【古代メキシコ×STEAM教育】トウモロコシの栽培が始まったのはいつ? コメ・小麦との比較

2024年2月7日

岡山県日生町にある「BIZEN中南米美術館(URL:https://www.latinamerica.jp)」では、日本で唯一、古代中南米の貴重な遺産を収蔵・展示しています。 また、東京国立博物館(2023年6月16日~9月3日)を皮切りに、福岡、大阪と巡回しながらマヤ文明、アステカ文明、テオティワカン文明に焦点を当てた特別展「古代メキシコ ―マヤ、アステカ、テオティワカン」が開催されています。

特別展「古代メキシコ ―マヤ、アステカ、テオティワカン」では、その墓の出土品がメキシコ国内とアメリカ以外で初めて公開されます。

赤の女王
マヤの代表的な都市国家パレンケの黄金時代を築いたパカル王の妃とされる、通称「赤の女王(レイナ・ロハ)」。
    (写真:特別展「古代メキシコ ―マヤ、アステカ、テオティワカン」展示 
「赤の女王」の墓をイメージした展示空間)

古代メキシコで食べられていたトウモロコシは、現在でも世界三大主食のひとつです。

なぜ、古代メキシコではコメでも小麦でもなく、トウモロコシが食べられていたのでしょうか。

世界三大主食とは…?

私たち日本人の主食は「お米」ですが、世界では、ほかにもいろいろなものを主食としています。たとえば小麦を使ったパンやパスタ、豆類、ジャガイモ、トウモロコシなどが挙げられます。

このうち「コメ・小麦・トウモロコシ」を三大主食と言い、全世界の3分の2の人が主食としています。

世界にはどうしてさまざまな主食があるの?~世界の人々の生活と環境~/NHK for school
世界にはどうしてさまざまな主食があるの?~世界の人々の生活と環境~/NHK for school

主食―トウモロコシ

再現イメージ
BIZEN中南米美術館 古典期後期の壺に描かれたマヤ・宮殿の場面の細部の模型
(中央に座る王の横に、トウモロコシで作った蒸し団子「ワ」が乗った三足大皿が置かれています)

古代メキシコでは、トウモロコシ、カボチャ、インゲンマメなどが食べられていました。そのほかにもチア、粟や稗に似たアラマンサスと呼ばれる植物が食べられていたことが分かっています。

日本では、トウモロコシは夏野菜のひとつでしかありませんが、トウモロコシはイネ科の植物で炭水化物(糖質・食物繊維)、タンパク質、鉄が含まれています。

ご飯とトウモロコシの栄養素を比較すると次のとおり。

 トウモロコシ(生)100gご飯(100g)
カロリー95 kcal156 kcal
炭水化物18.6g37.1g
糖質12.5g34.6g
食物繊維3.0g0.5g
タンパク質3.6g2.5g
0.8g0.2g

つまり、トウモロコシはカロリー、炭水化物、糖質がご飯の約半分。タンパク質はご飯よりも少し多く、食物繊維が2倍、鉄分に至っては4倍も多いことが分かります。ただし生のままでは鮮度が落ちやすく、収穫後24時間で栄養は半減し、甘味は1時間で半減すると言われています。

そこで古代メキシコでは、乾燥したトウモロコシをアルカリ性の石灰で茹で、さらにそれを石臼で磨り潰してから保存。その粉で団子やお粥を作って食べていました。

BIZEN中南米美術館「椀」
BIZEN中南米美術館蔵 
マヤ南部低地出土 古典期前期 紀元250~600年
ハチドリの描かれたトウモロコシのお粥「ウル」用の鉢

BIZEN中南米美術館 皿(レプリカ)
BIZEN中南米美術館 
マヤ南部低地出土 古典期後期 紀元600~950年
カウィールの描かれた彩文三足大皿 (レプリカ)
BIZEN中南米美術館 メタテ
BIZEN中南米美術館蔵 メタテ:トウモロコシやカカオをすり潰すための皿状石臼  
※写真の二つは装飾が細かいため、祭儀用と考えられています

トウモロコシの歴史

トウモロコシの原産地や起源は、現在でも明確なことはわかっていません。しかし、その中でも有力なのは中央メキシコのパルサス川渓谷で育つ草、「テオシント起源説」です。野生のテオシントは、現在でもメキシコで雑草として生育していますが固くて食べることができません。

これまでに行われた遺跡調査によると、トウモロコシの栽培は約6500年前に始まり、4700年前から3700年前にかけてトウモロコシが主食として広がっていたとされています。

トウモロコシ栽培に必要な条件、適した気候

トウモロコシは、長い年月の間に栽培されてきた結果、自然条件下では育つことができません。しかし、品種によって暑さにも寒さにも耐え得るため、高地や湿地を開拓した畑でも栽培できます。

発芽の最低温度は10度、最適温度は33度。寒さには弱いため、10度以下だと発芽しません。

出穂時前後の1ヶ月は気温23度から24度、降水量は100mmぐらいが適当とされていますが、成熟期は高温・乾燥がよいとされています。

「神の贈り物」と崇められていたトウモロコシ

日本でも「稲」や「コメ」は今でも神事で使用されていますが、古代メキシコではトウモロコシを「聖なる植物」「神の贈り物」として崇めていました。

たとえば、テオティワカン文明の遺跡であるサクアラ宮殿から出土した「嵐の神の壁画」は、1500年以上前に描かれたものとされていますが、嵐の神様がトウモロコシを手に持ち、「水の恵みが食料をもたらす」という祈りを込めた図案だと考えられています。

嵐の神の壁画
嵐の神の壁画 テオティワカン文明 350~550年 テオティワカン、サクアラ出土
メキシコ国立人類学博物館蔵

マヤ系先住民であるキチェ族の神話(ポポル・ウヴ)では、人間がトウモロコシから創造されたとされています。マヤの王族、貴族は誕生すると、2枚の板で頭を挟み頭部を細長く変形させる頭蓋変形を行っていました。これは大変重要で、頭部をトウモロコシの形に似せるために行っていたのです。

貴婦人の土偶
特別展「古代メキシコ ―マヤ、アステカ、テオティワカン」展示
 左:貴婦人の土偶 マヤ文明 600~950年 ハイナ出土 メキシコ国立人類学博物館蔵
 前頭部から頭頂にかけて後ろに長く伸びた頭の形をしており、頭蓋変形しています。

円筒形彩文深鉢(BIZEN中南米美術館蔵)
BIZEN中南米美術館蔵 マヤ文化 古典期後期 紀元600~900年 
グァテマラ、ペテン地方出土 円筒形彩文深鉢  
シマフクロウ、ムアンの姿をした王が描かれたチョコレートカップ
頭が長く伸び、頭蓋変形していることが分かります。

またアステカ神話には、「センテオトル」と呼ばれる頭にトウモロコシの穂を模した冠をかぶったトウモロコシの神が登場します。

主食―お米

稲(イメージ)
稲(イメージ)

およそ2500年前、中国大陸もしくは朝鮮半島を経由して日本にコメが伝わり、弥生時代には本格的な稲作が始まっていたと考えられています。

お米作りに適した土地とは…

日本で稲作が広まったのは、日本にはお米作りに適した土地・自然環境、気候条件がそろっていたからです。

お米作りに大切な条件として、まずは「水が豊か」であること。そして「広くて平らな土地」があること。さらに「水はけがよい土」「昼夜の温度差が大きいこと」の4つが挙げられます。

農林水産省のデータによると、2023年現在、日本でお米の生産量が多い都道府県は次のとおり。

  • 新潟県(新潟平野)
  • 北海道(空知地方、上川地方)
  • 秋田県(秋田平野)

お米作りに適した気候とは…

日本のほかにも中国やタイ、ベトナムなど東アジアからアジアの国々がお米を主食としています。これは、お米作りに必要な大量の水が確保できることと関係しています。

お米作りに適した年間降水量は1000ミリ以上。

たとえば、中国では降水量の多い南部ではお米を主食としていますが、降水量の少ない北部では小麦を主食としています。

気象庁によると、2019年の日本の全国平均降水量は1,624ミリ。

東南アジアの年間平均降水量は1,500~2,000ミリ、同じくお米が主食であるアフリカのマダガスカル島では地域によって年間降水量が3,000ミリに達します。

主食―小麦

麦
小麦畑(イメージ)

小麦の原産地はロシア南部地方からメソポタミア地方にかけてだと考えられています。

日本に伝わったのは弥生時代と言われていて、静岡県登呂遺跡など日本各地で炭化した小麦種粒が出土しています。

小麦を主食としているのは、ヨーロッパや北アフリカ、そしてヨーロッパの植民地だったアルゼンチンやチリ、カナダなどが挙げられます。

小麦栽培に適した気候とは…

小麦の栽培に適しているのは、年間降水量1000ミリ以下の地域です。
雨に当たると発芽準備が始まってしまうため、穂が出る5月・6月に雨が降らないことが大切です。つまり、日本で小麦があまり栽培されていないのは、北海道など一部の地域を除き、この時期が梅雨と重なるからです。

そして生育期に涼しく(14度前後)、収穫期には温暖(20度前後)である必要があります。

小麦の生産量が多いのは中国やインド、ロシア。ヨーロッパではフランス、ドイツ、イギリスなども小麦の栽培が盛んです。

夏の乾燥と冬の降水という特徴を持つ地中海性気候や内陸の雨が少ない気候が、小麦の栽培に適しているからです。

なお、世間に流通している小麦の多くは秋から冬にタネを蒔き、春に収穫する冬小麦です。冬小麦を品種改良したのが春小麦で、春にタネを蒔き、秋に収穫します。ロシアやドイツなど冬の寒さが厳しい国では春小麦を栽培しています。

さいごに

今回は、特別展「古代メキシコ ―マヤ、アステカ、テオティワカン」および、BIZEN中南米美術館の展示作品をご紹介しながら、「食」を題材としてSTEAM教育で読み解きました。

調べてみたところ、気候条件や土壌が稲作や小麦栽培には適さない古代メキシコでトウモロコシの栽培が始まったのは約5000年前。そして約3700年前には主食としてトウモロコシを食べていたと考えられていることが分かりました。

「古代メキシコ」は世界史に相当しますが、読み解いているうちに日本史、地理、生物、家庭科…とほかの教科へと裾野は広がっていきます。

メキシコ料理は、伝統的な食文化が評価されて2010年に世界無形文化遺産に登録されています。地理的には日本から遠く離れた国ですが、タコスやトルティーヤなど、日本でも気軽に食べられる料理もあります。これを機会に、ぜひ召し上がってみてはいかがでしょうか…。

特別展「古代メキシコ ―マヤ、アステカ、テオティワカン」

  • 展示会場・期間
    • 東京国立博物館 平成館  2023年6月16日(金)~9月3日(日) 終了しました
    • 九州国立博物館(福岡会場)2023年10月3日(火)~12月10日(日) 終了しました
    • 国立国際美術館(大阪会場)2024年2月6日(火)~5月6日(月・休)
  • URL:https://mexico2023.exhibit.jp
BIZEN中南米美術館

  • 展覧会名:「冒険!マヤ文明」展 エピソード2
  • 期  間:2023年3月28日~10月9日(月・休) 終了しました
  • URL:https://www.latinamerica.jp

(koedo事業部)

【参考】