【フリースクール】外部講師から見たフリースクールの問題点

約1年のフリースクールのお手伝いを通して、塾だけではできないような経験をたくさんしたことは今までのコラムでも書いてきた通りである。その経験の中には良いことだけではなかったものもある。

今回はその経験の中でも今後の問題点や課題について書いていきたいと思う。

私は外部講師としてフリースクールに携わっているので、運営や経営部分にはタッチできない。だが、今後、新しくフリースクールを立ち上げたい人や、フリースクールの運営に興味がある人にとって何かの参考になれば幸いだ。

1つ目は若手を育てる環境が整っていないことだ。

フリースクールにはさまざまな事情や特性を持った子どもたちが通っている。そのため、細やかなケアが必要であったり、時には自分を抑えられない子につきっきりになったりと、人手を要することが多くある。

いつも人手が足りないので、初めて入ったスタッフは十分に研修を受けていないまま現場に入っていることも多くあった。生徒に寄り添ったり、一緒に活動したりする分にはその人のホスピタリティーで乗り越えられるが、教務に関してはベテランと言われているスタッフでも知識が足りず、ずっと不安を抱えたまま学習や受験指導をしていた。

研修が不十分なため、業務に支障がでるようなミスや失敗をしてしまったりする。当然、注意をされたり、指導をされたりするわけだが、「そんなこと教えてもらっていない…」と傷つき、業務へ対する不安から不満になり、辞めてしまう。

フリースクールの業務はいくら教務スキルがあっても、生徒に寄り添う気持ちがなければできない。教務は研修や教材の工夫などでカバーできるが、その人が持っている優しさやホスピタリティーは後付けすることができない。

そういう素質を持った人が、研修が徹底されていないばかりに傷つき、辞めていくのを見るのが一番ツライことだった。辞めるとき、みんな口をそろえて「この仕事は好きなのですが…」と言っていた。

好きな仕事を見つけられない人が多いなか、せっかく好きな仕事を見つけたのに続けられない若者を見るのはツライ。新人研修やベテランスタッフに対する研修の充実を徹底していくべきだろう。

2つ目は、やりがいがあれどもお金にならないことだ。

私がお手伝いに行っているフリースクールは、ひとり親世帯(児童扶養手当受給世帯)や生活保護世帯、住民税非課税世帯には授業料免除の制度がある。

これでどんな家庭の子どもでも教育を受けるチャンスを得ることができる。そう言った事情などもあるのか、そこで働いているスタッフにはあまり収益が還元できていないようだった。

仕事の量や拘束時間を考えてみると、満足とは言えないようだ。先日、何気なくテレビを見ていると、能力がある若者がどんどん海外で働くため日本を出て行っているというニュースが流れていた。

実際に、フリースクールでも能力のあるスタッフから辞めていく。そして、また、人手が足りなくなり…と悪循環。スタッフも自分自身の生活が潤わなければ、人に寄り添うことも、好きな仕事を続けることも難しいだろう。

ここでも聞こえてくるのは「この仕事は好きなのですが…」だ。有能な人材の損失はどんな業種、企業においても大きな痛手と思う。しっかりとした利益を得られる仕組み作りが必要だ。

3つ目は学校との連携が薄いことだ。

フリースクールに通っている子どもは、学校に行っていなくてもテストだけ受けたり、週に何度かは学校に行ったり、まったく行かなかったりするため、学校に行く頻度は生徒によってバラバラだ。たまに学校に行って、学校で言われたことや友達から聞いたことを教えてくれる生徒は良い。

しかし、学校に行っても、周りとコミュニケーションが取れない生徒や、まったく学校に行っていない生徒は学校で何が行われているのかまったく分からない。

そのために、テスト範囲や提出物、行事などの準備ができないことが多くあった。学校側も「フリースクールではどんなことをしているのか」「生徒は元気に通っているのか」と気にはしていると思うが、実際に連絡を密にくれる先生は少ないようだ。

それならば、月に1度でも良いから、担任の先生や校長と話す機会を設けるなど、学校ともっと密な関係を築くべきと思う。

子どもは家庭だけでは育たない。学校だけでも育たない。フリースクールだけでも育たない。あらゆる方向の大人が、その子に対して真摯に向き合い、その子を一緒に支えていくべきと思う。

中学生であれば当然進路のことも話題に上がるだろう。「いろいろな大人があなたを支えているよ!」という姿勢やメッセージを送ることで、一人ひとり個性を持った子どもたちが安心して、自分自身で未来にはばたいて行けると思う。

この記事を書いたひと

松本 正美
(まつもと まさみ)

「学ぶ力は、夢を叶える力!」松島修楽館代表。中学3年生の時に「将来は塾の先生になる!」と決意し、大学1年生から大手個別指導塾で教務に就く。卒業後、そのまま室長として10年間勤務。その後、新興のインターネット予備校で生徒サポートの仕事に携わった後、2013年に松島修楽館を開業。単なるテストのための勉強だけではなく、「どんな夢でも、正しい努力によって叶えることができる」ということを子どもたちに伝えるため、根本的な「学ぶ力」を育むことを重視した指導を行っている。2人の高校生の母。趣味はサックス、タップダンス。