【授業のためのICT入門】タブレットの「カメラ機能」で自分を映してみる

2021年4月22日

小学校低学年でタブレットの操作をすることはなかなか難しいことです。文章を書いたり、プレゼンを行ったりする前に、まず操作を覚えなければならないため、授業に取り入れるようになるには時間がかかることでしょう。そんな状態でも使いやすいのが「カメラ機能」です。

カメラには様々な使い方があります。対象物(植物など)を拡大してその仕組みを知ろうと思ったら、写真を撮って引き延ばしたりできますし、風景を写真にして教室に持ち帰り、タブレットを見ながら絵を描いたりすることもできます。そのほか、こんな使い方はいかがでしょうか。

国語の音読練習で使う

声に出して文章を読む「音読」は、文章の理解度が高まり、文字情報の記憶が促進されると言われています。低学年の頃の宿題と言えば音読。私も子どもたちの音読を何年間も聞いてきました。その音読の様子を子どもたちがお互いに動画で撮影し合い、どんなふうに読めているのかを再生して確認するためにタブレットを使うことができます。

その際、いくつかチェックポイントを用意します。

ポイント

  • つかえないで読めているか
  • 声が聞き取れるか
  • 聞きやすい速さで読んでいるか

自分が音読をしている様子をあらためて見ることは、子どもたちにとってとても刺激的です。恥ずかしい、うれしい、楽しい、(上手に読めなくて)嫌だなど、様々な感情が芽生えてムズムズしますが、それも良い体験です。撮影する方も、黙って聞いているのではなく「友達を動画に撮る」という役割を担うのでとても真剣です。自分自身でチェックし、友達と見せ合い、上手にできている点を褒め合います。みんなの評価が高かった人の動画を大型テレビに映して鑑賞し、どういう点が良かったのかを振り返ることもできるのです。

動画撮影は、音読だけでなく、発表の練習にも使えます。高学年になると調べたことを発表する機会が増えますが、本番に向けた練習にも効果があるでしょう。

実はこの動画撮影というのは、インストラクターの研修などでも使います。私がマイクロソフトのオフィシャルトレーナー資格を取得した際の研修では、課題(マウスの使い方を5分で説明するなど)について実技を行うときにビデオ撮影をしました。終了後、他の受講生の前で再生し、技術的な指導を受けるのですが、音読ではないため、上記のチェックポイントの他に目線や表情、体全体のしぐさなどの項目が入っていました。

客観的に自分を見るということの羞恥心は、おそらく子どもの比ではないでしょう。けれど我慢して見続けていると、自分がプレゼンにおいて足りない部分がはっきり見えてきます。人に言葉で指摘されることと、映像での視覚的な事実が重なるため、説得力が増すのです。「人の前に立って話すとはどういうことなのか」というインストラクターに求められる大事な要素を短期間で実感する、とても良い体験だったと思います。

体育の授業で使う

子どもたち一人ひとりの跳び箱の飛び方、マット運動、走り方等を教員が撮影し、フォームの確認やその子どものクセの修正などを指導する際に使います。またこの場合も、上手にできている子どもの動画をみんなで鑑賞するといった使い方ができます。スローで再生したり、正しい例と比較したりすることで、子どもたちは自分の足りない部分を自覚しますし、上手な人のお手本を見ることでイメージトレーニングにつなげることもできるのです。

ただしこの場合気を付けなければならないのは、どのタイミングで指導するかです。例えば跳び箱の練習のとき、一人ずつ飛んだ後すぐに子どもとチェックができるのが理想ですが、それをしてしまうと次に飛ぶ子どもまで時間が空いてしまい、練習できる回数が減ってしまうのです。また、教員が動画撮影に集中してしまうと、授業中のケガや事故につながる危険を察知することがおろそかになってしまう場合もあるでしょう。体育の場合は可能ならば、複数の大人(教員補助員等)で授業を展開し、担任が目配りできない部分のサポートを受けながら、連携して指導する流れをつくると良いかもしれません。

上記の例に共通することは、言葉(指摘や指導)にプラスした視覚的な事実の確認が、子どもたちの理解をサポートするということです。1人1台タブレットを持つ状態では、自分が撮影されている動画を自分で所有することができるので、気になったときにいつでも再生できる、確認ができるというメリットもあります。タブレットを授業に取り入れる際の導入的な使い方として、こうした「カメラ機能」の活用はいかがでしょうか。

この記事を書いたひと

吉田 理子
(よしだ りこ)

1971年生まれ。Windows95発売当時に社会人となり、以降パソコン教室講師やITサポート等の仕事に従事。2005年に企業・学校向けのIT、情報教育を目的とした企業組合i-casket設立。2018年には一般社団法人s-netサポーターズを設立し、主に小中学校にて子供・保護者・教員向けの情報リテラシー、プログラミング的思考に関する講座を行う。そのほか地域ボランティアや主権者教育の活動をボランティアで。趣味は料理と読書。