【いじめ×IT】令和4年SNSを起因とする被害児童数1,732人、学校裏サイトとその対策は?

小学生のスマートフォン保有率は年々上昇しており、内閣府によると令和4年度には、10歳以上の小学生の64%が自分専用のスマートフォンを持っていることが分かりました。

青少年の機器専用率(令和4年度)
青少年の機器専用率(学校種別・スマートフォン)/内閣府(最終閲覧:2024.1.17)

「ネットいじめ」の割合

子どもへの携帯・スマートフォンの普及に伴い、いわゆる「ネットいじめ」の割合も増加しています。

文部科学省の調査によると令和4年度いじめ認知件数約68万件のうち23,920件が「パソコンや携帯電話等によるひぼう中傷」となっています。

いじめ認知件数(令和4年度)
令和4年度青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果(概要)を基に作成

小学生の「パソコン等によるひぼう中傷」の割合が少ないのは、小学生のスマートフォン所有率が低いからだと考えられます。一方、中学生は10.2%、高校生は16.5%と学年が上がるにつれて「パソコン等によるひぼう中傷」の割合が増加傾向にあります。

SNSに起因する被害児童数

パソコン等によるひぼう中傷、いわゆる「ネットいじめ」にはSNSなどで悪口を書いたり、無視したり、仲間外れにしたり、ほかの人に見られたくない写真を拡散したりする行為が挙げられます。

警察庁の調査によると、SNSに起因するトラブルの被害児童数は年々増加していましたが、令和元年に2,000件を超えたあと被害児童数は微減し、現在はほぼ横ばい状態が続いています。

【SNSに起因する事犯】罪種別の被害児童数の推
【SNSに起因する事犯】罪種別の被害児童数の推/警察庁(最終閲覧:2024.1.17)

また、同調査によるとSNSに起因するトラブルにおいて、知り合うきっかけとなった最初の投稿の約75%は、被害に遭った児童からのものだということが判明しています。

実際にトラブルに遭ったトラブルとして、次のようなケースが挙げられます。

SNSを起因とした実際にあったトラブル

  • SNS上で知り合った女性(実は男性)と仲良くなり、見た目の相談などをするうちに、顔写真や下着姿の写真を送信した結果、写真を拡散された
  • 無料でダウンロードできるオンラインゲームで知り合った男性からチャット機能を通じて「一緒にゲームをしよう」と誘われ、自宅近くで会ったところ男性の自宅で監禁された
  • 家出をして、SNSで泊めてくれる人を探したところ、泊めてもらう代わりにわいせつな行為をされた

学校裏サイト

学校の非公式サイト、いわゆる「学校裏サイト」もネットいじめの温床になっていると言われています。

学校裏サイトとは、特定の学校やクラスに関する非公式のサイトや匿名の掲示板のことで、一般のネット検索では表示されないように対策が取られていたり、パスワードを設定して部外者が閲覧できないようにされていたりします。

学校裏サイトでは、授業や勉強のことなど学校やクラスに関する「ふつう」の話題がある一方で、特定の個人の悪口やひぼう中傷など悪質な書き込みがされていることもあります。また、「なりすまし」により個人のメールアドレスが流出して援助交際などにつながるケースもあります。

学校裏サイトで問題なのは、ネット上では匿名性が高く相手の顔が見えないため、「いじめる」という行為に対する心理的障壁が低くなりがちなため、エスカレートしやすい傾向があることです。

平成19年に高校生の自殺の引き金となったのが学校裏サイトによる悪質ないじめだったことで「学校裏サイト」が注目されました。

この事件を受け、文部科学省が学校裏サイトについて調査を行っています。

このときの調査によると、平成20年1月から3月現在で確認できた学校裏サイト・スレッド数は38,260件で、このうち87.6%が「2チャンネル(現5チャンネル)」と呼ばれる巨大掲示板にスレッドとして掲載されたものでした。

学校裏サイト
学校非公式サイトの利用実態調査/文部科学省(最終閲覧:2024.1.17)

サイト・スレッドに書き込まれた2000件のうち、「キモイ」「うざい」などのひぼう中傷が50%、わいせつな表現が37%、「死ね」「殺す」など暴力表現が26%でした。

また、平成19年7月にMMD研究所が小学生から大学生の子どもを含む約1万6000人を対象に学校裏サイトに関する実態調査を行っています。

この調査で「学校裏サイトを知っているか」という質問に対し、4割の学生が「知っている」と回答しています。

「知っている」と回答した学生に対して「学校裏サイトを知ったきっかけ」を質問したところ、「友人」が74.2%ともっとも多く、次いで「インターネット」が15.8%でした。

さらに、学校裏サイトの利用経験がある人を対象に「自分を含む誰かが不愉快な思いをする書き込みを見たことがあるか」という質問に対し、84.6%が「ある」と回答しています。

学校裏サイトへの対策

学校裏サイトは、各都道府県や市町村が定期的に巡回し監視を行っていることで、一定の抑止効果が認められています。

ただ、学校裏サイトは時代とともに姿を変えています。

いわゆる「ガラケー」が普及し始めたころには、すでに学校裏サイトの存在が確認されていたと言われていますが、その後、LINEが普及し始めた2000年代半ばには、「LINEいじめ」をきっかけとした中高生の自殺が相次ぎました。Twitter(現「X」)を特定のフォロワーしか見られない状態にする「鍵アカウント」に設定し学校裏サイトとして悪用しているケースもあります。

では、学校裏サイトとは、どのように向き合うべきなのでしょうか。

まず子どもに学校裏サイトのリスクをきちんと伝えることが重要です。

たとえば、軽い気持ちで書き込んだ投稿が刑事事件に発展する可能性があります。
ひぼう中傷は名誉棄損や脅迫罪、侮辱罪に該当。裸の写真を投稿するなどの行為は、児童ポルノ禁止法に該当します。また、いじめ行為そのものもいじめ防止対策推進法に抵触しています。

それとともに、ITリテラシー教育、フィルタリング機能の利用することも大切です。

そして、もし被害に遭った場合には、該当するサイトのプロバイダに削除依頼を出し、学校や警察に相談してください。警察庁には、インターネット専門の相談窓口もあります。

また、インターネット上で人権侵害の被害にあった場合には、法務局へ相談できます。法務局に相談すると、警察のサイバー犯罪相談窓口を案内してもらえたり、プロバイダ等への削除依頼等への具体的なアドバイスをしてもらえたりします。

個人での削除依頼に応じてもらえなかった場合には、法務局においてプロバイダへ削除要請したり、場合によっては裁判所に仮処分の申立てをする方法を教えてもらったりもできます。

さいごに

スマートフォン・携帯の所有率は年々低年齢化していて、令和4年度、10歳以上の小学生の64%が専用のスマートフォンを所有していることが、内閣府の調査でわかりました。

それに伴い、SNS上のトラブルや、特定の学校やクラスに関する学校の非公式サイト、いわゆる「学校裏サイト」における特定の個人の悪口やひぼう中傷など悪質な書き込みが問題になっています。

koedoでは、今後もネットいじめや学校裏サイトについて定点観測を続けていこうと考えています。

【参考】

(koedo事業部)