ネット利用で感じている不安、トラブルを防ぐために保護者が子どもに教えるべきことは?

令和6年8月、株式会社MM総研が実施した調査によると、1週間にスマートフォンを利用する時間は、5歳から17歳の子どもが平均1,219分(約20時間)、18歳以上70歳未満が平均1,213分であることが明らかになりました。

つまり、18歳未満の子どもの方がわずかではありますが、スマートフォン利用している時間が長いということです。

では、スマートフォンを利用していったいなにをしているのでしょうか。

総務省が令和6年7月に公表した資料によると、7割以上がスマートフォンでインターネットを利用していることが分かりました。

インターネット利用機器(令和5年)
インターネット利用機器の状況/総務省(最終閲覧日:2024.10.04)

インターネット利用時に感じる不安とは

総務省の調査によると、インターネット利用者に占めるSNSの割合は8割を超えていて、小学生でも40%以上、13歳以上60歳未満の各年代では約9割がSNSを利用していることが分かりました。

SNS利用状況(令和5年)
SNSの利用状況/総務省(最終閲覧日:2024.10.04)

また、この調査によるとインターネット利用者の約7割が、インターネット利用時に何らかの不安を感じています。

インターネット利用上の不安の有無
インターネット利用上の不安の有無/総務省(最終閲覧日:2024.10.04)

感じている不安の内容について過去5年で大きな動きはありませんが、「違法・有害情報や真偽不確かな情報を見てしまわないか」が昨年と比較すると約8ポイントアップしています。

インターネット利用時に感じる不安
インターネットで感じる不安の内容(複数回答)/総務省(最終閲覧日:2024.10.04)

また、世代別に見ると、20歳未満の利用者は「ソーシャルメディアなどで相手とトラブルにならないか」、20歳以上60歳未満では「電子決済を信頼できるか」が不安の上位に入っています。

インターネット利用時に感じる不安
インターネット利用時に感じている不安の内容/総務省(最終閲覧日:2024.10.04)

ネット社会における子どもを取り巻く現状とは

子どもがトラブルに巻き込まれることを防ぐためには、まず保護者が子どもを取り巻く社会やネット社会の現状を知る必要があります。

インターネットやスマートフォンが普及したことで、子どもたちの周りでなにが起きているのか大きく次の3つに整理できます。

子どもの周りで起きている現状

  • 自分が被害に遭う
    • 親切を装った大人が相談に乗り、連れ出すような事件
    • わいせつ目的の事件
    • 個人情報の流出、架空請求、ひぼう・中傷 etc.
  • だれかに迷惑をかける
    • ひぼう・中傷、個人情報の流出
    • 著作権・肖像権などの侵害
    • 不適切な情報の発信 etc.
  • 自滅する
    • ネット依存
    • フィルターバブル
    • 歩きスマホによる事故 etc.

子どもに教えておくべきこと

こうしたことを踏まえたうえで、トラブルに遭わないように子どもたちにはどのようなことを教えておくべきなのでしょうか。

「歩きスマホ」をしない

歩きながら、もしくは自転車に乗りながらなど、なにかをしながらスマートフォンを操作している姿をよく見かけます。

東京消防庁の調査によると、令和元年から令和5年までの過去5年間で、スマートフォン等の画面を操作しながら歩いていたり、自転車に乗っていたりしている人のうち158人が救急搬送されています。

歩きスマホによる年代別緊急搬送者数
歩きスマホによる年代別緊急搬送人員/東京消防庁
(最終閲覧日:2024.10.04)

また、一般社団法人電気通信事業者協会の調査によると、「歩きスマホをしている人に対して危ないと感じたことはあるか」という質問に対し、首都圏エリア・関西エリアのいずれにおいても約9割の人が「危ないと感じたことがある」と回答しています。

歩きスマホに危険を感じた経験
「歩きスマホ」が危ないと感じた経験/一般社団法人電気通信事業者協会(最終閲覧日:2024.10.04)

インターネットの「記録性」を意識する

ネットへの書き込みや、アップロードした動画や写真は、世界中の人がいつでも見ることができますが、一度拡散した情報や写真等は完全には削除できません。

「グループ内だから」「カギをつけているから」と安易に考えてしまいがちですが、場合によっては、グループ内のだれかがほかのSNS等で発信してしまう可能性もあります。

またネット上の書き込みは匿名性が高いため、気がゆるんでしまい攻撃性が増す傾向にあります。

たとえ匿名で書き込んだ内容でも、投稿者を特定する手段はあります。そのため、場合によって逮捕されたり裁判を起こされたりする可能性があります。

単に再投稿しただけであっても「広めることに加担した」とみなされ、損害賠償を請求されたり、名誉棄損罪によって罰金を払うことになったり、侮辱罪で拘留されてしまうこともあります。

情報を鵜呑みにしない

ネット上で出回っている情報がすべて正しいとは限りません。

いい加減な情報や、意図的にだれかをだまそうとしている情報なども多数含まれています。

令和4年10月に設立された日本ファクトチェックセンターによると、フェイクニュースに騙されにくくなるためには、次の4つの原則があると言います。

フェイクニュースに騙されにくくする4つの原則

  • 情報の発信元の身元をチェックする
  • 誰かから誤りを指摘されていないかチェックする
  • 報道機関や公的機関の情報と照合する
  • 情報元から正確に引用しているか確認する

リテラシー教育の取り組み現状

ネット上に情報があふれている現在、ネットいじめやインターネット上のなりすまし、個人情報の取扱い、著作権・肖像権についてなど、子どもたちがトラブルに巻き込まれないように学校でもリテラシー教育が進んでいます。

総務省が高校1年生を対象に毎年行っている調査によると、複数回答可能な「フェイクニュースに遭遇した際どう対応するか」という質問に対し、全体の半数近くの生徒が「他の人やメディアではどのように言われているか等、『他ではどういわれているか』をチェック」したり、「その情報がどこから、いつ発信されたか、根拠となるモノが今もあるか等、情報源をチェック」したりしたと回答しています。

フェイクニュースに遭遇した際どう対応するか
フェイクニュースに遭遇した際の対応策/総務省(最終閲覧日:2024.10.04)

SNSを取り巻く世界の対応

世界でも利用者数の多いFacebookやInstagramを運営しているメタ社は、令和6年9月、「Instagram」で18歳未満の利用者向けに「利用時間が1日60分を超えると利用中止」を促す通知が届く新機能を発表しました

この新機能は日本でも令和7年1月から適用される予定です。

SNSの多くは年齢制限を設けているものの、小学生でも約4割がSNSを利用していて、さらに利用時間が増えているため、ネット依存や学業への影響が心配されています。

またSNSを起因とする犯罪行為は日本だけではなく、世界でも増加傾向にあります。そのため、世界各国でSNSを規制する動きがあります。

たとえば、アメリカフロリダ州で14歳未満はアカウント開設を完全禁止、14歳から15歳は保護者の同意がないとアカウントを開設できません。このほかにもアメリカ50州のうち35州でSNS規制の動きがあると言われています。

さらにEUでも違法コンテンツへの対策や未成年者保護を義務付ける法律が施行されています。

日本でも、ネット上のひぼう・中傷など悪質な侮辱を厳正に対処するために法定刑を引き上げたり、運営会社に対し投稿削除の判断基準を公表することを義務付け、削除要請があった場合に削除するかどうかの結果を通知することが義務付けたりしています。

さいごに

総務省の調査によると、インターネット利用者の約7割がインターネット利用時に不安を「感じる」と回答しています。

なにに対して不安を感じているかは世代によって多少違いますが、どの世代でも「個人情報の流出」に不安を感じていることが明らかになりました。

インターネットに書き込んだ情報やアップロードした動画や写真を完全には削除できません。書き込んだ内容によっては就職活動などに影響を与える場合もあります。たとえば友だちと一緒に撮った写真をアップロードする際には、友だちに許可を求めるなど、一人ひとりが注意を払わなくてはいけません。

koedoでは、今後もネットリテラシー等について定点観測を続けていこうと考えています。

(koedo事業部)

【参考】