic の M の頭文字をとった造語であり、それらが A を除き理数系教科だと認識されるためと思われます。

しかも STEAM 教育に取り組む学校が、SSH(Super Science School)等の公立進学校や、私立学校等、学力偏差値が高い学校が取り組む例が多いことが、理数系英才教育のイメージを強くする理由にもなっているのでしょう。

 私は兵庫県加西市教育委員会が市内全ての小中学校、特別支援学校、および公民館において社会教育におけるSTEAM 教育の推進事業に縁あって関わりはじめ、STEAM 教育について探究を深めていく機会に恵まれました。

「加西 STEAM」と名付けられた STEAM 教育は、理数系英才教育とは一線を画します。

そもそも学力偏差値がいまだ重要でない未就学児や小学校低学年から、すでに偏差値とは無縁の生活を送るシニアを含めて、STEAM教育を推進しようというのです。

理数系教育どうこうはさておき、STEAM教育が IT 技術の革新と深い関係があるのは事実です。しかしITの技術革新と、STEAM教育の間にある重要な社会変化を無視して、STEAM教育の話を するのは非常に危険だと思います。

このシリーズでは STEAM教育の切り口のひとつとして、いまの日本が抱える教育の課題に向き合いながら、ここからさまざまな人が持論を展開するきっかけになればよいと思いながら記します。

社会の何が変わったのか

ITの技術革新と社会の変化の話をするときに、複雑で説明の難しい事象をひと言で表すことができる「Society5.0」という便利な言葉があります。

この便利な言葉(概念)があるおかげで、「Society5.0の社会」の姿を一人ひとりがしっかりと理解しないまま、目の前の課題に取り組もうとしているような気がして仕方がありません。

Society5.0というのは重大な社会変化であるにも関わらず、この言葉の定義をおろそかにすることで同じ言葉を使いながら、一人ひとりのイメージしいているものが違っているということが起こりかねないと感じて います。

STEAM 教育が重要視されている背景も、この Society5.0 と無縁でいられないのです。

Societyとは…

  • Society1.0 は狩猟社会
  • Society2.0 は農耕社会
  • Society3.0 が工業化社会
  • Society4.0 は情報化社会

と定義されています。

ここで重要なのは、Societyの変化が、教育の変化に直結しているということです。社会が変わるのですから、コミュニティにおける教育そのものの指針が変わるのは当たり前です。

狩猟社会から農耕社会に変わるときに、社会全体に起きた重大な変化は、次の3つです。

  1. 定住化
  2. 富の集積
  3. コミュニティの拡大

この3つの変化を受けて生まれた教育方法が宗教と教会、日本で言えば仏教とお寺だという見方は突飛でしょうか。コミュニティが大規模化し、村落が生まれ、国家が生まれます。人が集団で生活するときのルールづくりとルールの教育が宗教という形態を取ったと解釈したとき、Society の変化で劇的に教育手法が変わったと見ることができます。

同じように農耕社会から工業化社会に移り変わるときに生まれたのが学校と捉えています。機械化が進み大量生産・大量消費の社会になったときに必要だったのが、質の高い労働力と、優秀な消費者です。

この社会変化を受けて生まれたのが学校で、集団行動としての規範意識、文字を通して指示命令などを理解する識字率と読解力が社会全体に教育されたと捉えられます。工業化社会から情報化社会への変化は、教育体制が変わるほどの時間を要せず移り変わってしまっています。

そしていま Society5.0 が到来しています。と同時に世界中で教育改革が行われています。 それほどの劇的な変化が、Society5.0 にはあると考えられます。 この Society5.0 という社会を理解しようとするとき、教育に変化を起こすような重大な変化が3つあると私は考えています。

教育に起きた重大な変化

  1. データの逆流現象
  2. 中央集権構造から自律分散構造への変化
  3. 多様な価値の多元化

この3つの変化はすべて、ITの技術革新が起こした変化と言っても過言ではありません。そしていま STEAM教育が注目されている理由は、この Society5.0 の重大な変化に対応するためだと考えています。

この記事を書いたひと

藤井九曜

田畑 豊史
(たばた とよふみ)

学習塾等教育現場で利用するシステムやアプリケーションを開発してきた文系出身アウトドア派のシステムエンジニア。
趣味は登山。娘が小学生のうちに100名山を一緒に登って回ろうと計画。7歳の娘が現在22座登頂。しかしコロナ禍でペースダウン中。