「GIGAスクール構想」の実現に向けた進捗状況――令和3年3月現在――

2019年12月、政府は「GIGAスクール構想」を打ち出しました。GIGAとは「Global and Innovation Gateway for All」の略で、GIGAスクール構想とは児童生徒に1人1台の端末を用意すること、その端末を使うにあたり必要な通信環境を整備すること、そして特別な支援が必要な子どもを含めて、一人ひとりに最も適した方法で、子どもの資質や能力を育成できる環境を持続的に実現することを言います。

当初は2023年の達成を目指していましたが、新型コロナウイルス感染症拡大にともない、オンラインで授業する機会が増えることを想定し、2021年3月末までに達成するよう計画が変更されました。

令和3年3月17日、文部科学省より「GIGAスクール構想の実現に向けたICT環境の進捗状況」として速報値が発表されました。令和2年8月末時点の確定値と比較して、どこまで整備状況は進んだのでしょうか。

令和2年8月末時点までの進捗状況

文部科学省によると、令和2年8月末までに「年内に議会の承認済み」と回答したのは、全国1,812自治体のうち99.7%にあたる1,807自治体でした。なお、残りの0.3%も年度内に議会の承認を得ると回答しています。

また、令和2年8月までに「年内に入札の公示済み」とした自治体は63.8%、同じく令和2年8月までに「年内に事業者の選定済み」とした自治体は97.2%でした。

1人1台端末整備状況(令和2年8月現在)

さらに納品完了時期については、令和2年8月までに納品済みと回答したのは、全国の自治体のうち2%のみ。東京都などコロナウイルス感染拡大防止に向けた取り組みを進める必要があるとされた「特定警戒都道府県(北海道、茨城県、千葉県、埼玉県、東京都、神奈川県、石川県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県)においても2.2%に留まっていました。

1人1台端末納品完了状況(令和2年8月現在)

なお、ICT環境が整っていない家庭への対応については、令和2年8月末時点で「全児童生徒に準備済み」と回答したのが全国1,812自治体のうち28.5%、「最終学年に対してのみ」と回答したのは4.5%に留まっています。

ICT環境の整っていない家庭への対応策(令和2年8月現在)

令和3年2月時点の端末等の整備状況

文部科学省によると、令和3年2月時点の予定では、令和2年度内に全1,812自治体の97.6%にあたる1,796自治体等が納品を完了する見込みとなっています。ここでいう「納品完了」とは、児童生徒の手元に端末が渡ること、そしてその端末を使うためのインターネット環境が整い、学校で利用可能な状況のことを指しています。

1人1台端末納品状況(令和3年2月現在)

令和2年度内に納品が完了しない43自治体のうち、21自治体が令和3年度1学期に納品完了予定、残りの22自治体が令和3年度2学期以降に納品完了予定となっています。令和2年度内に納品が完了しない理由として、入札の公示等はしたが不調になった、端末の需給ひっ迫等による納期遅延などが挙げられます。

校内ネットワーク環境の整備状況

令和3年3月末時点の公立の小学校・中学校・高等学校等の校内ネットワーク環境の整備状況はどうなっているのでしょうか。校内のネットワーク環境は、全国1,815自治体等にある合計32,787校のうち86.2%が令和2年度内に、97.9%の学校が令和3年4月末と、新学期が始まるのとほぼ同時期から供用開始の見込みとなっています。

校内ネットワーク環境(令和3年2月現在)

さいごに

文部科学省の発表により、全国の小学校・中学校において、「1人1台端末」および「高速大容量の通信環境」がほぼ整い、令和3年4月からICTを活用した新しい学びを始められる見込みとなっていることがわかりました。ただ、児童生徒に対しての情報モラル教育や、ICTを活用した授業を行うための教師の指導力の向上など、まだまだ課題は山積みです。

『koedo』では、ICTを活用した授業が今後どのように行われ、そして世界水準までどのように追いついていくのかを、引き続き観測していこうと考えています。

■参考

koedo事業部