子どもの発達が気になったら~教育アドバイザー・内海義彦氏インタビュー~

2021年11月4日

発達障害というラベルは無意味

最近、発達障害という名前が独り歩きしていますが、そもそも日常生活に支障なければ、わざわざ発達障害と言う必要はないんです。人はみんなデコボコがある。そのデコボコが大きすぎて、日常生活や社会で団体行動をするときに問題が生じて初めて、「どうするか」ということを考えたらいいと思います。

私のところに寄せられる相談として多いのは、「幼稚園のときはそんなことなかったのに、小学校に入ってからじっと座っていられない」というものです。

一般的に発達障害の診断を受けたとき最初に名前がつくのは「自閉症スペクトラム」という表現です。スペクトラムというのは連続体という意味なので、正常と異常との境目が“連続していて分けられない”ということ。

自分の好きな算数だったら集中できるけれど、嫌いな国語だったら集中できない。じゃあそれを障害かというと、他のところではまったく問題なかったりするので、障害という線引きは非常に難しいというわけです。だから、相談に来られる方にお話しするのは、得意な分野で座れる時間を長くしておけば、苦手な分野での座れる時間も長くなるということだけなんです。

困っていることを乗り越える工夫

要は診断名を付けるかどうかではなくて、その子の特性やどういうことで集中が切れるかを探る方が大切です。診断名が付こうが付くまいが、日常生活に支障があれば工夫しながら乗り越えていかないといけませんよね。

こういった問題は、適切な時期に適切な診断を受けることによって、その後起こりうるトラブルが回避されたり、親子のストレスが軽減されたりします。だからもし気になることがあれば、発達相談に行くのは早ければ早いほどいいです。

簡易的なチェックはインターネット上でもできますが、どうしても主観が入ってしまうので、市町村の発達相談を受けるとか、保健所に相談することをお勧めします。するとカウンセリングや観察を通して何らかの判断をしてくれます。費用もかかりません。

このときも診断名を付けてもらう必要なんてないんです。ただ相談をすればいいだけ。状況を伝え、どうすれば援助が受けられるか、どんな工夫ができるのかを聞きに行ったらいいんです。

とはいえ、診断名が付くことで親も子も楽になるということはあります。発達障害は「育て方が悪いんじゃないか」と親が非難されることが多いんですが、発達障害という診断が付くことで、「この状態は脳の機能の問題であって、育て方の問題ではない」ということがわかるので、親も子も自分を責めなくてよくなるし、人から非難されることが少なくなるからです。

療育のメリット①

各自治体には療育センターがあって、子どもと一緒に遊びながらルールや言葉の遣い方を教えてくれます。

発達障害の問題というのは社会性の問題なので、コミュニケーションが下手だったり、自分の思いが伝えられなかったり、人から言われたことを間違って理解したりということが起こり得ます。

それが療育の中でコミュニケーションの取り方を訓練していくと、子どもの表現の仕方が変わります。援助やサポートを得てもデコボコは残ると思いますが、いろんな人と関わることで早く発達しやすいんです。

療育のメリット②

例えば好奇心が非常に強くて動き回る子がいたとしましょう。授業中に歩き回ればマイナスだけど、外遊びで活発に行動できるのはプラスと捉えられますよね。TPOによって子どもの特性もプラスになったりマイナスになったりするので、療育はそこをコントロールしていきます。

家庭の中だけだと親しかいないので、どうしてもマイナスにしか目がいかないけれど、療育の場では第三者が強みを見出してくれたり、励ましたり、褒めたりするので、子どももどこで自分の特性を出したらいいか、抑えたらいいかというのを少しずつ学んでいくことができます。この第三者の存在が大きいんです。

子どもの発達はstep by step

子どもの発達の原理原則はどんな子でも同じです。発達のステップを飛び越えることは絶対に無く、順を追って発達していくので、その順番を知って、その子のいる段階を見極めることができれば、どんな子でも伸ばすことができます。

発達にデコボコがある子は、その差が大きいだけです。だから、小学校1年生であっても得意な国語は小学校3年生の教材を、苦手な算数は2歳3歳の教材を与えていけばいいだけの話です。子どもによって発達のステップの高さが違ったりはするけれど、必ず一段ずつ上がっていきますから。

その子に合ったものをどう選択していくのかは、親が勉強しないといけないですね。それにはやはり、いろんな場所に相談して情報を得るしか方法がありません。

お子さんのいいところ、言えますか?

子育てで大切なのは二つ。子どものいいところを探すこと。そのいいところを口に出して言うこと。親が他人に「うちの子はこういうところがすごいんです」と言うのを聞いた子どもは、表情がパッと変わります。そして、それを励みに自分の能力をますます伸ばそうとします。

これはどんな子どもにでもしてほしいことですが、特に発達障害と言われる子たちは自信を失いがち。だから、親がその子のいいところを褒めることが、子どもの生きる柱や軸となって自己肯定感をも育んでくれるのです。

■お話を聞いたひと

gemstone 〜心理・発達・能力開発研究所〜 代表 内海義彦

0歳から18歳までの3,500人以上の発達・教育相談、および教室のコンサルティングを実施。子どもの発達の違いに合わせた指導の工夫や指導技術を健常児にも用い、成果を上げている。

この記事を書いたひと

ライター:木下真紀子様

木下 真紀子
(きのした まきこ)

コンセプトライター。14年間公立高校の国語教諭を務め、長男出産後退職。フリーランスとなる。教員時代のモットーは、生徒に「大人になるって楽しいことだ」と背中で語ること。それは子育てをしている今も変わらない。すべての子どもが大人になることに夢を持てる社会にしたいという思いが根底にある。また、無類の台湾好き。2004年に初めて訪れた台湾で人に惚れ込み、2013年に子連れ語学留学を果たす。2029年には台湾に単身移住予定。