【不登校という選択】不登校児童生徒に対する政府の対応、学校内外の機関への相談状況は?
文部科学省の調査によると、令和2年度の不登校児童生徒数は196,127人。
前年度より約1万4000人増加し、過去最多を記録しています。
前年度よりも不登校児童生徒が増えた原因については、コロナ禍により学級閉鎖や休校措置が取られるなど、生活のリズムが乱れやすい状況が続いていたこと、また、運動会や文化祭の中止など学校生活において制限があるなかで交友関係が築きにくかったなど、さまざまなことが考えられます。
政府の対応
年々増加する不登校児童生徒に対し、文部科学省は2021年9月に「不登校に関する調査研究協力者会議」を設置し、今後、重点的に実施すべき施策の方向性を検討。その結果を報告書に取りまとめ、教育委員会や小中高校などへ通知しています。
この報告書では、不登校児童生徒一人ひとりの状況を適切に把握し、多様な支援を実施することが必要と考え、今後の方向性として次の4つを挙げています。
- 誰一人取り残されない学校づくり
- 不登校傾向のある児童生徒に関する支援ニーズの早期把握
- 不登校児童生徒の多様な教育機会の確保
- 不登校児童生徒の社会的自立を目指した中長期的支援
そして、この方向性に沿った支援を行うために、次のようなことを求めています。
- SOSを出せていない児童生徒を早期に把握するとともに、大人へ相談することへの敷居の低減
- ICT機器を活用して組織的・客観的な児童生徒の状況把握
- 夜間中学との連携等を通じ特色ある不登校特例校の設置推進、指導体制の充実
- フリースクール等民間団体との連携を促進
- スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーによるオンラインを活用するなど教育相談の充実
- 保護者への支援も視野に入れた家庭教育の充実
- 児童生徒が安心して周囲の大人や友人にSOSを出せるよう養護教諭やスクールカウンセラーの活用
さらに、政府は学校復帰のみにとらわれず、不登校児童生徒の将来を見据えて多様な価値観を認め、児童生徒の目標の幅を広げるような支援の実施を求めています。
つまり、状況によっては「学校に行かない」という判断を行った子どもに対しても教育の機会を充実させる必要があるということです。
学校内外への相談・指導状況
文部科学省が令和2年度に行った調査によると、不登校児童生徒のうち学校内外の機関に相談や指導を受けた児童生徒は全体の65.7%にあたる約12万9000人に留まっています。
つまり、残りの約35%の子どもや保護者は、どこにもSOSを出せていないということです。
不登校児童生徒の「出席扱い」について
令和2年度はICT機器を用いて学習した児童生徒を出席扱いにした人数が増加しています。これは、政府主導で行われたGIGAスクール構想において、全国の小中学生に対し端末を1人1台配布されたためと考えられます。
さいごに
不登校児童生徒への対応は、緊急に解決しなければいけない課題ではありますが、 子ども一人ひとり「不登校」になった原因や状況が違います。そのため、支援する側も、児童生徒や保護者一人ひとりの意向を確認する必要があります。
不登校という問題は、学校だけで解決するのではなく、学校を含めた地域社会全体の協力が必要になってくるのかもしれません。
また、政府は「学校に復帰する」ことを必ずしも目指していません。
子どもたちが、結果的に「不登校」を選択したとしても、教育を受ける機会を与えられる環境を整えようとしています。
koedoでは、今後、不登校児童生徒への支援、学校以外の受け入れ先などについても調べていきたいと考えています。
koedo事業部
【参考】
- 不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)/文部科学省
- R2児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要 /文部科学省
- 不登校に関する調査研究協力者会議報告書/不登校に関する調査研究協力者会議