開かれた学校教育 ~鎌倉市教育委員会事例~

小学校では令和2年度から、中学校では令和3年度から「新学習指導要領」に沿って学習指導が行われています。この「新学習指導要領」では、これからの教育課程の理念として次のようなことが書かれています。

「よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を学校と社会とが共有し、それぞれの学校において、必要な教育内容をどのように学び、どのような資質・能力を身に付けられるようにするのかを明確にしながら、社会との連携・協働によりその実現を図っていく。」

新学習指導要領について/文部科学省

では、「開かれた教育課程」とはどういうことなのでしょうか。

これまでは、教育課程や教育活動を学校内だけで進めてきました。つまり「閉じられた教育」が行われていたのです。

一方、「開かれた教育課程」とは、学校内に留まらず、地域や社会、さらには世界にまで目を向けて地域や社会との接点を持ちながら、子どもたちが学んでいけるような環境を整えることを指しています。

「開かれた教育課程」を行うためのポイントは3つ。

「開かれた教育課程」を行うためのポイント

  • 社会や世界の状況を幅広く視野に入れ、よりよい社会を創るという目標を学校と社会が共有していくこと
  • 子どもたちの資質や能力を、学校教育で育成すること
  • 地域と連携・協働を図りながら「開かれた教育」を実現させること

しかし、20年先、30年先を見据えた「開かれた教育」を教職員だけで行うことには限界があります。そのため、企業やNPO法人、大学などから講師を招いて授業を行ったり、放課後や土日等に「社会に開かれた教育」を行ったりする学校も増えてきています。

開かれた教育の実例―鎌倉市の場合

文部科学省も推奨する「社会に開かれた教育課程を実装していく」ためには、いくつかの課題があります。

そのひとつがサポート体制です。

たとえば、なにか探究したいテーマがあったとき、子どもたち一人ひとりの課題に対して、教師が1人で伴走するのは現実的に考えて無理があります。

そこで、鎌倉市ではNPO法人や大学、地域で活躍している方など児童生徒の関心に応じて指導者を見つけ、PBL(Project Based Learning)をサポートしていくという体制を整えました。そのための費用として、「鎌倉スクールコラボファンド」と称し、令和2年から「ガバメントクラウドファンディング」を利用しています。

鎌倉市によると「鎌倉スクールコラボファンド」とは、次のような目的で始めたプロジェクトです。

リアルな社会課題に基づくプロジェクト型学習やプログラミング学習、ICTを活用した個別最適な学び等を、学校が魅力的な人材・組織とのコラボレーションを通じて実現することで、子どもたちや教師が新しい時代の到来にドキドキし、自分が将来できそうな事にワクワクする教育を創り上げていくための資金です

「鎌倉スクールコラボファンド」(ガバメントクラウドファンディング)について/鎌倉市教育委員会

つまり、「鎌倉スクールコラボファンド」とは、クラウドファンドを利用して資金を集め、それを企業やNPO法人、大学などから講師を招いて行う授業に充てようという試みです。

この「鎌倉スクールコラボファンド」を利用して、令和4年度に鎌倉市は次のような取り組みを行っています。

令和4年度 鎌倉市の取り組み

  • みんなが暮らしやすい社会を
    • 介助犬、聴導犬のデモンストレーション
    • パラスポーツ体験
  • 未来へつなぐ学校づくり(SDGs)
    • 委員会活動を通じた良い学校づくり
    • 運動家のダンスをゼロからつくる
  • 地球にやさしい未来を(SDGs)
    •  プラスチックごみの新しい価値観や循環方法の専門的な技術等の体験
  • 防災広告を用いた想像力および創造力育成(広告)
    • 防災広告をより周知するための技能を学ぶ
  • 国際理解
    • 日本文化の紹介
    • JICA研修員との英語によるコミュニケーションにより外国の文化や価値観を深める
  • シティズンシップ教育
    • 平和・異文化などのテーマで他者を理解する
    • 自己理解を深めることでウェルビーイングにつなげる

PBLを行う前と後の変化

日本財団が、国や社会に対する意識を調べるために、世界6カ国の17歳から19歳を対象に「18歳意識調査」を行っています。

この調査の中で、「自分の行動で、国や社会を変えられると思うか」という質問に対してインドが78.9%など、日本以外は5割以上が「はい」と回答しています。

ところが、日本で「はい」と回答したのはわずか26.9%と3割にも届いていません。

日本財団 18歳意識調査
18歳意識調査/日本財団

鎌倉市では、PBLを体験した児童生徒に対して「自分たちが動くことで地域や社会が変わっていくか」という質問を行っています。

その結果、授業前に「そう思う」と回答した児童生徒は38%と、やはり4割に届きませんでしたが、授業後には81%の児童生徒が「そう思う」と回答しています。

さいごに

新学習指導要領に記載された「社会に開かれた授業」を行うには、多くの人の協力が必要です。文部科学省でも「学校と地域でつくる学びの未来(URL:https://manabi-mirai.mext.go.jp)」というサイトを立ち上げ、企業・団体と学校、自治体をつないでいます。

koedoでは、子どもの未来がさらに広がっていけるような手段を、これからも発信し続けていきたいと考えています。

(koedo事業部)

【参考】