想像力を持って道具は使おう
先日、塾でテスト対策をしていると、ある生徒が「先生、印刷してほしい画像がある」というので、気安く「良いよ~ 先生のLINEに飛ばしておいて~~! あとで印刷するね!」と請け負っていた。
さてさて、印刷しようとファイルを見ると量が多い。これは良いとして、画像がすべてピンボケ。かろうじて書いてある文字が読める程度。
家で写メをしてきた画像と言うから、撮り直しをお願いすると。これが学校から送られてきた現物の画像で最初からピンボケだった……と。
しかも、今回生徒が印刷してほしい画像は学校配布のテスト対策プリントだという。そんなプリントも、ないよりマシだからお願い! 先生印刷して!! とのことだった。
もちろん印刷はしたが、今のご時世どうにかならなかったのか? と疑問に思った。
このテスト対策プリントと呼ばれるものは、各クラスの学習班の生徒が担当科目を振り分けられ、作るという。生徒が作った対策プリントは担当の先生からチェックを受け、その学年の生徒全員に配られる。当然、テスト範囲表にも「対策プリントも見ておくように!」とお達しがある。
それなのに、肝心のアップロード資料がピンボケで使い物にならない。
なんてこったい。
こんなプリントで良いのかい?
アップするとき、先生何も思わなかったの?
疑問がいっぱいだった。
私が住む地域の小中学校では、すでに児童・生徒に1人1台タブレットパソコンが配布されている。
それを使って予想問題をワードやエクセルで作れなかったのか……。
それが難しいにしても先生がPDFか何かにしてアップロードできなかったものか……。
これからの教育にはICTは不可欠だ! ということならば、こういった機会を無駄にせず、ワードでの作り方やエクセルの使い方、パワーポイントの使い方を教えれば良いのにと思う。
表を作ったり、画像を入れたり、文字を入れたりと、時間はかかれども、パソコンの基礎知識を学ぶには良い題材になると思う。そこまでするには、先生も時間もないとは思うには思うが。せっかく、「機械」も「機会」もあるのにもったいない。
そして、今回の一番の問題はピンボケと分かっていて、そのままアップしているということだと思う。その資料を見た人を思いやることができていないままアップされ、そのままにされていることが一番問題だと思う。
今回の資料はテスト対策プリントという位置付けもあって、どの生徒にとっても有益で必要な資料であることは分かっていたはず。この資料がピンボケだったら、使いづらいことも容易に想像がつくはずだ。ピンボケだと分かった時点でアップロードし直すことはできたと思うのだが。
以前、地域の人権学習の講演会に参加した際に、講師の先生が、「今の社会においては個々のイメージ力の欠如が大きな問題だ」と言っていたことを思い出した。まさにその通り。
受け取る相手のことを想像し、その先で起きることを想像したのであれば、改善策を検討したのではないだろうか。
今回の場合、でき上がった資料がピンボケ写真でアップされず、PDFか何か違った形でアップされていたら、みんなの役に立ち、多くの生徒に喜ばれたであろう(本当にそのプリントからテストが出るので)。
学校が社会に出るまでの練習機関というのであれば、そういった個々から全体への思いやりを学ぶ機関でもあると思う。「ピンボケのままじゃ、ほかの人が困るよね」と言える子どもを育ててほしい。そして、その声に、「そうだね、よく気が付いたね。一緒にやり直そう」と寄り添える大人がいてほしい。少なくとも、私はそうありたい。
ぜひとも、子ども達にはこの世にあふれている便利道具を上手に使って、ICTのなかでも人の温かさを届けることができる人になってほしいと思う。
想像力を持って道具を使おう!
この記事を書いたひと
松本 正美
(まつもと まさみ)
「学ぶ力は、夢を叶える力!」松島修楽館代表。中学3年生の時に「将来は塾の先生になる!」と決意し、大学1年生から大手個別指導塾で教務に就く。卒業後、そのまま室長として10年間勤務。その後、新興のインターネット予備校で生徒サポートの仕事に携わった後、2013年に松島修楽館を開業。単なるテストのための勉強だけではなく、「どんな夢でも、正しい努力によって叶えることができる」ということを子どもたちに伝えるため、根本的な「学ぶ力」を育むことを重視した指導を行っている。2人の高校生の母。趣味はサックス、タップダンス。