新しい学習評価「ルーブリック評価」、メリットや今後の課題は?

2010年ごろから、教育現場では「アクティブ・ラーニング」が推奨されるようになりました。

文部科学省によると、アクティブ・ラーニングとは「学生にあるモノゴトを行わせ、行っているモノゴトについて考えさせること」を言います。

つまり、教師が児童・生徒に対して一方的に講義を行うのではなく、児童・生徒が積極的に行動する学習方法です。たとえば発見学習や問題解決学習、体験学習などの「体験・実演」、グループディスカッションやディベートなどの「ディスカッション」、グループワークなどの「他者に教える」などが挙げられます。

児童・生徒が自ら行動することで学習の定着率が一層高まるとされています。

アクティブ・ラーニングを導入するに当たって課題となっていたのが評価方法です。

これまではペーパーテストで学習到達度を評価していました。
しかし、この方法では思考力・判断力・表現力など、子どもたちが主体的に学習に取り組んでいる態度を適切に評価できません。

そこで、注目され始めたのが「ルーブリック評価」です。
では、ルーブリック評価とはどのようなものなのでしょうか。

ルーブリック評価とは…

「ルーブリック」とは、児童・生徒の学習到達状況を評価するための評価基準です。一般的には複数の評価項目から構成されていて、それをリストにしたものを「ルーブリック表」といいます。

このルーブリック表を使って評価する方法が「ルーブリック評価」です。

ルーブリックで評価するのは、たとえば次のような能力です。

ルーブリックで評価できる能力とは…

  • 表現力
  • 想像力
  • 問題解決力
  • コミュニケーション力

ルーブリック表の作り方

ルーブリック表は「評価点」「評価項目」「評価基準」の3つから構成されています。

ルーブリック表
ルーブリック表

<評価項目>

「評価項目」は、児童・生徒に学習を通して育んでほしい資質や能力を設定します。

たとえばディスカッションワークを評価する場合、評価項目として「傾聴力」「参加意欲」「理解力」「リーダーシップ」「トークスキル」などが挙げられます。

<評価点>

「評価点」は、評価項目の達成度を判断するための基準です。
評価点は数字で表すほかに、アルファベットや「優・良・可」などの言葉で表すこともあります。

<評価基準>

評価項目と評価点が交差するマスに、評価基準を記載します。

評価基準は、体験やディスカッションをするうえで、どのような行動が求められているかを、できる限り「行動」をベースとして設定します。

たとえばディスカッションワークで評価項目「参加意欲」の評価基準は、1段階目「発言なし」、2段階目「発言1回」、3段階目「発言3回以上」。4段階目「発言5回以上」などと設定します。

児童・生徒の「行動」をベースにすることで、より明確な判断ができるようになります。

ルーブリック評価のメリットとは…

日本でも少しずつ導入されているルーブリック評価ですが、次のようなメリットがあります。

  • 学習前に児童・生徒も「何が評価されるのか」「達成すべきレベル」が認識できるため、意欲的に学ぶようになる。
  • これまで評価することが難しかったり、評価基準があいまいだったりした表現力や意欲などといったものに対して公正な評価ができるようになる。
  • 評価が「見える化」しているため、児童・生徒にとっても納得のいく評価をつけることができる。
  • これまで評価に時間がかかり教師側の負担になっていたが、ルーブリック評価は作成したルーブリック表のレベルをチェックしていくだけなので、迅速にフィードバックができる。
  • 成績がどのように推移しているのか、長期的に把握することができる。
  • ルーブリック評価を継続することで、児童・生徒自身も気づかなかった能力・個性を見つけやすくなる。

今後の課題とは…

ルーブリック評価は、信用・信頼できるルーブリック表を作成することから始まります。

しかし、日本ではルーブリック評価の歴史が浅く、現在、試行錯誤している段階です。
つまり、ルーブリック表を作成するうえで基準となるものが少なく。生徒のパフォーマンスをどのように位置づけるべきか、適切なルーブリック表の作成が難しいのが現状です。

さいごに

アクティブ・ラーニングの普及とともに、注目され始めているルーブリック評価ですが、肝心のルーブリック表の作成基準があいまいなため、実際に導入している教育現場はまだまだ少ないようです。

ただ、STEAM教育が浸透するにつれ、ルーブリック評価の導入例が増えるかもしれません。

koedoでは、これからもルーブリック評価がどのように広まっていくのか観測を続けていきたいと考えています。

<参考>

(koedo事業部)