【授業のためのICT入門】初めての宿題は「証拠写真」

2022年7月29日

夏休みもそろそろ終盤です。最近は8月の最終週から2学期が始まる学校も多いようですが、1学期に導入された1人1台タブレット。2学期からは家に持ち帰って学習を始めるというところもあるのではないでしょうか。

最初は家に持って帰ってWi-Fiに接続できるかや、指定されたドリルができるかなど、子どもたちも「家でタブレットを使って学習すること」に慣れる時間が必要です。しかし、徐々に慣れてきたら何をしましょうか。できれば最初は「楽しい」と思えて、タブレットの機能を使うことができる課題が良いのではないかと思います。

小学校の高学年から低学年、どの年齢でも使える機能の一つにカメラ機能があります。いままでも何度かご紹介していますが、カメラ機能を使った今回のお題は「証拠写真を撮ってくること!」です。教科書で覚えたたくさんのこと、お家の中にどれだけあるかを探して、写真に撮り、学校で発表するというものです。

例えば、

カメラ機能を使って「証拠写真を撮る」

  • 算数の単位(cmやml、kg等)が表示されている商品
  • 社会や家庭科の識別マーク(PETボトル・紙製容器包装・プラスチック製容器包装・飲料用スチール缶・飲料用アルミ缶)
  • ベルマークのついている商品
  • 家庭科の洗濯表示

<もっと低学年の場合>

  • 数字(カレンダーやテレビのリモコンなどの他、思わぬところに数字はあります)

<高学年の場合>

  • SDGsのマーク

など、授業内容に応じていくらでも思いつきますし、子どもたちも楽しんで探し出してくれるでしょう。

面白いところでは東京オリンピックで話題になった「ピクトグラム」を探すのも良いでしょう。道路標識や植物なども探したいところですが、家の外に出る場合は「ながらタブレット」にならないようにすることや、破損の原因にならないようにすることなど、家の中よりも注意が必要になりますので、状況に応じて出題されるのが良いかと思います。

そうして集めてきた様々な「証拠写真」たちを、授業で発表します。何の証拠なのか? それは、学校で習ったことが自分たちの生活につながっているという証拠です。特に算数は「何の役に立つの?」と、自分の子どもにも昔よく聞かれました。曰く「計算機があるじゃない、パソコンがあるじゃない、別に算数の計算なんてできなくてもいいじゃない?」と。

でもそこで「そうじゃないよ、毎日の生活の中にたくさんの数字や単位が隠されているよ。例えば台風だって、『すごい風が吹いています、雨もいっぱい降っています』と言うより、

台風を表す数字や単位

  • 移動     西 35 km/h  
  • 中心気圧   1010 hPa  
  • 最大風速   15 m/s  
  • 最大瞬間風速 23 m/s

と言われた方がどのくらいすごい風なのか、単位を知っていればわかるし、熱が高くて大変というより、熱が38.5℃ありますと言われた方が、すぐに病院に行きなさいとわかるでしょ? お買い物だって、いま持っているお金で何がどのくらい買えるのかがわかるから、算数は必要だと思うよ……」と話し、そのあとたくさんの数字を探しにスーパーに行ったことがありました。

子どもたちは自分が見つけてきたことに関しては喜んでその先を知ろうとします。自分が探した生活と勉強のつながりの証拠が授業で使われたら、より積極的に関わろうとするのではないでしょうか。

もちろん、証拠写真以外にもカメラ機能を使った宿題のアイディアはたくさんあります。連写の機能を使って物や水が高いところから低いところに転がり落ちる(流れ落ちる)様子を撮影したり、空に浮かぶ雲の形で面白いと思ったものをパノラマ機能を使って撮ってみたり。家庭科で習った料理を家でも作り、写真を撮るだけでなく食べた感想をお家の人に話してもらう様子を動画で撮影したり――。

写真や動画という、記録に残せる機能を使うことで、家庭と学校を結ぶ、連続した学びに結び付けることができます。何より、子どもたちが楽しんで取り組めることが、家庭でのタブレットを使った効果的な学習に導くためのステップになるのではないでしょうか。

この記事を書いたひと

ライター:吉田理子様

吉田 理子
(よしだ りこ)

1971年生まれ。Windows95発売当時に社会人となり、以降パソコン教室講師やITサポート等の仕事に従事。2005年に企業・学校向けのIT、情報教育を目的とした企業組合i-casket設立。2018年には一般社団法人s-netサポーターズを設立し、主に小中学校にて子供・保護者・教員向けの情報リテラシー、プログラミング的思考に関する講座を行う。そのほか地域ボランティアや主権者教育の活動をボランティアで。趣味は料理と読書。