STEAM教育はなぜ、いま注目されているのか?

2022年7月29日

STEAM教育とは、これまでの知識を詰め込む学習法ではなく、さまざまな体験をとおして課題を見つけ、問題解決能力・創造力、そして実現するための手段を身に付けさせようという教育理念です。

「自分で学び、自分で理解していく子ども」を育てるねらいがあります。

「STEAM」は「スティーム」と読み、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術、文化)、Mathematics(数学)の頭文字から作った造語です。

STEAM教育が注目されているのはなぜ? 目指しているものは?

STEAM教育は、いま、日本だけではなく世界から注目されている教育理論です。

では、なぜSTEAM教育が注目されているのでしょうか。

その背景として、テクノロジーの急速な発展が挙げられます。

テクノロジーの発展により、一般家庭でもAIやIoTが搭載されている家電が珍しくなくなってきています。

このままテクノロジーが発展してくと、近い将来、現在人間が行っている仕事の多くをAIやロボットが担っていくことになるでしょう。

つまり、これからの時代には、テクノロジーを活用するだけではなく、それを作る人材が必要になってくるということです。

そのために求められるのが理数系の技術や知識。

そして自分で問題を見つけて解決する能力、創造力、実践力です。

STEAM教育では、各教科の垣根を越えて横断的に学ぶことにより、広い視野でそれぞれの分野にまたがるような問題を発見、それを解決するための力を養うことを目指しています。

STEAM教育を進めるうえでの課題とは…

STEAM教育を進めていくうえで、日本が抱えている問題のひとつが、子どもたちの理数離れです。

「国際数学・理科教育動向調査(TIMSS2019)」によると、「算数・数学の勉強は楽しい」「理科の勉強は楽しい」と答えた児童生徒の割合は増えてきているものの、国際平均と比べると、小学生と中学生の差が大きいことが分かります。

理数系の仕事に就きたい生徒の割合(グラフ)

また、「数学や理科を使うことが含まれる職業に就きたい」と考えている児童生徒の割合は、国際平均と比べて低いことも分かります。

「算数・理科」を楽しいと答えた児童生徒の割合(グラフ)

そして、もう1つの問題が教員不足です。

STEAM教育のねらいは、自分で課題を見つけ、自分で考え、それを解決する力を育むことです。

子どもたちが興味をもったことを解決するために、ときには教師が上手に誘導することも必要です。

しかし、これまで1つの教科を深く掘り下げる方法で教えてきたため、自分の担当教科以外を教えることができる教師があまり存在していません。

つまり、数学教師は数学的なことを教えることはできても、芸術的なことを教えることができないのです。

学校で子どもたちの探求心を刺激するような学びをするためには、授業体制を根本的に見直す必要があるのかもしれません。

文部科学省が考えるSTEAM教育とは

2021年、政府は「Society5.0」を「持続可能性と強靭性を備え、国民の安全と安心を確保するとともに、一人ひとりが多様な幸せを実現できる社会」と定義しました。

Society5.0とは、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く新しい社会のあり方です。

文部科学省は、このSociety5.0における学びのあり方、求められる人材像として、次のように述べています。

求められる人材像

  • 文章や情報を正確に読み解き対話する力
  • 科学的に思考・吟味し活用する力
  • 価値を見つけ生み出す感性と力、好奇心・探求力
新たな社会をけん引する人材

  • 技術革新や価値創造の源となる飛躍知を発見・創造する人材
  • 技術革新と社会課題をつなげ、プラットフォームを創造する人材
  • さまざまな分野においてAIやデータの力を最大限活用し展開できる人材

また、このSociety5.0における学校のあり方として次のように考えています。

Society5.0における学校のあり方
Society5.0における学校のあり方

斉一律の授業スタイル
⇒読解力等の基盤的学力を各自に習得させつつ、個人の進度や能力、関心に応じた学びの場へ

同一学年での集団学習 
⇒同一学年に加え、学習到達度や学習課題等に応じた異年齢・異学年集団での協働学習の拡大

教室での学習 
⇒大学、研究機関、企業、NPO、教育文化スポーツ施設等も活用した多様な学習プログラム

文部科学省は、このSociety5.0における学校のあり方をSTEAM教育と結び付けて考えています。

日本のこれまでの取り組み事例

日本がこれまで行ったSTEAM教育の事例としては、次のようなものがあります。

STEM教育研究センター

2002年、埼玉大学が「STEM教育研究センター」を設置。

地域のコミュニティの中心となるような社会教育施設のサポートをしています。

その活動として、ロボットコンテストの実施、夏休みの自由研究ワークショップ、親子でできるものづくり活動の実施などが挙げられます。

埼玉大学 STEM教育研究センター

科学の甲子園

2011年、科学技術振興機構が科学分野に興味を持つ子どもを増やす目的で「科学の甲子園」を創設しました。

この大会を開催することで、全国の科学好きな高校生を集め、競い合って活躍できる場を構築しています。

次世代人材育成事業 科学の甲子園

さいごに

今回「STEAM教育」について調べてみたところ、教育現場で試行錯誤を繰り返している段階という印象を受けました。

「自分で課題を見つけて実験と確認を繰り返し、解決策を見つけていく」というのは、実は、日常生活を送るうえで無意識に行っていることでもあります。

たとえば、料理をしながら味付けが薄いときには、調味料を少しずつ足していく…ということはだれしも経験あるのではないかと思います。

これが実験(調味料を足す)・確認(味見をする)を繰り返し、解決策(好みの味)を見つけるということですが、これをどう「教育」に結びつけていくのか。

koedoでは、STEAM教育がどのように進展していくのか、また、子どもたちがどのように問題解決力を身に付けていくのかなど、今後も観測を続けようと考えています。

koedo事業部

【参考】