IT化の進む教育現場で求められるコミュニケーションとは<Vol.3>

2021年1月24日

 今回も自分とのコミュニケーション(セルフコミュニケーション)についてお伝えしたいと思います。新型コロナウイルスの影響により仕事を失った人は、見込みも含めて全国で7万人を超えたことが厚生労働省の調査でわかったそうです。大変な事態ですね。こうした状況に直面すると、働けることのありがたみが身に染みてきます。

一説によると、働くとは「傍(はた)を楽にする」とあります。これは、周りの人を楽にしてあげる、そばにいる人の負担を減らしてあげるといった意味合いです。とても興味深い解釈だと思いませんか。

 「働く」という言葉を耳にすると、どうしても職場で働くイメージが浮かんでくると思いますが、何もお金を稼ぐことだけが働くという意味ではありません。専業主婦は家庭で働いていますし、定年退職した人たちも地域社会で働いています。ある意味では、子どもたちも学校で働いているのだと私は思います。

職場であれば上司や部下を楽にする、お客様を楽にする。家庭であれば家族を楽にする。地域社会であれば住人を楽にする、子どもたちの未来を楽にする。学校であれば先生を楽にする、クラスメイトを楽にする。もし、すべての人たちがこんな考え方で働いていたら、どのような世の中になるでしょう。

しかし残念なことに、多くの人たちが我慢して働いているのが実情ではないでしょうか。

都会の通勤電車に乗れば一目瞭然です。通勤途中の大人たちは、たいていスマホの画面を見ながらムスッとした表情をしています。休みの日に子どもたちと遊園地に向かうときとは、まったく違う表情です。

働いている理由を尋ねてみても、「食べていくため」「家族を養うため」などという答えが大半を占めます。もちろん、そうじゃないという方もいらっしゃるでしょうが、試しに周りの人に聞いてみてください。もし、宝くじで数億円当たったらどうするか? おそらく「真っ先に仕事を辞める」「一生暮らせるのならば働かない」という人が多いのではないでしょうか。

 「本音を言えば、働きたくない」「生活のため、仕方なく働いている」「嫌だけど、働くしかない」という大人は想像以上に多いものです。つまり、みんな我慢して働いているのです。

 ストレス社会と言われるようになって久しい現代社会において、懸命に働くみなさんには頭が下がります。しかし、こうした解釈のまま働いていると、ちょっとした困難やトラブルが起こるたびにイライラし、ストレスを感じるようになってしまいます。そして、このような親に育てられた子どもたちもまた、同じように我慢して勉強をしたり、我慢して学校へ通ったりするようになるでしょう。それほど親の解釈や感情というものは、子どもに伝染しやすいのです。

誰でも就職をするときには、やりがいのある仕事を求めたはずです。しかし、いつの間にかやりがいを失い、気がついたら我慢ばかりしている。現実の厳しさを痛感し、それに耐えかねて離職していく人も大勢います。あるいは辞めることもできずに、ただひたすら我慢して働いている人もいるでしょう。文部科学省の調査によると、精神疾患で休職となった公立学校の教師は毎年ほぼ5000人にものぼるそうです。

では、やりがいとは理想であって、現実には存在しないものなのでしょうか?

その答えこそ、もう一人の自分との会話、セルフコミュニケーションにあるのです。

どんな仕事であれ、仕事自体にやりがいがあるのではありません。やりがいは、その人の解釈によって見出していくものです。どんなになりたかった憧れの職業だったとしても、嫌なこと、苦しいこと、大変なことはたくさんあります。例えば最近注目されているYouTuberだってそうです。毎日ネタを考えたり、常にアンテナを張って情報収集をしたり、編集作業や締め切りに追われたり――。大好きで始めた仕事ですら、何かしらの苦しみがともないます。ましてやなりたくはなかった職業であれば、なおのことでしょう。

もし解釈をする力がなかったら、嫌なことや苦しいことは「嫌だからやらない」か、「嫌だけど我慢してやる」という選択肢しかありません。学校の勉強や宿題がそうですね。しかし、社会に出たら「嫌だからやらない」は通用しません。そんなことを言っていたら、どんな職場であれ、すぐに解雇されてしまいます。だとすれば、実質の選択肢は「嫌だけど我慢してやるしかない」の1択になります。ところが、この解釈が非常に危険なのです。なぜならば、知らず知らずのうちにストレスを溜め込み、いつしかそれが爆発してしまう恐れがあるからです。

次回は、その解決法方法についてお伝えしたいと思います。

この記事を書いたひと

岡根 芳樹
(おかね よしき)

ソーシャル・アライアンス株式会社代表取締役社長。若かりし頃は劇団主宰、現在は絵本作家の顔を持つ、発想力豊かな異色の講師。プレゼンテーションやクロージングといったセールスのスキルやノウハウが、部下の育成、生徒の教育、子育てなどに役立つことに気づき、あらゆる分野でコミュニケーション能力の向上・育成を目指す。心理学を応用した実践型ロールプレイング、成果にこだわった人材教育には定評があり、企業研修において高いリピート率を誇る。またかねてより学校教育、子どもへの教育が重要との考えを持ち、中学校や高校、大学、学習塾などでの講演活動も精力的に行っている。YouTubeチャンネル「おかねちゃんねる」を開設。