【授業におけるICT入門】なぜパソコンは大切に取り扱うの?

学校で1人1台タブレットが配布されて1年以上が過ぎました。

当初私が懸念していたのは、「1年生から6年生まで同じタブレットを使えるのか?」ということです。

スペックの問題は前提としてありますが、それ以上に故障なども含めると6年間は無理なのでは……と思っているのですが、そのあたりはどうなのでしょうか。

NECやレノボが販売したパソコンの引き取り修理を行っているNECの群馬工場によると、学習用の端末では、通常のパソコンと比べて落下や取り扱い不注意による破損の比率が多いそうです。

落としたり、ぶつけてしまったりといったような、学校内での破損と思われます。子ども達が使うのだから、当然このことは予想されたと思います。

このためレノボ・ジャパンは2021年5月にYouTubeチャンネルで「パソコンの使い方」を解説する動画を3本公開したくらいです。
(例:パソコンの扱い方 https://youtu.be/GileZANDRmg

たとえばゲーム機。たとえばスマホ……。
子どもたちの使い方は、私たち大人が考えないようなものもあり、「IT機器の使い方」を伝えることも重要なリテラシー教育になります。

そもそも、皆さんはパソコンをどのように使っているでしょうか。
たとえば、食べ物です。私の場合、デスクトップか、ノーパソコンかで食べ物の扱いが変わります。

デスクトップだった場合は、多少(サンドイッチとかおにぎり)はそばにおいて仕事中に食べたりしますが、汁物は一切口にしません。飲み物も同様で、ペットボトルや水筒など、ふたが閉まるものしか触らないようにします。

ノートパソコンやタブレットの場合はもっと厳密になります。
食べ物は当然、飲み物も作業が終わるまでは口にしない(もしくは離れたところで食べる)のです。これはひとえに、「パソコンは精密機器」だからという認識からの行動です。

私が神経質になる理由は、ある経験からです。
新入社員のころ、私は2回ほど信じられない光景を目にしました。

ひとつは、朝、会社に行ったら営業の先輩がノートパソコンの上に鏡をドン! と置いて、フルメイクをしていたことでした。

パウダー系のファンデーションやチークが入り込んだらどうするんだろう、そもそもあんなに重たい鏡をパソコンの上に置くってどういうこと? と驚いてしまったのです。

もうひとつも会社での出来事でした。
昼間、会議室でお昼を食べていたら、キャーという悲鳴とともに、私は呼ばれました。

どうしたのかと思ったら、先輩の机の上にコーンスープがこぼれていて、ノートパソコンのキーボードがベタベタに汚れているのです。

どうも、バシャッと上からこぼしたらしく……すぐに電源を切ったのですが、私がバタバタしている間に何を思ったか先輩が電源を入れてしまいました。(多分、使えるかどうか気になったのだと思います)

スープであったため不純物が基盤についている状態で電源を入れたので、当然ショートしてしまって、二度とパソコンは起動しなくなってしまいました。なぜ、パソコンつけたままスープを飲もうと思ったのか、先輩だったけれどその点だけは強く抗議したことを覚えています。

デスクトップパソコンは、キーボードとモニターと本体が分れていますから、水をこぼすといったトラブルがあっても本体への影響は最小限にとどめられます。最悪キーボードが使えなくなるくらいです。

しかし、ノートパソコンの場合は、キーボードのすぐ下に基盤があり、そこにはCPUからメモリからハードディスクといった重要な部品が納められているのです。

うっかり水をこぼしたら、キーの隙間から入り込んでショートしてしまう、これが一番怖いと思っています。(水ならば不純物がないので、きっちり乾かしたら大丈夫な可能性もありますが……)

また、油物を触った手でパソコンを触ることで汚れたり、不具合が起きたりすることもあるし、パンくずなどがキーボードのキーの隙間に入ることも故障の原因になると思います。

自分は精密機械を扱っている、という感覚を子どもにも持たせることはとても大切なことなのです。

こうした扱い方を伝えることで、パソコンのしくみを説明できます。

パソコンの中身がどのようになっているのかを知ることで、食べ物をそばに置かないだけでなく、雷がきたらどうしたらよいか、電源はつけっぱなしのほうが良いのか悪いのか、といったことが考えられるようになるのです。

「大切に扱いなさい」とか、「壊さないようにしましょう」という注意も大事ですが、なぜ、そうしなければいけないのか……。どういうものを自分は使っているのかを意識させることから、結果「投げない」「ぶつけない」「落とさない」ようになります。

また、静電気などの仕組みのように理科の学習につなげることができたり、修理にお金がかかるといった生活科に結びつけたりできるようになると思います。

パソコンが子ども達の日常に取り入れられていることは、各教科と自分の生活を結びつけるきっかけ作りになります。「なぜ、パソコンは大切に扱わなければならないのか」について、子ども達と考えてみてはいかがでしょうか。

この記事を書いたひと

ライター:吉田理子様

吉田 理子
(よしだ りこ)

1971年生まれ。Windows95発売当時に社会人となり、以降パソコン教室講師やITサポート等の仕事に従事。2005年に企業・学校向けのIT、情報教育を目的とした企業組合i-casket設立。2018年には一般社団法人s-netサポーターズを設立し、主に小中学校にて子供・保護者・教員向けの情報リテラシー、プログラミング的思考に関する講座を行う。そのほか地域ボランティアや主権者教育の活動をボランティアで。趣味は料理と読書。