【STEAM教育⑤】  教育改革と教育DX、そしてSTEAMとの関係性

ビジネスの世界では、すでにあたり前のようにDXという言葉が使われています。

実際に中小零細企業がDXを進められているかという問題はさておき。
さらに、大企業でもそれが本当にDXなのか? という問題もまずは横に置き…。

世の中的にDXを進めていかないと、社会が回らなくなってくる、あるいはビジネスが立ち行かなくなってくるという認識は強くなってきているように思います。

まずはそもそも、DXとは何なのか? というところから考えると、DXはデジタル・トランスフォーメーションの略で、直訳すると「デジタル技術による変容」です。

英語圏において、「Trans」を「X」と略すことが一般的なため、日本においても「Digital Transformation」を「DX」と略しています。

ただ、デジタル技術による変容と言っても分かりにくいので、ここでは単純なイメージ図で表してみます。

デジタル変容(イメージ)
デジタル技術による変容(イメージ)

私たちはこれまで、地球規模的な経済の拡大と加速度的に進む科学技術、そしてそれらに伴う社会問題の増加に対し、その解決を考えていくサービスを開発してきました。そして、これらに多大な経費をかけながら、機械化や業務効率化、IT化、システム化等を進めてきたのです。

そのほかにも労働者派遣法を含めた労働力確保の仕組みを作ったり、子育て政策を進めながらの女性労働力の活用を考えたり、定年の延長を含めてシニア労働力を確保したり。

さらに外国人労働力の確保(それぞれ思惑はあったとしても)などもしてきました。

これまではなんとかバランスを保ってきた天秤が、このままの従来の対策では、どうにも問題の拡大に対応できそうにないという危機感が生まれています。

それは経済の成長や技術の進展が、どうも個々の人間の幸せに寄与してないのではないか? という疑問を生じはじめたからだと考えます。

「働き方改革」をはじめとする、人の生活スタイルそのものの見直しは、天秤の右側にかける力が小さくなる一方で、天秤の左側にかかる社会問題が大きくなっているということです。

DXはこの状況で考えられている方法だと解釈するのが理解しやすいと考えます。イメージで言えば、下図のように考えることです。

イメージ
デジタル技術による変容(イメージ)

つまり、DXで求められているものは、単純に力点に掛ける「力」を増加させる方法としてIT化や、機械化、あるいはAIの活用ではなく、支点そのものを動かして力点に掛ける負荷を減らせないか? ということです。

そのためには、現状を改めて俯瞰的に捉え、価値そのものを見直し、新たな支点がどのポジションにくるのかを考えていくことが必要になります。

それでは、教育におけるDXとは何でしょうか?

GIGAスクール構想事業において、児童・生徒全員がIT端末を利用できるようになり、授業におけるデジタル教材やアプリの活用が考えられ、校務のデジタル化が検討されています。

しかしこれは単純に、教育における天秤で考えれば、力点に掛ける「力」の増加策です。

実際に学校現場で働く先生方からすれば、やるべきことが減っていないのに、新たに覚えなければいけないことが増えたり、これまでの業務フローに加えて作業が増えたりと、負荷が増すばかり…という感じです。

2020年教育改革で、これからの日本でどのような教育を行っていこうとしているのかが示されました。

このビジョンを受けて本来教育に携わる人は、支点の移動を考える必要があります。

まず、今までの教育とこれからの教育を考え、価値の見直しを含む教育全体のバランスを考える必要があるのではないでしょうか。そのうえで、日本が少子化とともに人口減少社会に入り労働人口が減っていることを踏まえ、どこに支点があれば行おうとしている教育と業務のバランスが成り立つのかを考える……。

そこから業務の見直し、定常業務に係る作業の最小化、代替手法としてのデジタル技術の活用――DX――が始まるのではないかと考えます。

では、DXを行うための最初の一歩は何でしょうか。
それは、「決める仕組み」と「動く仕組み」を整えることです。

VUCAの時代、すべてをパーフェクトに整えて、間違いのないように物事を進めることは不可能です。どんなに完璧な計画も、一瞬先に前提そのものが変わってしまうのがVUCA時代だからです。

とにかく「動く仕組み」、そして動きながら「決める仕組み」を整える必要があります。

Society Transformation & Environment Adaptive Management(社会変革と環境に対して、適応していくためのマネジメント教育)

そんなマネジメント手法そのものを体験的に習得し、一人ひとりの興味関心や資質に応じて個別最適な学びにつなげていくのがSTEAM型教育の枠組みです。

教育の変化は、児童・生徒の学びに留まらず、同時並行的に先生自身、学校管理者、教育委員会や地方行政、そして保護者を含めた地域社会全体の枠組みの見直しを、いずれは考えていくことになるのだろうと想像します。

しかし、最初は小さく、まずは手の届くところから始める。
そこからの試行錯誤もまたSTEAMの取り組みと言えるのではないでしょうか。

この記事を書いたひと

藤井九曜

田畑 豊史
(たばた とよふみ)

学習塾等教育現場で利用するシステムやアプリケーションを開発してきた文系出身アウトドア派のシステムエンジニア。
趣味は登山。娘が小学生のうちに100名山を一緒に登って回ろうと計画。7歳の娘が現在22座登頂。しかしコロナ禍でペースダウン中。