IT化の進む教育現場で求められるコミュニケーションとは<Vol.5>

2021年1月24日

前回は、起きている事実をどう解釈するか大切であり、「面白い」という解釈は無敵だとお伝えしました。今回はクレーム処理さえも面白くしてしまう解釈についてお伝えしたいと思います。

 真面目な人は、「クレーム対応は大切な仕事だ。相手は不満があるのだから誠意を持って対応しなければ」と考えがちです。しかし本音はどうでしょう? 「うわあ、嫌な人が来たな。でも仕事だから我慢して対応しないと」と思っている人が多いのではないでしょうか。前回もお伝えした通り、これではストレスが溜まってしまう一方です。しかも、その思いは少なからず相手にも伝わってしまうでしょう。

 そんなとき私は、このように解釈していました。

「お客様の中には時どき神様が紛れ込んでいる。神様は私たちを試すため、必ず何かしらのクレームをつけてくる。でもそこで嫌々対応をしたらバチが当たるぞ。逆に、もし一生懸命に対応したら、ものすごいご褒美をくださるかもしれない!」

 実に突拍子もない解釈ですが、面白い解釈だと思いませんか? こんなふうに解釈すると、クレームを言うお客様が現れるたびに「あっ、神様だ。でも私にはバレていますよ! よーし、思いっきり親切に対応しちゃいますからね」と、ちょっぴり嬉しくなり、気持ちを前向きにすることができます。そして、全力でクレームに対応しているうちに、なぜか本当に面白くなってくるのです。人間の心とは不思議なものですね。

 こんな話をすると、中には不謹慎だと感じる方がいるかもしれません。確かに不謹慎だと私も思います。しかし、ストレスを抱えて嫌々接するより、ワクワクしながら接したほうがコンディション良く対応でき、結果的にお客様も喜んでくれると思いませんか?

 現場では、「正しさ」よりも「成果」を優先することのほうが大切な場面が多々あります。そのためときには、真面目を手放すことも必要となるでしょう。でも安心してください。「手放す」と言っても、「捨てる」わけではありません。真面目をいったん手放しても、不真面目になるわけではありません。真面目に頑張り過ぎて、少し固くなっている頭や心を柔らかくするというイメージです。

 学校の勉強も同じです。嫌々取り組んだとしても長続きはしません。みなさんにもきっと、そんな経験があるでしょう。我が家では、「我慢してやるくらいならやるな」「面白いと思えるように解釈を変えてからやれ」と教えて育てました。

 例えば受験勉強。息子は国語や数学は好きなのですが、理科や社会などの暗記科目が嫌いでした。つまり、そのまま勉強しても「我慢をして」暗記することになります。そこで息子は、どのように「面白く」解釈したと思いますか?

「暗記科目は雑学だ。雑学王に俺はなる!」

 するとどうでしょう。大好きな漫画の主人公になった気分で、1つ何かを覚えるたびに強敵を倒すかのように、面白がりながら暗記科目に取り組むようになったのです。

 余談ですが、あまりに勉強をし過ぎて睡眠時間が足りなくなり、それを心配した母親に叱られるくらいでした。それでも寝たふりをしながら布団の中で英単語を覚えていたこともあったそうです。

 一番驚いたのは志望校の2次試験が終わったときです。五分五分の手応えだという息子が、こんなお願いをしてきました。

「父さん、お願いがあるんだけど。もし、志望校に合格していたとしても、もう一年予備校に通わせてもらえないかな。もう、受験勉強が楽しくて仕方ないんだ」

 そこで私はこう答えました。

「お前はバカか。大学に通いながら、勝手に受験勉強を続ければいいだろ」

「あ、ホントだ。お父さん、頭いい!」

 このように、解釈を変えることができれば、たいていのことは面白くなります。嫌々ではなくワクワクして、ストレスフルではなくストレスフリーに、受動的ではなく能動的に。子どもにできることが、私たち大人にできないはずはありませんね。

 もし、親も教師もそんなふうに働いていたら、子どもたちもワクワクしながら勉強をしたり、厳しい練習にも面白がりながら取り組んだりするようになるのではないでしょうか。

 次回からは、「プレゼンテーション」というテーマでお送りしたいと思います。どうぞお楽しみに。

この記事を書いたひと

岡根 芳樹
(おかね よしき)

ソーシャル・アライアンス株式会社代表取締役社長。若かりし頃は劇団主宰、現在は絵本作家の顔を持つ、発想力豊かな異色の講師。プレゼンテーションやクロージングといったセールスのスキルやノウハウが、部下の育成、生徒の教育、子育てなどに役立つことに気づき、あらゆる分野でコミュニケーション能力の向上・育成を目指す。心理学を応用した実践型ロールプレイング、成果にこだわった人材教育には定評があり、企業研修において高いリピート率を誇る。またかねてより学校教育、子どもへの教育が重要との考えを持ち、中学校や高校、大学、学習塾などでの講演活動も精力的に行っている。YouTubeチャンネル「おかねちゃんねる」を開設。