【親になるということ】会話を継続する力

「おはよう」「今日は暖かいね」「おなかすいた?」「眠いの?」

生まれたばかりのころから、私たちは自分の子どもにたくさん話しかけてきました。最初は泣き声だけだったのに、名前を呼ぶと笑顔になり、振り向き、返事をする、そんな成長を見るのがとてもうれしかったと思います。

そのうち子どものほうから話しかけてくるようになると、彼らの話を聞くことがメインになります。うなずいたり、褒めたり、質問に答えたり――たくさんのやりとりをしていたはずなのに、ふと気がつくと毎日の生活が忙しくて、「あれ? あんまり話してないな」ということになっていませんか?

「学校応援団」という組織の中で、日々小学校の子どもたちと話をしていると、質問に対しては答えてくれますが、そこで会話が終了してしまうことが多くあります。彼らのほうから話を振ってきた場合も、自分の話したいことを話すと、そのまま終了。言葉のキャッチボールを続けられないのです。

人は社会的な生き物ですから、たくさんの人と関わって生きていきます。人と関わるためには、言葉でのコミュニケーションが必要です。これは、リアルでも、ネットでも変わりません。一問一答のような形では会話はすぐに終了してしまいますし、奥行きがありません。子どもの「会話を継続する力」を伸ばすのは、やはり家庭での親子のコミュニケーションが大切になってくると思います。

子どもと会話という話題をネットで検索すると、親が押さえておくべき、いくつかのポイントが出てきます。

  • 毎日数分でも良いので、子どもの話を聞く
  • スマホの電源を切るなど、子どもが気持ちよく話せるような「受け入れ」の姿勢をとる
  • イエス、ノーでは答えられない質問(なせ? どんな? どうやって? など)を意識して取り入れる
  • そうなんだね、いいね、という共感をする
  • 共感するだけでなく、違う視点で反論もしてみる
  • 親の返事は端的に(しかし、会話が途切れないように)

ほかにもたくさんありますが、小さい頃から「安心して話せる空間」を親子で共有しておくことは、幼稚園や小学校のときの子どもの語彙力やコミュニケーション力を高めるだけではなく、思春期以降でも有効です。具体的な私の体験をお話ししましょう。

私には二人の子どもがいます。男の子と、女の子。上の子は今年成人で、もう子どもという域ではありません。下も高校生ですから、同様です。ですが、彼らとはいまでもとてもよく話します。多いときは2時間以上、夜中に3人でずっと話すのです。正直、仕事をしたくて終わりたい、と思うことも何度もあるのですが、私は子育ての中で「子どもの話を聞く」ことだけは、何よりも優先しようと思ってきたので、止めたことはありませんでした。

上の子が大学受験、下の子が高校受験のときのことです。勉強のプレッシャー、学校での友人関係のストレスなど、毎日イライラしている様子が見えました。でも、私は何もできないし、どうしようかな……と思っていました。たまに買い物に連れ出したり、外でゆっくりご飯を食べてみたりと、気分転換くらいしか付き合えません。

ところが、徐々に彼らからの「合図」に気がつくようになりました。それは、夕飯後、「お母さん、車で買い物行こう」というもの。なぜか兄妹そろって同じことを言います。ノート1冊買うのに、隣の市のショッピングモールまで行きたがったり、どこにでも売っている雑誌を買うのに車で30分以上もかかる郊外の書店を指定したり……。

そして助手席に乗った彼らはとてもよく話すのです。友人のこと、先生のこと、進路、勉強、将来・・・もしかしたら、お互いに顔を合わせず、同じ方向を向いている車内だから、話せるのかな?と思いました。そして、たいていにおいてお店には行かず、多いときは2時間から3時間、あてもない運転をしながら話を聞いていたのでした。

この「合図」は、受験直前まで続きました。兄妹で交互に毎日出かけたこともありましたが、合図に気づいたおかげで、子どもたちの「話したい」という気持ちを受け止められたのだと思います。思春期の一番親と話さなくなる時期を、反対に会話で乗り切ったという体験です。

受験が終わった後、子どもたちになんで車だったのかと聞きましたら、「車だとお母さん話から逃げられないでしょ?」と。つまり、家では私が子どもたちの話を聞きながらも違うことを考えていたりする様子がバレていたのですね。うまく子どもたちの行動を読んでいる気になっていたのに、実は私の方が行動を読まれていた、そんなオチもついたのでした。

子どもたちはいつだって親に話がしたいのです。いまはあなただけに時間を使うよ、たくさんたくさん話していいよ、安心して話していいよという空間を親子で作ることが、家族以外の人との会話をする力につながります。自分の意見を言う、人の意見を聞く、新しい知識に触れる。その中から、新しいアイデアを生み出す力が求められます。

その力は、子どもたちが自力で獲得するものです。与えてあげられるものではありません。親ができること、それは家庭でしっかりと会話をすることです。それは人とコミュニケーションをとるときに最も必要な「信頼」の築き方にもつながると思います。

いまでもたまに、子どもたちから「合図」があります。そんなときはとてもうれしくて、長いドライブに出かけてしまうのです。親の会話力も鍛えられているのかもしれません。

この記事を書いたひと

吉田 理子
(よしだ りこ)

1971年生まれ。Windows95発売当時に社会人となり、以降パソコン教室講師やITサポート等の仕事に従事。2005年に企業・学校向けのIT、情報教育を目的とした企業組合i-casket設立。2018年には一般社団法人s-netサポーターズを設立し、主に小中学校にて子ども・保護者・教員向けの情報リテラシー、プログラミング的思考に関する講座を行う。そのほか地域ボランティアや主権者教育の活動をボランティアで。趣味は料理と読書。