セミナーのオンライン化で起こったこと(その2)

2021年10月20日

前回は、講義を提供する側に起こったことをお伝えしました。そこで今回は、講義・授業を受ける側に起こったことをお話ししようと思います。

コロナ禍が長引く中、オンラインセミナーも回数を重ねることで、そのメリットが知られていきます。例えば、PCとネットワーク環境があれば教室に行かなくても受講できることから、在宅勤務中でも受講できます。また移動時間がかからないことから、業務時間を削らずに済みます。

こうしてみると良いことばかりのようですが、実はそのことが次のようなマイナス影響を引き起こしているように感じています。私の体験した例をいくつかご紹介します。

ケース1

とある大学でオンライン講義に登壇したのですが、出席している学生は全員カメラオフ&マイクミュートでした。プライバシーに配慮して生徒のカメラはオフ、またハウリングや雑音が入る可能性があるので発言時以外はマイクをミュートにしておくことは珍しいことではありません。講師側が生徒の反応がわからないことに苦慮する程度でしょうか。

ところが、講義の途中で学生に発言を求めたときに、面白い事象が発生しました。自分が発言するときにはミュートを解除することになりますが、マイクはご自身の声だけではなく周囲の環境の音も拾います。ある学生は、ゲームセンターかパチンコ店と思われる騒がしい場所で授業を受けていたようです。また別の学生は部屋で友人と一緒にいるらしく、複数の人が大きな声で楽しそうに会話し笑っている声が聞こえてきました。

ケース2

テレワークにより通勤のための移動時間が減り、その時間を利用して資格の勉強をする方が増えています。私は先日、中小企業診断士試験の公開模擬試験の採点を担当させていただいたのですが、答案数は昨年から2割以上増えている一方、平均点は大きく下回っており、またバラつきも小さかったです。問題の難易度の差もあるので一概に比較することはできませんが、答案作成のレベルが下がっているようです。

例えば、今年の受験生の多くが「英数字は1マスに2文字入れる」「行末の句読点は行末のマスの中に入れる」といった本試験の“お作法”ができていませんでした。他にも、与件文中の同じ情報は複数の設問に使わないのが通例なのですが、同じ内容を複数の設問の回答に使ってしまったことから、答えるべき内容がズレているものも多く見受けられました。

ケース3

緊急事態宣言が解除されたことから、久しぶりにオフラインで小学校の授業参観がありました。そこで私が見たのは、自宅学習のときには見たことがないほど授業に集中している自分の子供の顔でした。これにはさまざまな理由があるのでしょうが、私が強く感じたのは、同じ目的を共有する人が集まるという“場”の効果です。「学校に行くことは勉強をしに行くこと」「教室は勉強をする場」だと認識し、それ以外のことを考える余地を極力排除することで授業に集中するのだと思いました。まるで、競走馬が着けるブリンカーのようなイメージですけどね。

イメージ写真

オンラインで自宅学習する場合、家という場では家族が家事をしていたり、小さい兄弟も別のことをしていたりしますから、自分の勉強に集中しにくいようです。また、下の子の勉強は上の子から見ると「簡単なことをしている≒遊んでいる」と映るようで、「私は勉強しているのに弟妹は遊んでいてずるい」という感情が芽生えるようです。そして「ずるい」という感情が頭の中で増幅されて渦を巻き、これがさらに集中を阻害している――見えないところでそのような力が働いているように感じています。

この記事を書いたひと

ライター:小泉武利さん

小泉 武利
(こいずみ たけとし)

中小企業診断士。化学工場で開発や品質保証を中心にキャリアを積み、その後は環境管理や購買、経理、人事など広く間接業務全般の管理を担当。2017年にコンサルタントとして独立し、クールな戦略コンサルを目指していたが、お会いする人に「トトロみたい」「癒される」と言われ続けたことからセルフイメージが崩壊し、現在に至る。経営全般に関するコンサルティングの他、化学物質規制のコンプライアンスやファシリテーション、ISOマネジメントシステムなど、一般には聞きなれない分野のセミナーに多くの登壇実績あり。