【不登校という選択】「無気力」と回答した小学生が10年前の約9倍、諸外国の不登校対策は?

令和5年10月、文部科学省は令和4年度の全国の不登校児童生徒数を299,047人と発表しました。不登校児童生徒数は10年連続で増加し、過去最多となっています。

文部科学省は、不登校が継続している理由として次の7つあると考えています。

不登校状態が継続している理由

  • 学校生活上の影響
  • あそび・非行
  • 無気力
  • 不安など情緒的混乱
  • 意図的な拒否
  • 複合
  • その他

令和4年度の調査において、小学生・中学生の不登校の要因において「学校に原因がある」と回答している不登校児童生徒は小学生・中学生を合計して60,723人と全体の約2割。このうち「いじめ」は約0.2%です。

不登校の要因(令和4年度)
令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査/文部科学省(最終閲覧日:2024.4.18)

では、不登校の要因でもっとも多いのはなんでしょうか。
現在、小学生・中学生いずれにおいても約5割の児童生徒が不登校の要因を「無気力・不安」と回答しています。

無気力型不登校となる原因は…?

無気力型の不登校児童生徒が増えている原因について、政府はコロナの影響で生活リズムが崩れたり、学校での楽しい思い出が作りにくい状況にあったりしたことが原因だろうと推測しています。

統計方法が違うため正確な比較ではありませんが、不登校の要因を「無気力」と回答した児童生徒の数が令和元年を境に急に増え、10年前と比較すると小学生が約9.6倍、中学生が約4倍となっています。

不登校要因「無気力」と回答した児童生徒の推移
児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査をもとに作成

しかし、不登校の要因を「無気力」と回答する児童生徒が増えていることに対し、コロナの影響だけが原因ではないことを指摘する専門家もいます。

いま、教育現場では子どもたちからのSOSに気が付きにくい状況にあります。

GIGAスクール構想により児童生徒に端末が1人1台配布されていることもあり、文部科学省は出席の確認をパソコン・タブレットで行うことを推奨しているからです。ひと昔前のように、朝の出席確認を教師が行わなくなったことで、子どもの声色や顔色のちょっとした変化に気づきにくくなってきているというのです。

無気力型の不登校には、次のような特徴が挙げられます。

無気力型不登校の特徴

  • 毎日の生活のなかで主体的になにかをすることは少なく、課題に対しても積極的に取り組もうという意欲に乏しい
  • 精神的には落ち着いている
  • 家のなかでは比較的元気で、自分の好きなことをして過ごしている

「学校に通わない」を選択した日本と諸外国の比較

日本で学校に行かないことを選択した子どもがフリースクールに通っている割合はまだまだ多くありません。その原因として、フリースクールに通うことが出席扱いになるかどうかに明確な基準がなく、その判断が各学校の校長に任せられていることが挙げられます。さらに、都心であればともかく、地域によっては小学生や中学生が通える範囲にフリースクールが少ないことが挙げられます。

では、諸外国では不登校を選択した子どもに対し、どのような場所が用意されているのでしょうか。

アメリカ

アメリカでは、義務教育での不登校は「違法」として厳しく対応され、場合によってはネグレクト(育児放棄)を疑われて、警察が動くこともあります。

そのため、アメリカでは子どもに不登校の兆候が見られた場合、かなり早い段階で周囲が対応に乗り出します。もちろんケースによって対応は異なりますが、子どもが学校に行きたがらなくなった場合には家庭と学校が認識を共有し、その原因が特定されたときには、それに合わせた対処を行います。

また、「学校が子どもに合っていない」と強く感じられた場合には、ホームスクールを選択する家庭も多いとされています。ホームスクールとは、親や家庭教師が指導者となって家で学習する教育スタイルです。

アメリカでは、全州でホームスクールが学校教育と同等の義務教育制度として認められています。コロナの影響でホームスクールを選択する家庭が増え、2021年の調査では、学齢人口の約6%がホームスクールで学んでいます。

韓国

過酷な受験戦争で知られる韓国で増えているのが、受験や進学を目指さない独自の教育を行う「代案学校」です。日本でいうフリースクール的な学校が正式な学校として認められています。政府認証の代案学校は、現在、国内に95校。卒業生が社会に出始めています。

代案学校のなかには、必須授業を全体の半分ほどにし、あとは生徒が自由に時間割を作ったり、生徒自身が授業の内容を企画したりしている学校もあります。こうした学校では、生徒自身が学びたいということに対して、学校側が講師を探すなど全面的にバックアップしています。

マレーシア

多民族国家であるマレーシアでは、民族別にマレー語、中国語、タミル語の公立学校があるなど、教育も多様性にあふれています。また、2010年前後から、保護者が自主的に動いた結果、グローバルな学びが増え、英国式、国際バカロレア、オーストラリア式、カナダ式、インド式、中華学校などが政府に認可されています。

さらに、インターナショナルスクールでは、入学時に「退学するときのデポジットの返還方法」についての説明があるなど、転校・退学に対するネガティブなイメージがありません。

そもそもマレーシアには「不登校」という言葉自体が存在していません。

ホームスクーリングが一般化していて、「学校以外の場所で学ぶ」ということが最初から選択できるようになっているからです。その形態も自宅で学ぶ形から、大規模な私塾のような場所で学ぶ形、ビデオ学習、マンツーマン、1対大勢などたくさんの選択肢が用意されています。

マレーシアでホームスクーリングを選択する子どもが増えている背景には、ホームスクールの費用が安いことに加え、オンライン教育のコンテンツが充実していることが挙げられます。

さいごに

令和4年度の全国の不登校児童生徒の数は約30万人。その約半分は、不登校の理由を「無気力」と回答しています。

日本の教育現場では、現在、教師不足が深刻な問題になっています。
指導経験の少ない若い教師のためにマニュアル化も進んでいて、その枠に収まりきらない子どもたちが暮らしにくくなっている可能性もあります。

一方、諸外国ではフリースクールやホームスクールが一般的に認められていて、学校以外の場所で学ぶ機会が与えられている国もあります。

日本でもコロナ禍を経て、オンライン授業や動画配信など、オンライン教育コンテンツが増えつつあります。子どもたちから学びの場を奪わないように新しい試みが少しずつ始まっています。

koedoでは、今後も不登校を選択した子どもについて定点観測を続けていこうと考えています。

(koedo事業部)

【参考】