小学校の「理科」におけるICT活用 授業設計の事例とポイント

2021年3月12日

GIGAスクール構想による1人1台端末が推進される中、各教科でICTをどのように活用していくかについて議論や研究が活発になされています。今回は文部科学省の資料を元に、小学校の理科におけるICT活用の事例のほか、教師に求められるスキルや授業設計のポイントについて解説します。

小学校の理科で目指すICT活用とは

小学校の理科の授業で、ICTの活用はどのようになされていくべきなのでしょうか。

文部科学省の資料によると、理科におけるICT活用は、

  • 自然の事物・現象に直接触れること
  • 観察、実験等の直接体験

を基本とするなかで、課題の把握、情報の収集や処理という過程において、子どもたちの学習の場を広げ、学びの質を高めていくという場面で有効活用することが重要だと示されています。

小学校の理科で目指す“子どもたちの科学的に探究する力と態度”とは

  • 課題に対して、自分が抽出した情報の関係性、たとえば共通点や相違点を見出したり、傾向を考えたりする力
  • 見通してどのような結果になるか、仮説を立てる力
  • それを確かめるためにどのような実験をするとよいかを考える力
  • 実際に調査した結果を、データやグラフで数値化して捉える力
  • 学習に対する考察を、クラスで共有するために発表する力

などが挙げられますが、タブレットなどのデジタルツールの活用は、特に情報収集をしたり、結果の数値化、情報を共有する場面で非常に有効と言えるでしょう。

例えば、デジタルツールを使うと、世の中にあるさまざまな情報にすぐ触れることができます。また、実験や学びの過程の記録や、その記録を何度でもアクセスして振り返るということも簡単にできるように。

さらに、自分の意見や考えをクラスのみんなに発表し、共有するといった場面でも、わかりやすく自分の意見を表現して届けることができるでしょう。

このようにICTの活用は、観察や実験の代替えとして利用するのでなく、子どもたちの学びをより充実させるためのツールとして、適切に理科の授業に導入していくことが求められています。

小学校の理科におけるICT活用の事例

では、具体的にどのようにICTを理科の授業において有効活用することができるのでしょうか。

文部科学省の資料には、小学校5学年の「天気の変化」という授業で、気象庁のWEBサイトから雲の動きを調べ、日本の天気の変化の決まりを考察するという例が挙げられています。

雲の観察は、実際に観察を行ったとしても得られるデータや情報には限りがあり、乏しい情報では、変則性や比較がなかなかできません。ですが、学習用端末を使用すれば、短時間でたくさんの情報を集めることができるため、検証で得る学びが広がっていくのです。

そして、情報収集の過程では、インターネットに存在する無数にある情報のなかで、どの情報を選び取るのかということもとても重要です。そういったICTスキルやリテラシーを身に付けるうえでも、大切な学びの機会になると言えるでしょう。

また、ICTの活用は、客観的な学習観察としての役割も期待されています。

小学校5学年の「流れる水の働きと土地の変化」の授業では、実際に作った砂山に水を流してどのように地形が変化するかを観察し、その変化について考えますが、実際に実験の様子をタブレットなどで撮影すると、そのときとはまた別の機会に動画を見ながら考察を深めていくことが可能になります。

録画して繰り返し再生ができるという機能は、何度も行うことが難しい実験においてとても有効です。そのときに得られなかった発見を、また別の機会に改めて見出すことができるという点は、ICT活用の大きなメリットと言えるのではないでしょうか。

ICT活用場面を精査した授業の構築が重要

理科の授業におけるICTを活用した授業設計は、やみくもにただ利用するのではなく、活用場面を精査することが重要です。

タブレット学習は、授業を子ども主体にしてくれる便利なツールですが、教師は子どもたちにただICTツールを与えるのではなく、有効に活用する場面をきっちりと見極め、その使用においては適切なサポートをしていく姿勢が求められるでしょう。

そのためには、具体的にどの場面でICTツールを使うとよいのか考えるだけでなく、実際に活用する場面で子どもが戸惑うことのないよう、使い方やICTリテラシーを育んでいくという意識も必要です。

子どもたちの理科の学びがより深化していけるよう、主体的に学べる機会を作り出していくと同時に、どうサポートしていくかという関わり方の部分にもしっかりと向き合う。それこそが、ICTを活用した今後の理科の授業に求められる課題なのかもしれません。

■出典:理科の指導におけるICTの活用について

この記事を書いたひと
basico

1980年生まれ。埼玉県在住。小5の息子の母。大学では初等教育を専攻し教員免許を取得するものの、アパレルの世界へ飛び込む。結婚後、接客業を経てライターの道へ。仕事においても子育てにおいても“伝え方”に奮闘中。座右の銘は「継続は力なり」。日々の“気づき”を大切にしています。