【親になるということ】話を聞くということと、言いなりになるということの違い

子育てに一生懸命になると子どもの「いいなり」になってしまうことがよくあります。

「子どもの意見を尊重したいから、子どもがやりたいようにやらせることが大事」と考えてしまい、その結果、子どものいいなりになることで親子ともども大変苦労する可能性もあります。

子どもを尊重することは、なんでも言うことを聞くということなのでしょうか。

たとえば習い事を考えてみましょう。
私の子どもはふたりとも剣道を習っています。今では大人になってしまったのでそれこそ「自分の意思」で稽古に通っていますが、小さいときは毎週送り迎えをし、防具や胴着の準備なども一緒にやりました。

多いときは週5日稽古をしていましたので、それはそれは大変で…。いま考えてもよくあんな風に時間を使ったものだと我ながら感心してしまいます。

うちの子どもは稽古を嫌がることがなかったし、辞めたいと言い出したこともなかったのでそのまま来てしまいました。しかし、初めて息子を通わせたいと道場に相談しに行ったときに、「4年生くらいからにしてください」と言われたのです。

そのとき息子は1年生。剣道をやりたくて「小学生に入ったら絶対やるんだ!」と宣言していたものでした。「なぜ4年生なのですか?」と聞いたら、剣道はたたかれると痛い。痛くていやだ…という気持ちを最初に持ってしまうと困る。でも、だからと言って入ってきたら手加減をするものでもないので、自分が何をしているのか理解できる年齢になってからにしてほしいということなのです。

息子にその話をしたら、泣いて我慢すると言いました。けっきょく4年生まで待ったので、周囲の同級生からはだいぶ遅れをとりましたが、今でも剣道をやっている同級生は少なく、本当に好きな子だけが続けている状態です。

娘はそんな兄を見ていたので、2年生までは我慢しましたが、「痛いのはわかっている、嫌だと言わないからやりたい」と先生に直談判して、無理やり(?)2年生から入ってしまいました。しかし一度も痛いからやりたくない…とは言いませんでした。

そんな経験があるので、毎年新しく入ってくる小学校低学年のお子さん(下手をすると幼稚園)の保護者に、せめて中学年になってから…とお伝えするようにしています。

しかし、そこで皆さんおっしゃるのが「子どもがやりたいと言っているので、意思を尊重したい」という言葉です。チャンバラごっこや、アニメのヒーローに憧れて剣道をやりたくなる子どもは多いのですが、派手なアクションをするわけでもなく、決まりごとが多い剣道の稽古は軽い気持ちで入ってくる子どもにショックを与えます。

やりたいようにできないといって半年足らずで辞める子は結構いるのです。ほかにも、運動神経の良い子は短期間である程度上達しますが、気を抜いていると地道に稽古を続けている子どもにどこかのタイミングで抜かれることがあります。また、自分より下だと思っていた相手に負けたということでプライドが傷つき、辞めるという子もいます。

辞めるときに私はもう一度「もう少し続けてみませんか?」と保護者に聞きます。するとやはり、「子どもが辞めたいと言っていますので、その意見を尊重して…」という答えが返ってくるのです。

剣道を始めるのも辞めるのも確かに個人の自由ですが、子どもがやりたいと言えばやらせ、嫌だと言えば簡単にやめさせることは果たして意見の尊重でしょうか。

小学生だと、あまりよく考えないで「習いたい」「やりたい」と言い出すことはよくあります。これは発達段階上ある程度は仕方のないことですが、自分の発言に責任があるということ、深く考えて意思決定する力を身に付けてもらうためには、保護者の声掛けがとても重要になってくるのです。

それはつまり「何のためにそれをしたいのか」「そうすることで何が起こる(影響)のか」ということを考えさせるのです。

うちの息子はこうでした。

  • 剣道を何故やるのか?

→ 以前試合を見て格好いいと思った。
→ サッカーも野球も興味がないが、スポーツはやりたい
→ 大人になっても続けたい

  • 剣道をすると何が起こるのか?

→ 学校以外の友達が増える
→ 体力がつく
→ 宿題や勉強の時間をとるのが大変
→ お母さんが毎日一緒に見学することが必要

それで最終的に「それでもやりたい」ということなら、毎日の生活に優先順位をつけて行動することを約束してもらいました。また、私が毎回一緒に行くため、妹などほかの家族を説得する必要もありました。そうしたことを自分で決めてもらったのです(もちろん家族への根回しはしましたが)。

意見を聞いてもそれがすべて叶うわけではなく、相手を説得し、理解を得る必要があるということ。子どものことを「わかったつもり」になるのではなく、本人の口から意思を伝え、責任をもって実行するように運んでいくことが大切ですね。そうすれば、ただの「言いなり」にはならず、子どもを尊重することにつながるのだと思います。

この記事を書いたひと

ライター:吉田理子様

吉田 理子
(よしだ りこ)

1971年生まれ。Windows95発売当時に社会人となり、以降パソコン教室講師やITサポート等の仕事に従事。2005年に企業・学校向けのIT、情報教育を目的とした企業組合i-casket設立。2018年には一般社団法人s-netサポーターズを設立し、主に小中学校にて子供・保護者・教員向けの情報リテラシー、プログラミング的思考に関する講座を行う。そのほか地域ボランティアや主権者教育の活動をボランティアで。趣味は料理と読書。