【フリースクール】現場指導から見えた高校進学における課題

私がフリースクールに指導に行くようになって、1年が経とうとしている。

1年前の冬、中学3年生の受験指導を中心に学習指導をしていた。しかし、同じ部屋に机を並べて勉強しているうちに、どの学年の子どもたちにも勉強を教えることになった。

毎朝必ず「勉強したくない!」「何で?」ーーこのやりとりから始まる。
勉強をしたくない理由や憂鬱になる理由はさまざまあるが、学習指導という観点からの理由は、学習内容がレベルに合っていないことだった。

be動詞も一般動詞も知らないのに「疑問詞を使った疑問文」を勉強していたり、正負の数の計算がしっかりできていないのに、「連立方程式」を勉強していたりと、教材が進むまま無理やり勉強をさせられていた。

まずは、適切な範囲に学習内容を変更し、スモールステップで学習を始めた。
すると、子どもたちの表情がみるみるうちに明るくなっていった。「わかる!」という感覚を初めて知った瞬間だったと思う。

そうこうしていると、欲が出るもので、子どもたちはどんどん自分から勉強を進めるようになっていった。学ぶことの大切さや楽しさを知り、いつしか「大学に行きたい!」と言うようになってきた。

もちろん、大学入試の前には高校入試があり、その前には高校受験をしてもらうことになる。そうなると、フリースクールの子どもたちは圧倒的に不利になる。なぜなら、高校入試には「内申点」というものが必要になるからだ。

ある女の子は5教科の学習はしっかり点数が取れるようになり、通知表でも「3」がつくようになっていても、技能教科はすべて「1」となってしまい落胆していた。技能教科の筆記テストでどんなに点数を取っていても、実技の項目が「0点」なので、通知表には「1」がつく。

私が指導している地域では、内申点に「1」がつくと合格できない高校がいくつかある。
どんなに勉強を頑張っていても、どんなに優秀でも「1」は覆らず、進路の幅が一気に狭くなってしまう。

フリースクールが縁で、先ほど登場した女の子は私の塾に電車に乗って遠くから通ってくれている。

この頑張りがあれば、絶対に高校生活も頑張れると太鼓判を押せるが、1学期の技能教科に「1」が並んでしまっている。そこで彼女は「学校に行きます!」と宣言し、実際に休まず学校に通っている。

彼女がどうして学校に行かなくなったのかは教えてくれなかったが、小学生のころから中学3年生までの長い間、学校には行っていないようだ。そんな彼女は夏休みが終わる最終日、つまり、初登校の前日、かなり緊張していた。

保護者も、フリースクールのスタッフも皆心配していた。でも、彼女は毎日頑張っている。フリースクールを辞め、学校に復学し、高校受験に向けて頑張っている。

今回はたまたま、学校に復学できたケースで良かったが、学力が高くても復学できない子もいると思う。

そう言った場合、塾としての立場で言ってしまうと、学校に行ってもらうしか手立てがないが、出席扱いになると認定されたフリースクールでも同じなのか…と私は残念に思った。

もっと、フリースクールとしてできることはないのか?
学校に掛け合うことはできないのか?
学校側も何かほかの課題やオンラインを駆使して技能を測ることはできないのか?

さまざまな疑問が湧いてくる。

学校に行けない子ども達にとって、高校進学は新しい世界の扉を開く最初のチャンスである。今までの自分を変えるチャンス。今までの人生をやり直すチャンス。

実際に、子ども達も「今まで学校に行ってなかったけど、今度は全日制に行って文化祭とか運動会とか楽しみたい!」と高校進学に希望を持っている。

でも、実際は、復学しなければ受験が厳しいという大きな障壁がある。
学びたい人が学べる仕組み作りをもう一歩進めていかなければならない…と痛感している。

子ども達の未来のために、私たち教育者ができることを模索していきたい。

この記事を書いたひと

松本 正美
まつもと まさみ

「学ぶ力は、夢を叶える力!」松島修楽館代表。中学3年生の時に「将来は塾の先生になる!」と決意し、大学1年生から大手個別指導塾で教務に就く。卒業後、そのまま室長として10年間勤務。その後、新興のインターネット予備校で生徒サポートの仕事に携わった後、2013年に松島修楽館を開業。単なるテストのための勉強だけではなく、「どんな夢でも、正しい努力によって叶えることができる」ということを子どもたちに伝えるため、根本的な「学ぶ力」を育むことを重視した指導を行っている。2人の高校生の母。趣味はサックス、タップダンス。