「共通テストの科目にプログラミングが追加ですって!」と慌てているお母さんに一息ついてもらう話

先日ニュースで、2025年度の共通テストから受験科目が再編されるということを知った。いままでのセンター試験でも小さい変更はいくつもあったようだったが、中でも新しい科目として「プログラミング」が追加されることに目がいった。私の年代では特に「プログラミングというのは理系の人が使う専門性の高いもの」という認識が強いからだ。私のような文系出身の一般人は、よっぽど好きでもない限り一生お目にかかることはないと思っていた。

だがこの数年、世界の流れが変わり、子供に小さいときからプログラミングの知識を学ばせる風潮が強くなった。近年、日本でも小学校の授業にプログラミングが導入されている。学校でも科目導入されたものだから、親も自分が教えられないプログラミングは習いに行かせなきゃ!と、習い事の選択肢としてプログラミングを選ぶ家庭が増えたのだ。

私のような小さな個人塾にも、教材会社からプログラミングのシステム導入の営業電話がかかってくる。私の塾ではe-learning教材を使っているので、パソコンを使う教材は相性が良い。利益になるのもわかる。しかし、私は「他にもっと子供たちが付けるべき力があるので、利用しません!」とお断りしている。その「つけるべき力」とは国語の力だ。

小学生の国語授業をしていると、文章に抑揚をつけて読む訓練が足りない気がする。実際に入試問題を解くときも、毎回くまなく全文を読むわけではなく、濃淡を分けて読み飛ばす部分がある。 その見分け方が下手な子が多い。小学校でも音読の宿題はあるにはあるが、宿題にしている意味がわからないまま音読をしている。意味がないと思いながら音読をしているため、ほとんどの生徒が適当に終わらせて、言葉の抑揚や区切りがわからなくなっている。

つい先日も、「先生!『ぶばった』って何ですか?」と質問された。『ぶばった?』と疑問に思いテキストを見てみると、「とぶばった」つまり「飛ぶバッタ」と書かれていた。短歌の問題だったので、作者は平仮名にすることで言葉の柔らかさを表現したかったのだろうが、『ぶばった』と区切られて意味不明になってしまっていた。

このような勘違いも、区切りを意識して声に出して読むとすんなり解決することが多い。

ただ、いまは英語にプログラミングにと小学生の学習教科が増え、丁寧に学習ができていない。特に2020年度は春に一斉休校があったことで、丁寧に学習する時間が足りていないのだ。

実際の共通テストにおいても、プログラミングは選択可能な受験科目として追加はされても、大学が選ぶ受験科目として登場する場は少なそうだ。事実、共通テストには「情報」という科目があるが、大学が指定する科目として使えるのはほんのわずかだ。それと同様に使わない可能性が高い科目に対して、本当に力をつけておくべき科目をさし置いてまで躍起になる必要はないと思う。

親として何ができるかを考えるならば、小中学生の間はいろいろな物事に興味が持てるような環境を整え、一緒に興味を持ち、肯定してあげることが大切に思う。特に小学生の低学年の間は、親と一緒に学ぶということが大切に思う。その中の一つとしてプログラミングもあるのかもしれない。

実際に小学校の出前授業で簡単なプログラミングを教わり、自分の作ったプログラミング通りにロボットが動くのを見て感動していた生徒がいたと聞けば、その子にとって興味深い学びの一つだろうと思う。その子にはもっともっとプログラミングを学び、自己の世界を広げて欲しいと思う。そういった意味のプログラミングはウエルカムだ。

世の中の風潮にのまれることなく、子供たちにとって本当に生きる力となる「学び」を選び与えていくことが、親や私たち指導者の責務と考える。

この記事を書いたひと

松本 正美
(まつもと まさみ)

「学ぶ力は、夢を叶える力!」松島修楽館代表。中学3年生の時に「将来は塾の先生になる!」と決意し、大学1年生から大手個別指導塾で教務に就く。卒業後、そのまま室長として10年間勤務。その後、新興のインターネット予備校で生徒サポートの仕事に携わった後、2013年に松島修楽館を開業。単なるテストのための勉強だけではなく、「どんな夢でも、正しい努力によって叶えることができる」ということを子供たちに伝えるため、根本的な「学ぶ力」を育むことを重視した指導を行っている。2人の高校生の母。趣味はサックス、タップダンス。