セミナーのオンライン化で起こったこと(その3)

2022年7月29日

セミナーのオンライン化で起こったこと(その1)(その2)でお伝えしたことを図にまとめてみました。

マインドマップ

オンライン学習は移動がないことなどから時間を有効に使えますが、私はいまのままでは教室授業と比べると理解度・習熟度が低くなるのではないかと考えています。また現場に立つ講師たちも、そこに歯止めがかけられていないようです。みなさんはどう考えますか? そんなことはないと思いますか?

それでは今後はどうなっていくのか、私なりに予想してみました。

主流は「コンテンツ消費型」

テレビで難問クイズ番組が流行っています。YouTubeでも「あなたの知らない○○を教えます」というような動画が数多く視聴されているようです。これらのことから、知識欲を満たしたいという意識が強くなっていることがわかります。「移動時間が無くなったことで空いた時間を学びに使いたい」というニーズは今後も続くでしょう。

一方で、「ながら視聴」の増加、単一テーマを短時間で伝える動画が人気となっていることなどを鑑みると、深い学びは求められていないように感じています。短時間で楽しく学べて1回(多くても数回)見ておしまい、というコンテンツ消費型の講義ニーズが高そうです。

オンデマンドとライブ配信の住み分け

受講生の反応を見る必要がないなら、講義はテレビの録画放送のように一方的に伝えることでもことが足りますし、複数の人が同じ時間を共有する必要は薄いと思います。基本的な内容はオンデマンド配信とすることで、受講生は好きな時間に講義を聞くのが良いと思います。

しかし、講師は配信スキルが求められます。芸人さんとまではいかないまでも、話を聞いていても飽きさせない程度の話術は求められそうです。また説明資料もPowerPointの画面共有が一般的ですが、これだけでは飽きられそうです。OBS(Open Broadcaster Software)のようなシステムを使って画面を切り替えたり、画像や音に演出を加えたりするなど、テレビ番組のような画面を配信することが必要になるかもしれません。

一方、学びを深めるためのグループディスカッションやワークショップなどはライブで行う必要があると思います。オンデマンドで聴講し、それを踏まえてワークショップに参加するという流れがセットになるのではないかと思います。

教室講義の意義が見直される

同じ目的の人と場を共有した学びは、オンラインでは得られないものがあります。例えば、見える範囲が相手の顔やバストショットだけではないことから、全体(ホールネス)でコミュニケーションができるようになると思います。

また、報告・連絡や議論はオンラインでも行いやすいですが、対話(ダイアローグ)はオフラインの方がやりやすいように感じています。関係性を深めたり内省を促したりするようなセミナー、リトリートのように日常から切り離すことを目的とした研修はオフラインに戻っていくと考えます。そして、感染リスクを負ってでも対面で行う必要があるこれらの対面講義やセミナーは、より価値の高いものとなっていくと思われます。

コロナ禍により、ますます先行きがわからない時代になっています。教育研修に限らず、いままで通りにできないことも多くありますが、そこにストレスを感じるのではなく、みなでいい方向に解決する方策を見出していきたいと思っています。

この記事を書いたひと

ライター:小泉武利さん

小泉 武利
(こいずみ たけとし)

中小企業診断士。化学工場で開発や品質保証を中心にキャリアを積み、その後は環境管理や購買、経理、人事など広く間接業務全般の管理を担当。2017年にコンサルタントとして独立し、クールな戦略コンサルを目指していたが、お会いする人に「トトロみたい」「癒される」と言われ続けたことからセルフイメージが崩壊し、現在に至る。経営全般に関するコンサルティングの他、化学物質規制のコンプライアンスやファシリテーション、ISOマネジメントシステムなど、一般には聞きなれない分野のセミナーに多くの登壇実績あり。