日本の2024年SDGs達成度18位、目標4「質の高い教育をみんなに」に対する取組とは?
SDGsとは、2015年に国連サミットで採択された国際目標です。
「誰ひとり取り残さない」というスローガンのもと、国連に加盟している193ヵ国が2016年から2030年の15年間で17の目標と169のターゲットの達成を目指しています。
その目標の4番目に掲げられているのが「質の高い教育をみんなに」です。
日本では小学校に入学する6歳から中学校を卒業する15歳までが義務教育となっています。つまり、6歳から15歳の子どもには教育を受ける権利が、その保護者には教育を受けさせる義務が生じています。
しかし、2000年の時点では世界の1億人の子どもが小学校に通っておらず、その約3分の2が女の子でした。年々、教育を受けている子どもの数は増加していますが、2021年の時点でも学校に通っていない6歳から17歳の子どもは2億4,400万人。このうち小学校に通えていない子どもは約6,700万人でした。これは、初等教育就学年齢(一般的に6歳から11歳)の子どもたちの9%にあたり、約11人に1人が学校に通えていないことを示しています。
なお、SDGs目標4のターゲットは子どもだけではありません。
「質の高い教育をみんなに」の「みんな」には、さまざまな理由で教育を受けられなかった大人も含まれています。
また、この「教育」は初等教育・中等教育、識字率の向上など基礎教育という解釈ではなく、社会人の学び直し(リカレント教育)の整備も含まれています。
教育を受けられない理由とは
2018年の統計では、学校に通っていない子どもは世界で2億5,840万人。
先進国では96%、途上国でも81%の子どもが初等教育を受けています。
しかし、先進国では91%の子どもが中等教育を受けているのに対し、途上国では中等教育を受けている子どもは34%と、大きな差があることが分かりました。
途上国では就学率は向上してきていますが、最終学年まで子どもが学校に通い続けているとは限りません。
ユネスコの調査によると、2020年の時点で途上国の初等教育の修了率は58%。学校に通い始めたとしても、約6割の子どもが学校を中途退学しているという状況です。
また、ジェンダーによる差を確認してみると、先進国では、初等教育・中等教育ともに就学率に男女の差がほとんどありません。その一方で、途上国では男女の就学率が初等教育・中等教育ともに5%ほどの差があります。
女子の就学率については宗教や文化によって学問への道が閉ざされているほか、家事労働や児童婚、若年出産なども問題になっています。
そのほかに、男女ともに教育を受けられない理由としては、次のような理由が挙げられます。
- 学校や教師の不足
- 経済的理由
- 家事や子育て、水くみなどの労働
- 家庭(保護者)にとっての学校に通う「価値」
- 長引く紛争、自然災害の影響
「質の高い教育をみんなに」の取り組み事例
日本でも政府、企業などさまざまな団体がSDGsの目標4に対して取り組みを行っています。
公文(KUMON)
公文は日本だけではなく世界60を超える国と地域で展開しており、「公文式学習経験者」は1000万人を超えています。
公文では、2004年に認知症の維持・改善を目指して「学習療法」の事業をスタート。主に介護施設において元気な高齢者の認知症予防を目指す「脳の健康教室」が行われています。
さらに、児童発達支援、放課後等デイサービス、就労移行支援などでも療育プログラム、育成プログラムが導入されています。
パナソニック
2018年の時点で、世界中の約6人に1人にあたる約11億人が電気のない暮らしをしています。電気がない生活ということは、太陽が沈んでからは勉強ができないということです。
パナソニックは2013年から2018年にかけて、NPOやNGO、国際機関を通じて電気が十分に供給されていない南アジアやアフリカ諸国を中心とした30カ国に10万台以上のソーラーランタンを寄贈しています。
ソーラーランタンが届いた地域では学習環境が整い、進級テストの合格率や就学率のアップにつながっています。
Union
政府が主導するGIGAスクール構想により小学生・中学生に1人1台の端末が配布されたり、スマートフォン利用の低年齢化が進んでいたりなど、ITリテラシーの必要性が高まっています。
Unionは、生活環境や境遇に関係なくすべての子どもたちが、ITリテラシーや論理的思考など、これから必要となるスキルを身に付けられるように、まなびのプラットフォーム「テクテク」を運営。そのほかにも学習教材の提供・DX化、学びの興味や質を高めるイベントや大会も開催しています。
日本にもある教育格差 個人でできる取り組みは?
「質の高い教育をみんなに」というSDGsの4番目の目標は、6歳から15歳までの子どもに教育を受ける権利が与えられている日本では、あまり関係がないと考えてしまいがちです。
しかし、日本では学校以外の場所で教育格差が生じてきています。
文部科学省が令和3年に行った調査によると、幼稚園から高校卒業までの15年間に子ども1人にかかる教育費は、すべて公立の場合でも約575万円、小学校・中学校が公立の場合で約780万円、幼稚園から高校まですべて私立の場合で約1800万円となっています。
教育にお金をかける余裕がある世帯と、そうでない世帯での学力格差が小学校6年生の時点で存在していることが分かっています。2013年度の全国学力テストの結果を分析すると、世帯年収200万円未満の世帯と1500万円以上の世帯では、正答率に大きな差が生じていました。
教育格差が世代を超えて連鎖する事態を防ぐためには、家庭の経済格差による放課後の教育格差をなくす必要があります。
そのために個人でできることはないのでしょうか。
まず、国内でも教育格差があるという現状を知り、関心を持つことが大切です。
そして、学習ボランティアに参加したり、信用できる機関に寄付や募金をしたりなど、個人でできる取り組みがあります。
たとえば、クラウドファンディングでも教育に関する分野で取り組んでいる事案がたくさんあります。自治体や地域に根差した企業でなにか取り組んでいないか調べてみるのもいいかもしれません。
2024年、日本のSDGs達成度ランクは世界18位
SDGsは、2030年までに17の目標と169のターゲットの達成を目指していますが、現在、日本ではどの程度目標を達成できているのでしょうか。
国際的な研究組織「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク」が、2024年6月17日、世界各国のSDGsの達成度を評価した「Sustainable Development Report」の2024年版を発表しました。
この発表によると日本の達成度は世界167カ国中18位で、前年の166カ国中21位よりランクが3つ上がったものの、過去最高である11位(2017年)には程遠い状況が続いています。
目標4「質の高い教育をみんなに」は、前年は最高評価の「達成済み」でした。しかし、OECDが3年に1度実施しているPISA(生徒の学習到達度調査)の2022年の結果が、「社会経済的背景によって説明される数学の成績」に課題が残ると評価されてしまい、「課題が残る」にランクダウンしています。
なお、2024年版のランキング1位はフィンランド、2位はスウェーデン、3位はデンマークと続き、24位までは日本を除くとヨーロッパ各国が占めていました。
さいごに
国際的な研究組織「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク」が作成した報告書では、世界全体のSDGsの進捗について、17の目標のうち2030年までに達成できそうなものはわずか16%しかないと述べられています。
コロナ禍の影響もあり、SDGsの進捗が世界全体で2020年以降停滞しているようです。
日本の2024年の順位は昨年よりは3ランクアップしたものの、過去最高の11位には程遠い18位でした。
SDGsが掲げている目標は、教育をはじめ貧困、飢餓、平和、健康など、身近なものばかりです。寄付や募金、ボランティアなど個人でも取り組めるものもあります。
他人事と思わず、なにか取り組んでみるのもいいかもしれません。
koedoでは、今後もSDGsの取り組みについて定点観察を続けていこうと考えています。
(koedo事業部)
【参考】
- ユニセフの主な活動分野「教育」/公益財団法人日本ユニセフ協会
- 学校に通えない子どもたちは世界にどのくらいいるのでしょうか?/セーブ・ザ・チルドレン
- 教育問題3つの原因と解決策。開発と女王国の子どもたちのためにできることとは?/World Vision
- KUMONの取り組むSDGs/株式会社公文教育研究会
- 10万台の寄贈達成、そしてその先へ/Panasonic
- SDGsへの取り組み/株式会社Union
- 子どもの貧困と教育格差/公益財団法人チャンス・フォー・チルドレン
- 令和3年度子どもの学習費調査/文部科学省
- 【SDGs達成度ランキング】日本、2024年は世界18位に上昇、気候変動対策など最低評価/朝日新聞SDGs ACTION!
- Sustainable Development Report 2024/Sustainable Development Solutions Network