「GIGAスクール構想」開始から2年、学校での利用状況および持ち帰りの状況は?

当初、達成目標を令和5年に設定していた「GIGAスクール構想」は、新型コロナウィルス感染症拡大の影響で、令和3年3月末までに目標を達成するよう予定を大幅に繰り上げました。それから丸2年が経過。学校におけるICT機器の活用はどの程度進み、どんな課題が挙がっているのでしょうか。

端末を授業で活用している学校の割合は?

文部科学省は令和4年11月、「1人1台端末の利活用促進に向けた取り組みについて」調査結果を公表しています。

それによると、全国の小学校で「配備された端末をほぼ毎日利用している」と回答したのは、全国平均で55.4%。「週3回以上」と回答した学校と合わせると全国平均で83.1%となっています。

多くの学校で端末が活発に利用され始めていることが伺われます。
ただ、地域ごとに大きな差が出ていることも分かってきました。

端末利用状況’(小学校)
端末を授業で活用している学校の割合(小学校)/文部科学省(2023.4.14閲覧)

たとえば山口県では、95.8%の小学校が「ほぼ毎日」あるいは「週3回以上」と回答しています。

一方で、岩手県では「ほぼ毎日」あるいは「週3回以上」と回答した小学校が45.3%と、山口県の約半分の割合に留まっているほか、「月1回未満」と回答した学校も1%あります。

また、中学校では、「ほぼ毎日」と回答したのは全国平均で53.6%、「週3回」と合わせると全国平均で79.9%という結果になっています。

端末利用状況(中学校)
端末を授業で活用している学校の割合(中学校)/文部科学省(2023.4.14閲覧)

全国平均では小学校より使用割合が少し減っていますが、県ごとに比較してみると、茨城県で「ほぼ毎日」と「週3回以上」を合計して96.1%となっています。

一方、香川県で「ほぼ毎日」と「週3回以上」を合計して50.8%と5割には届いたものの、3%の学校が「月1回未満」と回答しています。

場面ごとの使用状況は?

学校ではどんな場面でICT機器を使用しているのでしょうか。

文部科学省は令和4年4月に小学6年生の児童、中学3年生の生徒に対して、次の3つの場面における使用状況を調査しています。

端末の使用状況を確認した場面

  • 自分で調べる場面
  • 自分の考えをまとめ、発表・表現する場面
  • 生徒同士がやり取りする場面

自分で調べる場面

小学校を対象に「自分で調べる場面」に対して行った調査では、「ほぼ毎日」あるいは「週3回以上」と回答した学校の全国平均は59.2%であることが分かりました。

自分で調べる(小学校)
「自分で調べる場面」で使用している学校の割合(小学校)/文部科学省(2023.4.14閲覧)

県ごとに比較してみると、もっとも活用しているのは山口県で、41.8%の小学校が「ほぼ毎日」と回答しています。

一方、岩手県では「ほぼ毎日」と回答した学校は5.9%に留まり、「月1回未満」と回答した学校も3.5%あることが分かりました。

また、中学校に対して同じ調査を行ったところ、「ほぼ毎日」あるいは「週3回以上」と回答した学校を合わせた全国平均は54.5%ということが分かりました。

自分で調べる場面(中学校)
「自分で調べる場面」で使用している学校の割合(中学校)/文部科学省82023.4.14)

県ごとに比較してみると岐阜県の40.1%の中学校が「ほぼ毎日」と回答。
一方で、島根県で「ほぼ毎日」と回答した中学校は5.3%に留まり、「月1回未満」と回答した中学校も6.4%いることが分かりました。

自分の考えをまとめ、発表・表現する場面

小学校を対象に「自分の考えをまとめ、発表・表現する場面」に対して調査を行ったところ、「ほぼ毎日」あるいは「週3回以上」と回答した学校は全国平均で37.5%に留まっています。

発表する場面(小学校)
「発表・表現する場面」で使用している学校の割合(小学校)/文部科学省(2023.4.14閲覧)

県ごとに比較してみると、「ほぼ毎日」と回答した割合がもっとも高いのは山口県で34.6%。一方で、島根県で「ほぼ毎日」利用している割合が4.1%など、島根県を含む22県が10%に届いていません。

また、中学生に対して同じ調査を行ったところ、「ほぼ毎日」あるいは「週3回以上」と回答した学校は全国平均で40.6%と、小学校よりは割合が上がったものの、やはり5割に満たないことが分かりました。

発表する場面(中学校)
「発表・表現する場面」で使用している学校の割合(中学校)/文部科学省(2023.4.14閲覧)

県ごとに比較してみると、「ほぼ毎日」と回答した割合がもっとも高いのは山口県で27.0%、もっとも低いのは徳島県で3.8%となっています。さらに島根県の24.5%、徳島県の16.6%の中学校が「月1回未満」と回答しています。

生徒同士がやりとりする場面

生徒同士のやり取り(小学校)
「生徒同士がやり取りする場面」で使用している学校の割合(小学校)/文部科学省(2023.4.14閲覧)

小学校を対象に「生徒どうしてやり取りする場面」を調査したところ、「ほぼ毎日」あるいは「週3回以上」を合計した全国平均は29.0%。

県ごとに比較してみると、山口県の33.8%の小学校が「ほぼ毎日」と回答しています。一方、佐賀県で「ほぼ毎日」と回答した小学校は1.9%に留まり、そのほかにも岩手県や秋田県が5%に届いていません。

また、島根県では51%、岩手県では43%の小学校が「月1回未満」と回答しています。

生徒同士のやり取り(中学校)
「生徒同士がやり取りする場面」で使用している学校の割合(中学校)/文部科学省(2023.4.14閲覧)

中学校に対して同じ調査を行ったところ、「ほぼ毎日」あるいは「週3回以上」と回答した全国平均は26.7%。

県ごとに比較してみると、岐阜県の中学校の23.2%が「ほぼ毎日」と回答している一方で、香川県で「ほぼ毎日」と回答している中学校の割合は1.5%に留まっています。

また、島根県では56.4%、徳島県で48.1%、香川県で40.3%の中学校が「月1回未満」と回答しているなど、多くの中学校で生徒同士のやり取りにICT機器を活用していないことが分かりました。

家庭で利用できるようにしている学校の割合は…?

では、パソコン・タブレット端末を家庭で利用できるようにしている学校の割合はどの程度あるのでしょうか。

家庭への持ち帰り(小学校)
家庭で利用できるようにしている学校の割合(小学校)/文部科学省(2023.4.14閲覧)

小学校を対象にした調査結果では、「毎日持ち帰り・毎日利用」あるいは「毎日持ち帰り・時々利用」と回答した学校の全国平均は23.4%だということが分かりました。

このうち、秋田県や香川県では、「毎日持ち帰り・毎日利用」あるいは「毎日持ち帰り・時々利用」と回答している小学校は1校もありません。

さらに、岩手県では52.4%の学校で「持ち帰らせていない」、17.1%の学校で「持ち帰ってはいけない」と回答しています。

また、佐賀県で43.5%の小学校が「非常時のみに持ち帰り」と回答しているのを含め、9つの道府県で3割以上の小学校が「非常時のみに持ち帰り」と回答しています。

端末持ち帰り状況(中学校)
家庭で利用できるようにしている学校の割合(中学校)/文部科学省(2023.4.14閲覧)

同じ調査を中学校に対して行ったところ、「毎日持ち帰り・毎日利用」あるいは「毎日持ち帰り・時々利用」と回答した中学校は全国平均で28%。

県ごとに比較してみると、東京都では40.5%の中学校で「毎日持ち帰り・毎日利用」と回答しています。一方、鳥取県では0%、秋田県で0.9%など、全国18の府県で「毎日持ち帰り・毎日利用」の割合が10%未満であることが分かりました。

また、青森県、岩手県、秋田県、島根県、香川県、高知県、宮崎県、鹿児島県では3割以上の中学校で「端末を持ち帰らせていない」と回答しているほか、青森県や岩手県で約2割の中学校が「持ち帰ってはいけない」と回答しています。

さらに、26の道府県では2割以上の中学校が「非常時のみ持ち帰り」と回答しています。

GIGAスクール構想が現在抱えている課題は?

全国の小学校・中学校に1人1台の端末が配備されてから丸2年が経過しました。

現在、抱えている課題としてICT支援員の不足が挙げられます。政府は、ICT支援員の数の達成目標を「4校に1人」としています。

ICT支援員の状況
ICT支援員の配置状況/文部科学省(2023.4.14閲覧)

しかし、令和3年度末の時点では、この目標を達成しているのは東京都と佐賀県、熊本県の3都県のみです。一方で、北海道や岩手県で2割に届いていないなど、14の道府県で達成目標の5割に届いていません。

ICT支援員は、パソコンやタブレット端末などのICT機器を利用した学習がスムーズに行えるようにサポートする役割を担っています。

しかし、現状、ICT支援員に対する予算が確保しにくかったり、ICT支援員に対して本来の業務以上の期待が寄せられていたりするなど、さまざまな理由でICT支援員の増員が難しくなっていると考えられます。

さいごに

全国の小学校・中学校に1人1台の端末が配備されて丸2年が経過しました。小学校においても、中学校においてもなんらかの形で、配備された端末を利活用する場面が増えています。

しかし、調査結果を詳しく分析すると、都道府県によって利活用に大きな差が生じていることも分かりました。

全国の小中学校でのICT機器の利用状況、ICT機器の持ち帰り状況など、koedoでは今後も定点観測を続けていきたいと考えています。

(koedo事業部)

【参考】