STEAM教育について考える ―株式会社ジオグリフ代表取締役にインタビュー―

2022年6月3日

STEAM教育とは、さまざまな体験をとおして課題を見つけ、問題解決能力・創造力、そして実現するための手段を身に付けさせようという教育理念です。

STEAMは「スティーム」と読み、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術、文化)、Mathematics(数学)の頭文字から作った造語です。

現在は、教育現場で試行錯誤を繰り返し、子どもたちをどのように導いていくのかを模索している段階です。

そこで、「教育システムの開発・サービス」事業を行っている株式会社ジオグリフに、STEAM教育をどのように捉えているのかを聞いてみました。

「過去」から学ぶ、「現在」を知るから「未来」から学ぶへ

学校の授業で「どのようなことを学んでいるのか」ということを考えたとき、「過去の事実や過去に発見・発表したもの」や「現在進行形で起きていること」について学んでいることに思い至ります。

たとえば、過去に起きた事実を学ぶ「日本史」や「世界史」
過去に発見した法則について学ぶ「理科」や「算数・数学」。
過去に発表した作品に触れる「国語」や「英語」。

それでは、STEAM教育は、これまでの学びとどう違うのだろう……。

そう考えたとき、未来の中に「応え」を求めるトレーニングをすることがSTEAM教育なのではないかと考えました。

現在の学校教育の基本構造が形作られたのが明治維新以降だとするならば、その時代の社会に適応する資質を養っていくための教育プログラムが考えられたのだと思われます。

一方、現在の日本は、ほかの国には先例のない課題を多く抱えており、それをどのように解決し、乗り越えていくか…という問題に直面しています。

しかも、この先行きが不透明で、将来の予測が困難だと言われる社会のなかで、いま出した「答え」が必ずしも未来へ続くとは限りません。

「課題」と「答え」が一定しない時代において社会に適応する人を育てていくためには、自分たちで「課題」を定義し、その課題への取り組み方を覚えていく必要があると考えられます。

つまり、「答え」を知っていることよりも、「応え」にたどり着く方法を身に付けていくことが大切になっているということです。

その方法の1つが「STEAM」という切り口であり、STEAMを構成するそれぞれの視点・知識・スキルなのだと考えます。

STEAM教育の原点・前提とは?

私は、子どものときに体験したこと、その体験をとおして「楽しかった」「面白くなかった」という「快」「不快」という感覚の言語化や、不快を快へと変えていく経験、「楽しい」という感覚や「憧れ」が人の成長を促す因子になっていると考えています。

では、子どものときに体験したことを、STEAM教育でどのように取り上げればいいのでしょうか。

子どもたちは日々の生活の中で、大小さまざまの「なぜ?」「どうして?」を感じています。

そうした「なぜ?」「どうして?」「どうなっている?」と疑問に思ったこと。
いまあるものを「こうしたい」「こうできたらいいのに」と考え、新たになにかを創造すること。
もしくは、「これ、おかしい」と思ったことを、独自に掘り下げて考えてみること。

そうしたことを1つ1つ「Science」「Technology」「Engineering」「Art」「Mathematics」に分解してみるのです。

「分解ってなに?」「どうやって?」と疑問に思った方のために、もう少し詳しく説明します。

まずは「S・T・E・A・M」に、どのような意味があるのかを考え、それぞれの意味を次のような定義してみました。

STEAM教育概念図
STEAM教育 概念図

「Science」は、仮説と検証を繰り返しおよび、その工程で得られた知見のこと。

「Technology」は、経験を通して取得し、確立した各種手法。

「Engineering」は、課題と技術を結びつけること、技術の組み合わせを考えること、科学の知見を技術に落とし込むこと。

「Art」は、「Art」と「デザイン」に分けて考えます。

「Art」は哲学や感性からの指向性 その表現。
「デザイン」は2つ以上の価値を両立させようとすること。

「Mathematics」は、「言語学」と「論理学」に分けて考えます。

「言語学」は、ことばの意味や概念を決めていくことや、疑問や課題を分かりやすい言葉で意味や範囲を決めていくこと。 そして「論理学」は、ことばの関係性や概念の位置関係を構造化し、順序やそこでの手続きを決めていくこと。

たとえば、小学校で「野菜を育てる」という授業があります。
自分で苗を購入し育て方を調べ、栽培するというプロジェクト・ベースドの授業スタイルのようです。

この授業でいうならば、まず「野菜」とはなんでしょうか?
「野菜」の意味を明確にしなければ、選ぶ苗の選択の範囲があやふやになります。

そこで、まずは野菜の意味を明確にし、選ぶ苗の範囲を定めていく。
このとき場合によっては、野菜から分類がはじまり、種類ごとに構造化していくこともあるかもしれません。

これが「Mathematics」にあたります。

苗を選んだあとは、育てていくための方法を調べることになるでしょう。

そこで上手に野菜を育てていくための「仮定」が生まれ、実際の栽培…「検証」がはじまります。

仮定と検証は土の量や日当たり、天気や温度、水やりの量や回数等のデータが生みだします。これを分類し、「上手」に育てることができたかどうかの「結果」に結びつきます。

この過程が「Science」です。

子どもの年齢によっては、野菜を栽培するための技術も理解できるかもしれません。
窒素・リン酸・カリウム、ほかの栄養素の認識から施肥技術の理解まで。
あるいは病気に強い苗を仕立てるための「接ぎ木」の技術も認識できるでしょう。

このあたりが「Technology」「Engineering」にあたるでしょうか…。

「宝石とSTEAM教育」について

いま、国立科学博物館で『特別展「宝石 地球がうみだすキセキ」』が開催されています。この特別展のご協力のもと、STEAM教育と特別展「宝石」という観点で調べたことをkoedoで掲載していくことが決まりました。

取り上げるテーマは次の5つです。

STEAM教育は、「自分で学び、自分で理解していく子ども」を育てるねらいがあります。

この企画をとおして、「自分で学ぶ方法」に興味を持つ子ども、保護者が少しでも増えることを願っています。

特別展「宝石 地球がうみだすキセキのご案内

展覧会名:特別展「宝石 地球がうみだすキセキ」

会場:国立科学博物館地球館地下1階 特別展示室

会期:2022年2月19日(土)~6月19日(日)  ※日時指定予約制

URL:https://hoseki-ten.jp/

■お話を聞いたひと
株式会社ジオグリフ 代表取締役 田畑豊史

2015年8月25日設立。コロナ禍において先生と生徒の連絡がスムーズに行われていないことに気づき、教室の機能を時間割に埋め込んだ【アプリケーションターミナルkomachi】を開発。そのほか、現場に携わる方の声(koe)とアクション(do)を記録する【koedo】を運営、学校では教わらないことを学ぶ【SENRIプロジェクト】の運営など。

▶ https://geoglyph.net/

koedo事業部