【不登校という選択】自宅でオンライン授業、単位認定へー不登校高校生の中途退学率は17%
文部科学省の調査によると、高等学校における不登校生徒数は増減を繰り返しながら、令和2年度には約4万3000人まで減少。しかし、令和3年度には約5万人、令和4年度は約6万人と約1万人ずつ増えています。不登校生徒数がもっとも少なかった令和2年度と令和4年度を比較すると約4割増加。1000人当たりの不登校生徒数の割合で見てみると13.9人から20.4人に増えていることになります。
令和4年度 高等学校への進学率は98%以上
そもそも日本では、どれくらいの子どもが高等学校に進学しているのでしょうか。
日本の高等学校への進学率は、昭和49年度に90%の大台に乗って以降ずっと90%台を維持しており、令和4年度は全日制・定時制を合計すると進学率は94.3%。これに通信制を加えると98.8%にまで達しています。
一方、令和4年度に高等学校を中途退学した生徒は43,041人(前年度38,928人)。不登校を選択した生徒の17%が中途退学しており、6%が留年しています。
なお、文部科学省の調査によると、中途退学した理由としてもっとも多いのは「進路変更」で43.9%、続いて「学校生活学業不適応」が32.8%となっています。
令和6年 オンライン授業による単位取得可能に
オンライン授業による単位認定は、これまで病院に長期入院中の生徒や、特別な事情を有する生徒を対象としていました。
しかし、学習意欲はありながら登校できない生徒が遠隔授業や通信教育によって留年や中途退学することなく卒業できるようにすることを目的に、令和6年4月、学校教育法施行規則が改正されました。
ここでいう通信教育とは、高等学校の通信制の課程において提供される添削指導や面接指導、試験の方法による教育のことを指します。
文部科学省は通信教育を行うにあたり次のような配慮が必要だと考えています。
- プリントや問題集など通常使用している教材を添削課題として位置付けること
- 原則、対面での面接指導も行うこと
- 本来行われるべき学習の量と質を低下させることがないようにすること
この改正により、不登校生徒が自宅などで遠隔授業を履修した場合に、最大で36単位が修得できるようになりました。高等学校を卒業するために必要な単位は74単位以上のため、約半分を遠隔授業や通信教育によって修得できることになります。
また、高等学校におけるオンライン授業は、同時双方向型を原則としていますが、授業動画を視聴する、いわゆるオンデマンド型においてもリポートなどを提出することで単位に含めることができるようになりました。
高等学校における遠隔授業の実施状況
新型コロナウィルス感染症の影響で急速に広まった遠隔授業は、現在、高等学校においてどの程度実施されているのでしょうか。
文部科学省の調査によると、令和元年に7.9%だった遠隔授業の割合は、令和4年度には64.7%へと大幅に増加しています。
これは、令和2年に起きた新型コロナウィルス感染症の影響だけではなく、政府が主導している「GIGAスクール構想」が令和3年に開始されたことも関係していると考えられます。
学校における遠隔授業の取り組みとして、これまでに次のようなものが行われています。
- 海外の学校との交流学習
- 小規模校の課題解消に向けた合同授業
- 海外の英会話講師とのマンツーマンレッスン
- 企業の技術者等による指導
- 病気療養児に対する学習指導
また、文部科学省が行っている高等学校における遠隔授業の実証事業では、受信側の教師の役割として次のような声が挙がっています。
- 授業前の情報の共有
- 生徒と配信側教師のコミュニケーションのフォロー
- 手がとまっている子ども、集中力が切れた子どもへの個別支援
- 授業における説明補助
今後のオンライン授業の方向性
今後、オンライン教育をさらに活用するためには、まず高校生に対する1人1台端末の整備が必要となってきます。
全国の小学生・中学生に対しては政府の主導で児童生徒1人1台の端末が配布されていますが、高等学校の整備状況は、どうなっているのでしょうか。
高等学校における1人1台端末の整備は、設置者負担を原則している都道府県が23カ所、保護者負担を原則している都道府県が24カ所となっています。文部科学省の調査によると、令和6年5月の時点で、多くの公立高等学校ですでに1人1台端末の整備が100%に達しています。
オンライン教育のさらなる活用に向けた今後の取り組みとして、文部科学省は次のような方向性を示しています。
- 1人1台端末の整備・活用
- デジタル教材の整備・活用
- 遠隔教育の実施を後押しする環境構築
1人1台端末の整備・活用
継続的に端末を利用するためには、万が一の場合に備えて十分な予備機を準備し、そのうえで計画的で安定的な端末更新ができるようにする必要があります。また、自治体格差がでないよう共同研修を実施したり、通信環境を整えたりする必要もあります。
デジタル教材の整備・活用
学校だけでなく家庭でも端末を利用した学習ができるように、CBTシステム機能を拡充する必要があります。また、デジタル教材を活用しやすくするための仕組み作りが急がれます。さらに、文部科学省は、部活動や地域クラブにおいてデジタル動画を活用するよう勧めています。
遠隔教育の実施を後押しする環境構築
学校教育法施行規則で定められている教科数は中学校では10教科であるのに対し、高等学校では、共通の科目で55科目、すべての科目で220科目を超えています。しかし、現状では、学校が生徒の多様な学習ニーズに対応しきれていません。こうした課題を解決するために遠隔授業が有効だと考えられています。
そのため、文部科学省は高校生の多様な学習ニーズに応える遠隔授業配信センターの自治体設置を促進しています。また、不登校児童生徒や病気療養中の児童生徒に対する支援を進めるよう通知を出し、高等学校だけではなく中学校に対しても遠隔教育の特例制度の見直しを進めています。
さいごに
不登校を選択した児童生徒は年々増加していて、令和4年度の高校生の不登校者数は約6万人。このうち、17%はそのまま中途退学を選択しています。
中途退学を選択した子どもたちのなかには、学習意欲があるにも関わらず、止むを得ず中途退学した子どももいます。そうした子どもたちへの支援策として、令和6年、オンライン授業による単位取得が36単位を上限として認められるようになりました。
また、別室登校していたり、教育支援センターに通っていたりする小学生・中学生に対しても、学校と別室、学校と教育支援センターをつなぎ、遠隔教育が行われ始めています。
不登校を選択した子どもたちにとって重要なのは、学校に復帰することではなく、「学びを止めない」ことです。現在、オンライン授業を行うための通信環境が整っていないなど、まだまだ多くの課題が残っています。
koedoでは、今後も高等学校における遠隔授業の実施等を定点観測しようと考えています。
(koedo事業部)
【参考】