海外の教育事情にも目を向けよう
最近YouTubeにハマっている。きっかけは隙間時間に中国語を聞き流そうと思ったからだが、そこで若い中国人女性(もちろん日本語での発信!)のユーチューバーに出会った。豊富な話題がおもしろく、ついつい引き込まれて見ていると中国と韓国の学歴社会の話になった。
ゲストの韓国人女性が言うには、超学歴社会の韓国ではトップ20の大学に入らないと、日常生活でさえも人から相手にされないのだとか。確かに毎年秋になると、試験に遅刻しそうな受験生を送り届けるパトカーの映像とともに、韓国の大学受験の熾烈さを伝えるニュースを目にする。
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私は大学4年生のときに、自治体が募集していた韓国の大学生との交流プログラムに参加したことがある。日韓の教員志望の大学生が、1週間程度お互いの国を行き来して交流をするというものだ。
そこで訪問した韓国で、いまでも鮮明に覚えている光景がある。大学の学生寮に泊まったときのこと。朝6時くらいだっただろうか。日本人学生と学内を散歩していると、すでに図書館では多くの学生が勉強していた。日本の大学では見たことのない光景だったので、私たちはみな目を見張った。
また、ディスカッションで「どうして先生になりたいのか」という問いに対し、日本の学生は「子どもが好きだから」とか「自分が出会った先生に憧れて」などと答えていたが、韓国の学生たちはきっぱりと「国のため」と言い放った。確かに教育は国の根幹をなすものだが、日本でそんな学生は見たこともなかったので、私は正直「この人たちには勝てない……」と思ったものだ。
これはいまから20年以上前の話だが、その間に韓国はどんどん経済力をつけ、韓流やK-POPが世界を席巻し始めたのだから、当時の私の感慨はあながち間違っていなかったと思う。
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先ほどのYouTubeに話を戻そう。彼女たちの話を端的にまとめると、
- 中国も韓国も優秀な大学に入れば人生の成功者。またほとんどの人が大学に進学するため、それ以外の選択肢はあまり社会的に評価されない。
- 韓国では幼稚園から英語学習を始め、中学生になったころには文法は完全に習得。小学生で10以上の塾に通うのは珍しくない。
- 中国では義務教育の時間が長いため塾に通う文化はあまりないが、小学生でも22時くらいまで、高校生ともなれば毎日日付が変わるまで勉強している。
さらには、企業の採用も学歴重視で、まず出身校で足切りが行われるという。YouTubeの中韓の女性は、お互いの国の共通点を見出しては盛り上がっていたが、いま日本で子どもを育てている私は背筋が凍る思いだった。
日本では「ゆとり教育」の反省から、以前に比べると学習内容・量ともに充実させる方向へと舵が切られたが、それでも中韓の子どもたちに比べたら、圧倒的に勉強量が足りないし、競争する機会も少ないように思われる。企業の採用も学歴偏重から人物重視になって久しい。
成長期にある子どもたちが睡眠時間を削って勉強することや、近所の子どもたちと野外で遊ぶこともない環境がいいとは思わないが、このままでは日本の子どもたちが、アジアで、世界で、存在感を出していくことは難しいのではないか。現にいまでも日本の、世界における経済力と存在感はかなり低下しているのに。
何より危機的なのは、一番身近に子どもと接する親や学校の先生のほとんどが、海外の教育事情を知らないことだ。以前は海外の情報に触れることは難しく、テレビや新聞で流れてくる情報も限定的だった。しかし、いまはインターネットが普及し、誰でも簡単に海外の情報にアクセスできるようになった。だからこそ、親や学校の先生は積極的にそういった生の情報に触れ、子どもたちに“世界の中の日本”という視点で話をしていかないといけないと痛感した。
■参考:YouTube「ヤンチャンCH」
この記事を書いたひと
木下 真紀子
(きのした まきこ)
コンセプトライター。14年間公立高校の国語教諭を務め、長男出産後退職。フリーランスとなる。教員時代のモットーは、生徒に「大人になるって楽しいことだ」と背中で語ること。それは子育てをしている今も変わらない。すべての子どもが大人になることに夢を持てる社会にしたいという思いが根底にある。また、無類の台湾好き。2004年に初めて訪れた台湾で人に惚れ込み、2013年に子連れ語学留学を果たす。2029年には台湾に単身移住予定。