令和6年度 英語でデジタル教科書を先行導入、本格導入前のwebアンケートで分かったことは?
教科書のデジタル化が急速に進んでいます。
デジタル教科書とは、紙の教科書と同じ内容をタブレットやパソコン等で利用できるようデジタル化された教科書のことです。
令和6年度、まずは小学校5年生から中学校3年生までの英語においてデジタル教科書が本格的に先行導入されています。
教科書をデジタル化することで、英語では英単語の発音確認や朗読ツールを活用した学習など英文読解や音読活動が気軽にできるようになります
そのほか、算数・数学では図形を動かしながら問題が解きやすくなったり、理科の実験や技術の実技では動画を見ることで、文字で説明するよりも理解を深めやすくなったりなど苦手意識の克服が期待されています。
令和4年度 デジタル教科書の整備率は?
文部科学省の調査によると、令和5年3月1日現在、全国の小学校・中学校において指導者用デジタル教科書の整備率は平均87.4%で、前年と比較すると6%増加していて、整備が進んでいることが分かります。
さらに、学習者用デジタル教科書の整備率は全国平均が87.9%。前年の全国平均が36.1%だったことと比較すると急激に普及が進みました。
デジタル教科書本格導入前のアンケート結果は?
文部科学省がデジタル教科書の本格導入を前に、「学習者用デジタル教科書実証事業の参加校」の教師および児童生徒を対象に、webアンケート調査を実施しています。令和4年度の調査は、教師を対象としたものを6月と1月の2回、児童生徒向けの調査は、低学年・中高学年・中学生に分けて実施されました。
教師向けアンケートの調査結果
- デジタル教科書の使用頻度
デジタル教科書の使用頻度を「令和3年度以前に使用したことがある教師」と「本年度に初めて使用した教師」を比較すると、全体的に令和3年度以前に使用したことがある教師の方が、デジタル教科書を使用していることが分かりました。
デジタル教科書の使用経験が長いほうが、使用時間が長くなる傾向があることが見て取れます。
- 機能別の使用頻度
この調査において、デジタル教科書の機能別の使用頻度についてアンケートを取ったところ、「教科書の文章や図などをそのままの画面で大きくする拡大機能」を「いつも使う」「だいたい使う」と回答した教師が多いことが分かりました。
よく使う機能がある一方で、「機能があることは知っているが使ったことがない」「機能があるかどうか分からない」と回答されている項目も多く、デジタル教科書を効果的に使いこなせていない教師が多いことが推測されます。
- 本格導入に向けた課題
デジタル教科書の本格導入を前に、課題に感じた点を質問したところ「フリーズ、またはエラーが表示されたときに対処が必要」が52.3%ともっとも多く、「児童生徒が授業と関係ない操作に集中してしまうことがある」が50.8%、「学習者用デジタル教科書の導入に係る設定作業」が50.2%と続きます。
また、「学習者用デジタル教科書の効果的な活用方法についての情報が不足している」の割合も多く、学校内でのデジタル教科書のノウハウの蓄積や教師間での情報共有などが十分行われていない状況が伺われます。
- デジタル教科書の効果・影響
個別学習の場合のデジタル教科書の効果についてアンケートを取ったところ、半数以上の教師が「写真・イラスト・図表の細部まで確認させ、児童生徒の驚きや興味・関心の喚起を図ること」「児童生徒が自分で見たい資料を選択すること」は、紙の教科書よりもデジタル教科書の方が適していると回答しています。
また、一斉授業の場合のデジタル教科書の効果についてのアンケートでは、6割以上の教師が「必要な情報のみを見せたいとき」「学習内容を視覚的に確認するとき」は、紙の教科書よりもデジタル教科書の方が適していると回答しています。
児童生徒向けアンケート調査結果
小学校中高学年を対象に「デジタル教科書と紙の教科書のどちらが使いやすいか」についてアンケートを取ったところ、「情報を集めやすい」「図や表が見やすい」「資料を見比べやすい」については、令和3年度と同様にデジタル教科書の方が使いやすいと回答した児童が多い傾向にありました。
一方で「書き込みやすい」「学んだことを残しやすい」は紙の教科書の方が使いやすいと回答した児童が多くいました。
中学生も小学校中学年と同様に、デジタル教科書の方が「情報が集めやすい」「図や表が見やすい」と回答した割合が多く、紙の教科書の方が「書き込みやすい」「学んだことを残しやすい」が多い傾向にありました。
小学校、中学校のいずれにおいても、前年度から割合が大きく変化した項目がなかったことから、しばらくは紙の教科書とデジタル教科書を使い分けることが重要だと考えられます。
デジタル教科書と1日あたりの勉強時間の関係
この調査では、小学校中高学年および中学生に対して、1日あたりの勉強時間についても調査しています。
「学校の授業以外に平日どれくらい勉強しますか」という問いに対し、小学校中高学年の児童は「30分以上1時間より少ない」と回答した児童がもっとも多く約26%を占めています。また、デジタル教科書の使用頻度とのクロス集計によると、デジタル教科書の使用頻度が高い児童の方が、勉強時間が長い傾向があることが分かります。
同じ質問を中学生に行ったところ、「1時間以上2時間より少ない」と回答した生徒がもっとも多く26%でした。また、デジタル教科書の使用頻度とのクロス集計によると、小学生と同じくデジタル教科書の使用頻度が高い生徒の方が、勉強時間が長いことが分かりました。
さいごに
令和6年度、小学校5年生から中学校3年生の英語の教科書において、デジタル教科書の先行導入が本格的に開始されました。
令和4年に行った調査では、「書き込み」や「学んだことを残しやすい」のは紙の教科書、「資料の比較」や「情報収集」ではとデジタル教科書の方が使いやすい点があったことが分かりました。
また、現在のところデジタル教科書を利用している子どもの方が勉強時間が長いなど、子どもに良い影響を与えていることも分かりました。
koedoでは、今後もデジタル教科書の導入について定点観測を続けていこうと考えています。
(koedo事業部)
【参考】