失敗は最大の母なり ~より良い配信授業に向けて再考~

私の住む福岡県の公立校入試は3月中旬に行われる。世の中がちょうどバレンタインデーでウキウキしている時期に、私たち塾講師は毎年入試前1か月ということで、気持ちがピリピリして落ち着かない。そして、この頃に公立入試にそっくり似せた模試が行われる。

この模試は毎年行われ、公立入試後に問題を照らし合わせるとなかなかの精度である。そのため、毎年この模試だけは外部模試としてうちの生徒にも受けてもらっている。その模試が当日夜、YouTubeライブにて問題解説を行うというというのだから、興味深い。見せていただこうじゃないか! 大手のライブ配信ってやつを!

結論として、残念ながら質の高い内容とは言えなかった。当日の解説をライブ配信するという着眼点は良かったのであるが、いろいろと残念な配信であった。

まず1つ目は、配信環境。画像を見る限り、解像度が高いまま配信されていたようで、通信回線が悲鳴をあげ、画面がフリーズすること数分、数回……。それだけで子供たちの集中力が削がれてしまっていた。あまりに退屈だったのか、動画を視聴していた生徒は私の目の前で寝てしまった。フリーズした画面を見ていると、その間にフリーチャットの欄が荒れ放題になっていた。このコラムでも何度も書いたが、配信側の通信環境は最善策を講じておく必要がある。

2つ目は上記でも書いたが、チャットがフリーになっていたことだ。画像がフリーズしている間、チャット欄は荒れに荒れ、卑猥な言葉が飛び交っていた。あまりのひどさに、途中で生徒を呼び戻して見せるのをやめてしまったくらいだ。中には「無駄な書き込みはやめようよ!」と声をかける子供もいたが、勢いづいた書き込みは止まらなかった。やはり、相手は子供。書き込みの制限をかけるか、チャット欄に上がる前に、配信側がチェックをする必要があったと思う。

私たちの塾ライブの配信のときも子供たち同士のチャットは制限し、書き込めないようにしている。最初は誰でも書き込みOKにしていたが、子供たち同士でチャットを楽しんでしまって、学習効率が下がってしまったからだ。今後は、子供に対するSNSリテラシー教育も必要だろう。ただ、昨今のネットいじめを見ると、大人が心無い書き込みをしている。子供だけでなく、大人も教育が必要だ。ネットを取り扱う人みんなに教育が必要だと切に思う。

そして3つ目は、誰でも視聴可能であったことだ。本来は中学生向けの配信だったので、入室の際にパスワードなどを設定し、部外者が入れないようにすべきだったように思う。今回のライブ配信は、当日にテストを受けに来た生徒にチラシで告知されていた。そのチラシも見せてもらったが、パスワードなどの設定は何もなく、誰でもアクセスすることができた。それゆえ私も視聴することができたのだが、誰でもアクセスすることができるとはつまり、愉快犯とまでは言わないまでも、チャットを荒らし放題して逃げることができるわけだ。最初に挙げた、卑猥な発言は大人であるかもしれない。子どもかもしれない。視聴している生徒かもしれない。誰が犯人かは知る由もないが、部外者を入れないという策は講じるべきだったと思う。

とまあ、いろいろと問題点はあったが、私はこの会社を非難はしない。誰しも失敗を繰り返すことで精度を上げているのだから。受験生にとって、何があったらもっと良い受験勉強ができるのだろう。模試を活用して、もっと成績を上げてもらうにはどうしたら良いのだろう。と考えた一つにこのライブ配信があったと思う。ぜひ今回の問題点を改善し、来年はよりよい解説ライブをして欲しいと願っている。

私たちのような小さな塾だけでなく、学校の実力テストを取りまとめるような大きな会社でも、まだまだ試行錯誤なのだと実感したライブ配信だった。

この記事を書いたひと

松本 正美
(まつもと まさみ)

「学ぶ力は、夢を叶える力!」松島修楽館代表。中学3年生の時に「将来は塾の先生になる!」と決意し、大学1年生から大手個別指導塾で教務に就く。卒業後、そのまま室長として10年間勤務。その後、新興のインターネット予備校で生徒サポートの仕事に携わった後、2013年に松島修楽館を開業。単なるテストのための勉強だけではなく、「どんな夢でも、正しい努力によって叶えることができる」ということを子どもたちに伝えるため、根本的な「学ぶ力」を育むことを重視した指導を行っている。2人の高校生の母。趣味はサックス、タップダンス。