【授業のためのICT入門】 タブレットを活用した情報リテラシー講座

2022年7月29日

先日、小学校4年生と6年生に、タブレットを使った授業を行う機会がありました。そのときの様子が学校ブログに掲載されたので、ご紹介します。

まず4年生。(URLは学校が掲載した記事です)
https://schit.net/kasukabe/esminamisakurai/blogs/blog_entries/view/12/6fc381ee2ce1a6c777a8178008db4370?frame_id=7

4年生の先生方からのオーダーは、一般的な情報モラル。ネット上に発信する情報は選ばなければいけないけれど、何を載せて良くて、何がダメなのか、そのあたりの話をしてほしいということでした。

こういう場合、グループディスカッションなどを取り入れると良いのですが、コロナではそういうことができません。考えたのが、ブログの記事から推理をする授業です。

今回は、「教頭先生が大切にしているだるま筆が盗まれた」という設定にしました。そして、犯人がだるま筆を見つけて隠すところまでの様子をブログ(のように見せかけるため、ネット上にPDFファイルをアップしておく)にそれとなくにおわせて書くのです。

PDFファイルへのアクセスは、用意した二次元バーコードをタブレットでスキャンして読み取ることで行います。

画像

イラストは、ブログの一部です。
4年生向けですから、だいぶ優しいですが、例えば、「クレヨンしんちゃんで有名な場所」という書き方で、どこの市のことだからわかります。

また、学校の近所にあるお店の名前を出したり、校歌の一部を載せたりすると、どこの学校のことを言っているかわかる……といった具合です。

『直接書かなくても、間接的な表現を組み合わせることで特定ができてしまうよ』という例になります。

隠した場所なども、同様にあいまいな表現で書いています。子ども達は文章を読み、どこに隠してあるのかを推理していきますが、発表時には必ず「どこにあると思うか」ということと、「そう思った根拠」を発表します。根拠が弱いと、講師から突っ込みが入ります。

例えば、「動く棚と書いてあるから、〇〇だと思う」という意見に対しては、「でも、▲▲だって、動かせる棚だよ?」といった具合です。根拠を複数見つけていくことで、場所を絞っていくのです。また、自分ひとりで推理するだけでなく、周囲のお友達や先生と意見交換をしても良い、としました。子ども達は一生懸命考え、無事に筆を見つけることができました。

6年生は、大掛かりなことはせずに普通の座学です。
https://schit.net/kasukabe/esminamisakurai/blogs/blog_entries/view/12/a5a24293f39c9d926ee94f8246a6e366?frame_id=7

ここでは、Googleフォームを利用したアンケートを行いました。こちらも二次元バーコードで読み取ります。

いくつかの言葉を提示して、どの言葉が言われて一番嫌か、選択肢の中でどうしても嫌な言葉はあるかという問いです。

これはもともとLINE株式会社の出張講座などで使われていて、人によって言葉の感じ方が違うということを知るという内容です(LINEと言葉は変えています)。

私の場合は最後の「どうしても言われたくない言葉」の選択肢の中に、「特にない」という言葉を入れます。これを入れると、いままでアレが嫌だ、コレを言われたくないと言っていた子どもたちが一挙に「特になし」を選択するようになるのです。

つまり、どれも大して嫌ではないけれど、しいて言うならこれが嫌かなという程度だったから、特にない(選択肢の中にはない)があるならば、それを選ぶということなのです。

しかし、特にないではなく、きちんと「嫌だ」と思う言葉を選ぶ人もいます。ここで私はこの「特にない」がネット上でトラブルを起こす原因のひとつであることを説明し、何故そうなのか……について考えてもらいました。

子ども達からは、自分が特に気にしていない言葉でも、嫌だと思う人はいるということ、ゲームや日常的なチャットなどでも言葉の使い方に注意しないといけないといった意見がだされました。

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これらふたつの授業で、タブレットを使うことはそれほど重要ではありません。しかし、何気なく「コードを読み取って」と言っただけで、タブレットを起動し、カメラアプリを立ち上げてコードをスキャンするという行為ができるようになる、ということが重要なのです。

わざわざ「カメラを使う」ことを目的にしなくても、こうしたさりげない形で授業の中にICTの要素を組み入れていくことが子ども達のリテラシーの向上につながるのではないでしょうか。

この記事を書いたひと

ライター:吉田理子様

吉田 理子
(よしだ りこ)

1971年生まれ。Windows95発売当時に社会人となり、以降パソコン教室講師やITサポート等の仕事に従事。2005年に企業・学校向けのIT、情報教育を目的とした企業組合i-casket設立。2018年には一般社団法人s-netサポーターズを設立し、主に小中学校にて子供・保護者・教員向けの情報リテラシー、プログラミング的思考に関する講座を行う。そのほか地域ボランティアや主権者教育の活動をボランティアで。趣味は料理と読書。