オンライン授業が毒となる? リモート授業は免罪符にはなりません!

先日、週末の密を避けて買い物をして帰ろうとしていたそのとき、「先生!!」と女の子の声が……。振り向くと卒業生とそのお母さんが私の後ろに立っていて、ビックリ。平日のこんな昼間になぜ?と聞くと「ずっと、学校行ってないよ。週1回だけ午前中にプリントをもらいに行くだけ。あとはずっとリモート。テストもなくなった」と返って来た。

彼女が進んだのは私立高校で人数が多い。コロナ感染が心配なのはわかるが、あまり学力が高くない学校の生徒でもあったので心配になり、思わず「勉強わかる?」と聞き返してしまった。「わかるわけないよ。先生も自分の家からだし。犬も鳴いているよ」と返って来た。隣にいたお母さんも「何のための学校かわからないし、先生にやる気を感じられない」とちょっとご立腹であった。

私も5月からオンライン授業、しかも一斉授業を行っているが、「ヤル気」だけは伝わっていると思う。実際に、5月は長崎・平戸をはじめ、福岡のフリースクール、大分と3拠点をつなぎ、授業をしている。評判も上々で「学校の先生よりよくわかった」「授業が面白くてあっという間の1時間だった!」などと感想をいただいた。子供たちの感激具合に腰を抜かしそうな保護者もいたそうで、私はオンラインだから講師の熱量が伝わらないということはないと確信している。ただ、そのためにはかなりの工夫も必要ではある。

私たち塾講師は授業の評価がそのまま生活に直結する。毎回真剣勝負だ。学校の先生も何かしら評価を付けられるのかもしれないが、授業が面白くないからと言って生活が脅かされるわけではないだろう。その差なのか、何なのか。まったく工夫がない授業が目立つ。

このような退屈なオンライン授業は「オンラインだから授業がわからない」と子供たちに刷り込んでしまう。しかも、教師側は「授業はしました。教えました」と言える。家から配信なら、監視の目も薄い。確かに帳面通りの授業はしたかもしれないけれど、子供たちの理解度や定着度は無視で良いのか? そこにはフォーカスしていないのだろうか? 授業というものはやれば良いのか? 不思議がいっぱいである。

私はオンラインでは対面授業の倍以上「ゆっくり、オーバーに、何度も確認」を心がけている。1ページ進めるたびに「ここまででわかった人は手でOKの丸を作って!」とアクションを呼びかける。漠然と授業を聞き流さないように、自分で体を動かしてアクションしてもらう。そうすることで「自分から授業に参加しているのだ!」という自覚を持たせるためだ。そしてかなりハイペースで指名をし、答えさせる。内容は難しい内容ではないが、聞いていないとすぐに自分の番がやってくる。この緊張感も良いのかもしれない。

このように一つひとつ子供たちの意識を拾い上げていきながら授業をしていれば、おのずとグルーブ感のある授業になる。そうすれば子供たちはしっかり話を聞いてくれるのに。

このまま学力が高くない生徒が、現状のリモート授業を受け続けるとどうなるのだろうか。しかも周りの高校生に話を聞くと、学力が高いと言われている高校であればあるほど、対面でしっかり授業をしている。それに、そもそも学力が高い生徒はどんな状況であっても、どんな媒体を使っても勉強ができる。

この状況からすると、かなりの学力格差が広がるのではないかと懸念する。差が埋められないくらい、いや、差がついていることすら気がつかないくらい差が広がり、自分の可能性に気がつくこともなく埋もれていく子供たちが量産されるのではないか。

私はオンラインこそ、教育の救世主だと思う。いつでも、どこでも勉強ができる。場所の拘束もされず、コロナの感染の心配もしなくて良い。しかし、問題に挙げたようなオンライン授業が広がると、オンラインが毒となり広がってしまう。これだけは避けなければならない。

リモート授業を行う側は、一度立ち止まって考えて欲しい。子供たちは学校が「リモート授業です」と言えば、それに従うしかない。授業の中身を充実させ、工夫するのは授業を行う側の義務だ。

ぜひとも、学校の教育現場でもオンライン授業について研究し、改善をして欲しいと思う。もちろん私も日々精進だ。

この記事を書いたひと

松本 正美
(まつもと まさみ)

「学ぶ力は、夢を叶える力!」松島修楽館代表。中学3年生の時に「将来は塾の先生になる!」と決意し、大学1年生から大手個別指導塾で教務に就く。卒業後、そのまま室長として10年間勤務。その後、新興のインターネット予備校で生徒サポートの仕事に携わった後、2013年に松島修楽館を開業。単なるテストのための勉強だけではなく、「どんな夢でも、正しい努力によって叶えることができる」ということを子供たちに伝えるため、根本的な「学ぶ力」を育むことを重視した指導を行っている。2人の高校生の母。趣味はサックス、タップダンス。