小学5年生が“バイト”を始めました
小学生の息子はお金が大好きだ。たまに自分のお財布に入っている小銭を数えてはうっとりしている。
しかし、不思議なことに毎月お小遣いが欲しいと交渉してきたりはしない。ごくたまに、毎月お小遣いをもらっている友達のことをさも羨ましそうに話し、「(自分も)お小遣いがほしいなぁ」くらいのことは言ってくるのだが、是が非でもという感じではないので、親子でいつの間にか忘れている。
あんなにお金が好きなのになぜなのだろうと考えて、ふと思い当たった。いまの子たちは現金がなくても楽しめることがたくさんあるのだ!!
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私が子どものころは、お小遣いをもらうとすぐに月刊誌の漫画を買っていた。当時有名な漫画が2誌あったが、小学生のお小遣いで2冊は買えなかったので、友達とそれぞれ違うものを買っては交換して読んでいた。そして残りのお小遣いを貯めては、お気に入りの漫画の単行本を買うのが楽しみだった。この話を同年代の人にすると、皆一様に「そうだったねー。私もそうだった!」と盛り上がる。
でも、いまはYouTube検索をすれば面白そうな動画が次々と出てくる。漫画もアプリで読み放題。無料のネットゲームもごまんとある。映画だって定額制の会費を払えば好きなだけ観ることができる。極端な話、お金がなくても娯楽ができる環境が整っているのだ。
現在、息子の習い事や学習に必要なお金はすべて親が出している。息子が自分の財布を開くのは、外出先で欲しいものがあったときくらいだ(そのお金と言うのは、たまに会う祖父が彼に与えたものであったり、お年玉の一部だったりする)。うまく行くと、このまま息子にお小遣いを与えなくてもやっていけそうな気さえする。
しかし、お金は人生と切っても切れないもの。ただでさえ日本は金融教育で世界に後れを取っているのだから、お金のことは家庭で教えていかないといけない。大学生になって一人暮らしを始めたときに、お金のことがわからなくて苦労したという話も聞く。
では、どうしたら実のあるお小遣いを与えることができる? どうしたらお金の大切さを実感できる? どうしたら経済を理解できる? そう考えて、思いついたのがメルカリ(フリマアプリ)だった。
考えれば考えるほど、メルカリは子どもに様々なことを学ばせられる優れたシステムだった。
- 商品写真の撮り方・商品の紹介文 → どちらも魅力的でないとまず見てもらえない。
- 値付け → 買ったときよりも大幅に価値が下がるということを実感できる。
- 買い手とのメッセージのやりとり → 大人への言葉遣いを考えるようになる。
- 手数料や送料、梱包資材 → 経費という概念を獲得できる。
そこで息子に「メルカリやってみる?」と聞くと、「やるーーーー!」と二つ返事。そこで、必ず私に見せてから出品、やり取り、発送をすることを絶対条件にした。売上金の使い道については、自分が本当にしたいことや欲しいものに使うようにとだけ約束。
(※メルカリ自体に年齢制限はない)
これまでお手伝いをしたら都度お駄賃、というのが長続きしなかった息子は大興奮。俄然やる気を見せてきた。そんな息子の記念すべき初出品はゲームの攻略本。定価1650円が1100円で売れたが、手数料や配送料を引くと入ってきたのは615円。意外と少ないことにがっかりするかと思いきや、息子は大喜び。「お手伝いするより、こっちのほうが儲かるね」とまで言い出した。我が家のお手伝いのお駄賃は10~20円だから、それはそうだろう。
しかもこの前、ホームセンターで送料を計算するためにキッチンスケールを買ったので、実は赤字なのだが、息子はそれも自分で気づくことができた。赤字という概念を持っている小学生なんてそうそういないと思う。息子の収益化には時間がかかりそうだが、これはお金儲けを目的とした取り組みではないので、一つひとつ自分で調べたり、考えたり、工夫していってくれればと思っている。
この記事を書いたひと
木下 真紀子
(きのした まきこ)
コンセプトライター。14年間公立高校の国語教諭を務め、長男出産後退職。フリーランスとなる。教員時代のモットーは、生徒に「大人になるって楽しいことだ」と背中で語ること。それは子育てをしている今も変わらない。すべての子どもが大人になることに夢を持てる社会にしたいという思いが根底にある。また、無類の台湾好き。2004年に初めて訪れた台湾で人に惚れ込み、2013年に子連れ語学留学を果たす。2029年には台湾に単身移住予定。