【小学生へのスマホの普及】スマホがもたらす意外な効果、使用ルール作りのポイントとは?

近年、子どもを持つ親にとって「子どもに何歳からスマートフォンを持たせるか」というのは、大きな悩みのひとつになっています。

子ども家庭庁が令和6年に行った調査によると、10歳以上の小学生のうち4割以上、中学生になると8割以上がスマートフォンでインターネットを閲覧していることが分かります。

インターネット利用率
インターネット利用率(機器・学校種別)/子ども家庭庁(最終閲覧日:2025.3.14)

実は子どもにスマートフォンを持たせる年齢の低年齢化は止まりつつあると考えられています。

モバイル社会研究所が令和5年11月に行った調査では、スマートフォンを持たせる年齢は男子が10.7歳、女子が10.5歳となっていて、これは3年連続ほぼ同じ状況が続いていることを示しています。

スマホ使用開始年齢
[小中学生]スマホ少輔開始年齢(経年変化)/モバイル社会研究所(最終閲覧日:2025.3.14)

男女別にスマートフォン所有開始年齢を見ると、男女ともに12歳がもっとも多く、中学生になるタイミングでスマートフォンを買い与えていることが推測されます。

スマホ使用開始年齢(男女別)
[小中学生]スマホ開始年齢(男女別)/モバイル社会研究所(最終閲覧日:2025.3.14)

親子間のコミュニケーションにスマホを利用

子どもにスマートフォンを持たせることで、親子のコミュニケーションはどのように変化しているのでしょうか?

KDDIが中学生・高校生の子どもにスマートフォンを持たせている保護者1,000人を対象に、「親子のスマホ意識と実態調査」を行い、その結果を令和7年2月に発表しています。

この調査によると、子どもにスマートフォンを持たせている保護者の72.6%が「コミュニケーションが円滑に取れている」と回答。さらに、70.8%がスマートフォンでのやり取りを通して「本音で話せている」と感じていることが分かりました。

子どものスマホ所有と親子関係
思春期の親子のスマホコミュニケーションスタイル(最終閲覧日:2025.3.14)

また、スマートフォンを利用した親子間のやり取りで印象に残っているエピソードとして、「お弁当がおいしいと伝えてくれた」「ケンカしたとき、心配していることをLINEで伝えたら素直に受け取ってくれた」「対面では言いにくいことをLINEで伝えてくる」など、感謝の気持ちや言いにくい言葉を伝えるときに、スマートフォンを利用していることが伺えます。

「使用ルール」は誰が決める?

子どもにスマートフォンを持たせている家庭では、どのようにスマートフォン使用ルールを決めているのでしょうか?

KDDIの調査によると、71.1%がスマートフォンを使用するにあたり、なんらかのルールを決めていて、その約半数が「親子で話し合って決める」と回答しています。

スマホ使用ルールの作り方
思春期の親子のスマホコミュニケーションスタイル(最終閲覧日:2025.3.14)

また、スマートフォン使用ルールを作る際に「子どもの意見をどの程度取り入れているか」という質問に対しては、65%が「半分程度取り入れている」と回答。その理由を複数回答可能な質問をしたところ、「子どもに責任を持たせたいから(48/3%)」がもっとも多く、「子どもの意見を尊重したい(44.6%)」、「子どもに納得してもらいたいから(39.5%)」と続いています。

スマートフォンが親子関係に与える影響は?

子どもにスマートフォンを持たせたことで、親子関係にはどのような変化がおきているのでしょうか?

KDDIの調査によると、スマートフォン使用ルールを「親子で話し合って作る」家庭では、「決めていない」家庭や「親が決めている」家庭よりも、子どもとの会話や話題が増えていると感じている割合や、親子間の信頼関係が強まったと感じている割合が高いことがわかりました。

さらに、「親子仲はよい」「親子のコミュニケーションが円滑にとれている」と感じている割合も高いことから、スマートフォンの使用ルールを親子で話し合って決めたことが、親子関係に良い影響を与えていることが伺えます。

子どもにスマホを持たせたことによる親子関係の変化
思春期の親子のスマホコミュニケーションスタイル(最終閲覧日:2025.3.14)

スマホ使用ルール作りのポイント

インターネットやゲームは依存性が問題となっています。
兵庫県立大学の研究室が、東京や近畿地方など11都府県の17万8000人余りを対象に行った調査では、小学生の16.2%、中学生の24.1%、高校生の26.9%に、いわゆる「ネット依存」が疑われるという結果が出ています。

つまり、中学生と高校生のおよそ4人に1人は、「ネット依存」が疑われるということです。

しかし、スマートフォンやパソコンとまったく接点を持たずに生活することは、もはや困難だと言わざるを得ません。依存症対策全国センターとして調査・研究等も行っている「久里浜医療センター」では、ネット依存にならないよう、スマートフォンやパソコンと上手に付き合うためのポイントとして次のようなことを挙げています。

スマホと上手に付き合うためのポイント

  • 子ども専用の端末を用意するのではなく、親名義で購入したものを、一定のルールや条件を付けたうえで「貸し出す」という形を取る。
  • アプリやソフトのダウンロードも親の許可を受けて行うようにする
  • 購入する前にルールを決める
  • 使用場所や時間を決める。使用場所はリビングなど保護者の目の届くところにする
  • ルールは口頭ではなく書面にして、目に触れやすい場所に保管する
  • 違反があったときにはペナルティを設ける。ただし、一度の違反ですべてを取り上げたり、一切使用禁止したりするなど非現実的なものではなく、使用時間を守れなかったら翌日は使用禁止など、もとの状態に戻すことを前提にしたペナルティにする
  • 家庭内で決めたルールは親も守り、食事の時間などは家族とコミュニケーションを取る

さいごに

日本では平成22年(2010年)ごろからスマートフォンが普及し始めました。
それから15年後の現在、スマートフォンを持つことが当たり前の時代になっています。

子ども家庭庁の調査で、小学4年生にもなると約4割の子どもが自分用のスマートフォンを持っていることが分かっています。

子どもにスマートフォンを持たせたことで、対面では伝えにくいことや感謝の気持ちを伝えるなど、スマートフォンは親子間のコミュニケーションツールとしての役割を果たすようになってきています。

しかし、中学生の8割以上、高校生の9割以上がスマートフォンでインターネットを閲覧しているなか、「やめようと思ってもうまくいかないことがたびたびある」など、中高生のおよそ4人に1人にネット依存が疑われるというデータもあります。

スマートフォンやパソコンを使わない生活が困難である以上、上手な付き合い方を模索する必要があると感じます。国や自治体がネットの使い方を学ぶ教育をいっそう充実させるなど対策を行うことも重要ですが、使用する時間や場所など各家庭でもルール作りを行う必要があります。

ルール作りをする際に重要なのは、買い与える前に使用ルールを作ることです。親子で話し合ってルール作りをした方が、親子間の信頼関係が強まったというデータもあります。

この春、子どもにスマートフォンを持たせようと考えているご家庭は、まずルール作りから始めてみてはいかがでしょうか。

koedoでは、今後も小学生へのスマホの普及について定点観測を続けようと考えています。

(koedo事業部)

【参考】