【親になるということ】子育てするときに想定すべき「一番大事なこと」とは

2021年3月23日

毎年秋になると、次の春から小学校に入学する子どもたちの就学健康診断があります。子どもたちは身体測定をしたり、知能検査を受けたりしますが、その間保護者は主に体育館などで終了を待ちます。その1時間、2時間の間に、入学までに準備をしておくことなどの説明があるのですが、ほかにも「親の学習」などの講演を聴くことがあります。

私はそのような講演会の講師をしているため、年に何回か小学校で保護者向けにお話をします。私に依頼されるテーマの多くは「子どもたちとネットの付き合い方」です。ネットの危険性は多岐にわたりますが、この就学時検診時の講演では、主に「親としての関わり方」についてお話をすることにしています。

ここ数年は、保護者もそのほとんどがスマホユーザーです。また、コロナ禍でワークショップやグループ討論などを講座内でできないため、昨年から取り入れたのがGoogleフォームを使った、「こんなときどうする?」アンケートでした。これは、自分のお子さんが少し成長したときのことを想定して答えてもらいます。

毎回、およそ8割の保護者の方がアンケートに答えてくださいます(強制はしていません)。匿名なので回答もそれほど拒まれず、なおかつグラフを表示することで全体の傾向が見えるため、その学校・参加者の様子に合ったお話を展開していくことができます。いくつか問いを作るのですが、今回印象に残ったのは次の2つでした。

①小学校4年生。そろそろお友達がスマートフォンを持つようになり、LINEのグループができているようです。お子さんがあなたに「スマホを買ってくれないと仲間外れにされていじめられちゃう💦」とお願いをしてきました。あなたならどう答えますか?

選択肢:

(ア)いじめられては困るので、すぐに買ってあげる
(イ)お友達のお母さんに相談して、みんなに合わせる
(ウ)いじめられたとしても絶対に買わない
(エ)今は想像がつかない

②進学と同時にスマートフォンを持たせたら、学校と塾の時間以外はずっと触っています。食事中も手放さないので取り上げようとすると暴れて部屋から出てこなくなってしまいました。あなたならどう対応しますか?

選択肢:

(ア)暴力は怖いので心配だが何もできない
(イ)たとえ反抗されても、絶対にとりあげる
(ウ)まずは子どもと話し合う環境をつくる
(エ)今は想像がつかない

みなさんはどの回答が一番多かったと思いますか?答えは、①が(イ)、②が(ウ)でした。

①の答えは55.8%の人が(イ)、つまり「お友達のお母さんに相談して、みんなに合わせる」を選びました。私は困ったなと思いました。お友達のお母さんに相談するのは良いのです。同じ年代の子どもを持つ親が何を考えているのか知ることはとても大事です。でも、次が問題です。「合わせる」って、どうして??

選択肢は私が作っていますから、「相談するっていうところだけ当たっているけれど、ほかに選べなかったからこれにしたんだ」という方もいらっしゃるでしょう。でも、会場で私が「どうして?」と聞くと、「あっ」という顔をされる方が多くいらっしゃいました。

「お友達と同じ○○」はキラーワードです。同じ習い事、同じキャラクター、同じゲーム機・・・お子さんがお友達となじむように、仲間外れにされないように、みなさん周囲に「合わせる」という行為を取りがちです。それで良いこともたくさんあります。でも、「スマホを持たせる」ことは、他人にゆだねることでしょうか。

不安かもしれませんが、自分の子どもの「生き方」として重要な部分は、やはり自分たちで考え、決定していかなければと思います。「なぜ持たないのか」を子ども自身が周りに説明したうえで、友達と仲良くできるコミュニケーション力を子どもが身につけるために、親ができることは何かを考えてみるとよいですね。

次に、②の答えで一番多いのは、(ウ)の「まずは子どもと話し合う環境をつくる」で86.8%でした。こんなにたくさんの人が、まずは冷静に子どもと話し合おうと思うのです。これができたら理想です。ですが、少し考えてみてください。答えているのは、これから小学生の親になる人たちです。この人たちが、「自分の子どもが中学生になったとき」を想像しているのです。スマートフォンを持ったまま部屋に閉じこもる子どもに対して、本当にそのとき「話し合う」環境を作ることができるでしょうか。

小学校1年生の子どもなら、「ちょっとママの前に座りなさい」と言ってお話をすることはできます。でも、閉じこもってスマホを手放さない中学生が、素直に言うことを聞くとはちょっと想像がつきません。「子どもが中学生になったときに話し合いができる親子関係」を実現するためには、どうしたらよいか。言い換えれば、まだそれが実現できている状態のときから、「子どもと話し合う」とはどういうことなのかについて私たち親が考え続けることが大切なのです。

子育てをするとき、私が一番大事だと考えるのは、「将来自分の子どもがどんな人間になってほしいか」を想定することです。それは、学歴や職業ではなく「ひとりの人間としてどう生きてほしいか」ということです。その想定を実現するために「今」どうしたらよいのかを考えて「何」を与えるかを決めること、目の前の子どもを見ながらも、その子の2、3年先の姿を想像し、軌道修正や足りない部分を補うためのサポートについて、親がどう関わるかを子どもと話し合いながら取り組んでいくことだと思います。

この記事を書いたひと

吉田 理子
(よしだ りこ)

1971年生まれ。Windows95発売当時に社会人となり、以降パソコン教室講師やITサポート等の仕事に従事。2005年に企業・学校向けのIT、情報教育を目的とした企業組合i-casket設立。2018年には一般社団法人s-netサポーターズを設立し、主に小中学校にて子ども・保護者・教員向けの情報リテラシー、プログラミング的思考に関する講座を行う。そのほか地域ボランティアや主権者教育の活動をボランティアで。趣味は料理と読書。