塾長から見た塾選びのポイント

2022年7月29日

日本には梅雨という季節があったはず……。梅雨を通り越して猛暑の日本列島。

あまりの暑さに体がついて行けない今日この頃。そうは言っても、刻々と時は過ぎ、あっという間に受験の季節を迎える。受験が視野に入ってきた今時期に、「塾、どうしよう?」と、みなさん思うようだ。

そういうこともあり、最近、塾の選び方についてSNSを通じて個人相談が多い。「うちの塾に来てください」と言いたいところではあるが、物理的に通えない。一般的なアドバイスとなってしまうが、最適解になるようにお話している。

塾というのは子どものタイプによって選ぶ必要があるので、すべてのお子さんに当てはまるとはいえないが、私の考える塾の選び方をまとめておきたいと思う。

私が考える塾を選ぶときの最大のポイントは「先生との相性」だ。

ここで、「先生との相性」というと、「子どもと先生の相性」と思いがちだが、私は「お母さんと先生の相性」がそれ以上に大切と思っている。お母さんがその先生を信頼できるかどうかが、一番大事だと思っている。

子どもは何だかんだで、その先生の指導に順応していく。子どもが拒絶反応を示さない限りはお母さんとの相性を重視して良いと思う。

思春期になると、反抗的な態度を取られてしまったりして、子どもからの情報が聞き出しにくくなる。私も受験生の母という経験があるが、1人で悩みを抱えきれないことも多くある。「受験戦争」とはよく言ったもので、毎日がピリピリ、一触即発、緊迫状態。

そういったときに気軽に塾長に相談できればどんなに心強いだろうか。そして、問題解決のために迅速に対応してくれる塾長なら、さらに、心強いはずだ。

もし、その塾長の考えをもっと知りたいと思ったら、体験授業や入塾前の面談でいろいろな質問をしてみると良い。その質問に対して、どのように返事をしてくれるかで、その塾長の考え方を知ることができる。

私の塾に面談に来たお母さんの中に、「よその塾の面談で、こんなことを言われた! あんなことを言われた!」と愚痴を言って帰る人がいる。私はここに塾選びのすべてがあると思っている。

なぜなら、お母さんが納得をせず入塾した場合、私に愚痴を言うように、家庭でお母さんが塾に対してネガティブな発言をするからだ。

そうすると、仮に子どもが入塾を希望して学習を始めたとしても、学習効果が薄い。塾の悪口や愚痴をお母さんが家で言っているのを聞いていると、子どもは「成績が上がらないのは塾のせい! 勉強が分からないのは先生の教え方が悪い!」と自分の努力不足を認めず、塾や先生のせいにするようになる。

最終的には塾長の言うことを信じなくなる。そうなってしまうと成績は絶対に上がらない。大人でも自分が好きな人と嫌いな人とが同じことを言っても、受け止め方が変わるように、信頼できない人からのアドバイスは耳が痛いだけで、心には届かない。加えて家庭と塾との連携もうまく取れないので、効果的な指導ができない。

反対に、お母さんが塾長に安心感をもっている家庭の子どもは、すぐに成績が伸びなくても、徐々に成績が伸びていく。なぜなら、どんな時も、お母さんがポジティブな言葉で子どもに声掛けをするので、子どもが塾を信頼し、安心して学習をするからだ。

「病は気から」と同様に、心の持ち方で、塾の効果は大きく変わる。そのカギを握っているのは、実はお母さんなのだ。

その次に多い質問は、「集団塾と個別塾ならどっちがおすすめ?」というもの。

御三家以上を狙うなら、いわゆる超進学塾の一択。それも高校卒業後は難関国立大学を目指したいと考えている子は「本校」がつく教室がおすすめ。

会社でもそうだと思うが、優秀な人は「本社」に呼ばれる。それと同じで、絶対ではないが優秀な先生は「本校」にいることが多い。

偏差値50くらいで、負けん気が強い子どもなら、それ以外の集団塾でも十分伸びていける。

一方で、学校の授業について行けない子どもなら、個別指導一択。学校の授業について行けないレベルの子が、授業形式の集団塾に行っても、学校の授業と同じで、よくわからないまま時間を過ごすことになる。

それではお金も時間ももったいない。費用は集団塾より高いが、費用はかかっても、勉強する手助けを隣でしてくれる個別指導を強くお勧めする。

ほかにも、塾は夜道が怖いし、通うのも面倒だし、と理由はさまざまだが、「家で勉強できる通信教材はどうですか?」という相談も多い。

コロナ禍で、非接触で学習できて、親の送迎の負担がない通信教材に魅力を感じる人も多いと思う。こういった通信教材は自分で計画性を持って学習できる子なら、とても良い。

なぜなら、よく考えられた良問が多いからだ。これらの教材を自分で真面目に進めることができれば、かなりの学力が付く。ただ、それをコツコツ1人でこなすこと自体がハードルとなる。

ほとんどの子が、計画的に勉強できないので、無駄に終わってしまう。お金だけ払って課題が山積みになるので親子喧嘩の火種になりやすい。「我が子ながら、本当に真面目だわ!」と自信を持って言えないお母さんは選択肢から外した方が良いと思う。

あくまでも、これは私の主観なので正解ではない。しかし、長年、塾業界に携わった経験から感じたことなので、口コミサイトなどとは違った角度からのアドバイスとしてお子さんの塾選びの参考になれば幸いだ。

この記事を書いたひと

松本 正美
(まつもと まさみ)

「学ぶ力は、夢を叶える力!」松島修楽館代表。中学3年生の時に「将来は塾の先生になる!」と決意し、大学1年生から大手個別指導塾で教務に就く。卒業後、そのまま室長として10年間勤務。その後、新興のインターネット予備校で生徒サポートの仕事に携わった後、2013年に松島修楽館を開業。単なるテストのための勉強だけではなく、「どんな夢でも、正しい努力によって叶えることができる」ということを子どもたちに伝えるため、根本的な「学ぶ力」を育むことを重視した指導を行っている。2人の高校生の母。趣味はサックス、タップダンス。