【親になるということ】 子どもにパソコンを買うときは

2022年7月29日

4月から全国の小中学校ではひとり1台のタブレットが渡され、授業で使われるようになりました。地域によっては、すでに家に持ち帰って学習をしているところもあるかもしれません。

こうなってくると、ご家庭でも、「子ども用のパソコンを買った方が良いかな?」と考えるところも出てくるかもしれませんが、そのときどんなパソコンを選ぶでしょうか。

いくつか考えてみました(商品の宣伝ではありません)。子どもにどんなパソコンを渡すかを考えることは、そのパソコンで何をさせたいかを親がどう考えるかということです。

子どもに買うパソコンとして考えられるもの

  1. 1万円前後の子ども用タブレット
  2. 学校で使っているものと同様のタブレットパソコン
  3. 家庭用に売られているパソコン
  4. ハイスペックなパソコン
  5. その他

1を選んだ方は、子どもが使っても安全なもの、危険なアプリが入らないように設計されているものという認識の方が多いのではないでしょうか。2は、学校と同じ環境のものを選択することで、子どもが混乱しないように、また親としても学校と同じものであることで安心したいという気持ちがあると思います。

3の人は学校とは関係なく、せっかく買うならばある程度いろいろなことができるようなレベルのパソコンが良いと考える人、4の人は、親に専門的な知識があってやらせたいことがはっきりと決まっているか、ゲームをストレスなくやるためにゲーミングパソコンを買おうという人かなと想像します。もしくは、どうせ買うなら良いものをという発想。

では、5はどうでしょうか。

実は私の二人の子どもは二人とも5の選択肢でした。つまりそれは、自分で組み立てる、というものです。上の子のときは予算を決めて秋葉原に行き、自分でお店の人と交渉してパーツを買い(パーツごとに予算オーバーしましたが……)、自分で組み立ててOSインストールまでしました。

下の子は、あまりパソコンに興味がない子だったので、パソコンは普通のデスクトップを買い、セットアップだけ自分でやらせて、そのほかにRaspberry Piを準備して組み立てを行いました。

OSはKanoOSを選択。モニターは家に余っていた15インチのモニターです。SDカードを入れて、機材をつなぐだけですが、ケーブルむき出しのパソコン? が動くということはパソコンが苦手と言っていた彼女でも、十分楽しめたようでした。

私が子どもにパソコンを渡して最初にさせたかったことは、「パソコンのしくみを知る」ということです。仕組みを知ったうえで組み立てを行い、OSをインストールする。

コンピューターがハードウエアとソフトウエアで構成されていること、入出力装置などを説明をしながら一緒に作業をすると、それ以降の扱いが違ってくるのです。

パソコンは動画を見るだけの箱ではないのだということを実感してもらってから、何ができるか、何をやりたいかを話し合いました。結局彼女は画が描きたいということだったので、プラスしてお絵かき用のタブレット(最近安いのがあるのです)を購入し、現在も使っています。

つまり、パソコンを「魔法の箱」にするためには、自分自身のやりたいことが決まっていないといけないんだよということを伝えたかったから、組み立てパソコンを選んだということになります。

これは彼らが中学生になったときの話ですから、もっと小さいときに買う必要があると考えた場合は、また違う選択肢になったと思います(おそらく1の子ども用)。

自分で何をやっているのかよく分からないうちは、あまり多機能なものに触れさせないようにと私は考えます。なんでもできるかもしれないけれど、使えるからわかっているということにはならないからです。

日本の子どもたちのパソコン所持率は全体の約3割と、世界では最低レベルの水準です。だから子どもにパソコンを、と考えるのは間違っていません。しかし、その与えたパソコンを使ってゲームやSNSばかり行うようでは、これもまた意味がありません。

パソコンを使ってクリエイティブ(古い表現?)な作業を子どもたちが行うという未来を想像するならば、ただ与えるだけでなく、仕掛けが必要だと思います。

もちろん年齢やその子どもの発達のレベルに合わせる必要がありますが、周りが買い与えているから、ウチも買い与えれば自然と使いこなすようになるだろう、という発想でパソコンを与える前に、ちょっと立ち止まってみてください。

あなたは子どもにパソコンでまず何をさせたいですか?(本当は同じことを学校教育のなかのタブレット使用にも言いたいのですが……)

この記事を書いたひと

ライター:吉田理子様

吉田 理子
(よしだ りこ)

1971年生まれ。Windows95発売当時に社会人となり、以降パソコン教室講師やITサポート等の仕事に従事。2005年に企業・学校向けのIT、情報教育を目的とした企業組合i-casket設立。2018年には一般社団法人s-netサポーターズを設立し、主に小中学校にて子供・保護者・教員向けの情報リテラシー、プログラミング的思考に関する講座を行う。そのほか地域ボランティアや主権者教育の活動をボランティアで。趣味は料理と読書。