【不登校という選択】親がしてくれた「うれしかった対応」、不登校生徒のその後は?
文部科学省が令和4年10月に行った不登校児童生徒の調査によると、令和3年度に小・中学校に在籍している児童生徒のうち不登校となっているのは244,940人と9年連続で増加しています。
子どもが「不登校」を選択したとき、親にどのような対応を望んでいるのでしょうか。そして、「不登校」を選択した子どもは、その後、どのように進学・就業しているのでしょうか。
不登校経験者が感じていた「親の対応でうれしかったこと」は?
子どもが「不登校」を選択したとき、それを冷静に受け止められる親などほとんどいないでしょう。多くの親は、きっと戸惑い、そして悩むはずです。
不登校を選択した子どもは、親にどういった対応を望んでいるのでしょうか。
不登校経験者に、「当時、保護者の対応でうれしかったこと」を質問した結果は次のとおりです。
- 自分の前で夫婦喧嘩をしないなど、居心地が悪い思いをしないよう配慮してくれていた
- 「なにかしたい」と思ったときに、その意思を尊重してくれた
- 追い詰めないよう配慮しながら、休むことを許す声掛けをしてくれた
- 「学校に行きたくない」という思いに共感してくれた
- 大学や進路について希望を感じるような言葉をかけてくれた
- 過干渉になりすぎず、そっとしておいてくれた
- 少し離れた場所など知り合いに会わないような場所に連れ出してくれた
- すごく落ち込んでいたときに、病院など相談できる場所があることを教えてくれた
- 学校を休むときには親が連絡してくれ、先生からの伝言は自分に本当に必要なものだけ教えてくれた
- 周りの目におびえていたときでも、絶対的な味方になってくれた
- 学校に復帰したとき、さりげないサポートなど心の支えになってくれた
- 進学を考えたときに困らないよう、学習面をサポートしてくれた
「不登校」を選択した子どもたちのその後は…?
少し古いデータですが、文部科学省が不登校生徒への支援策の参考とするために、平成18年度に不登校だった生徒の5年後の状況等の追跡調査を行っています。
この調査は平成18年度に中学校3年生に在籍していた生徒のうち不登校だった41,043人を対象として行ったもので、文部科学省が平成26年に7月に「不登校に関する実態調査」として公表しています。
主に受けていた支援
対象者に複数回答可能な「中学校3年生のときに受けていた主な支援は?」と質問したところ、施設の利用状況としてもっとも多かったのは「病院・診療所」で24.1%。続いて「教育支援センター(適応指導教室)」が19.7%となっています。
一方で、平成5年に行った調査では「なにも利用しなかった」と回答してした対象者が43.1%いましたが、このときの調査では22.5%となっており、20%以上減少していることが分かります。
このことから、不登校を選択した生徒がなんらかの支援を受ける体制が整いつつあることが分かります。
また、「学校にいる相談員など(スクールカウンセラーなど)」が34.0%、「学校の先生(担任の先生など)」が29.5%、「学校の養護教諭」が 23.6%と今回の調査対象者の約3分の1が学校内で相談をしていることから、学校における不登校生徒に対する支援体制が整備されてきていることも伺えます。
中学3年時の高校進学率
中学3年時の高校の進学率について調査したところ、進学率は85.1%となっていて、前回調査時の65.3%よりも大幅に増加。一方、高校中退率は14%で前回調査時より20%以上減少しています。
ただし、高校進学率の全国平均は98%、高校中退率は1.9%のため、不登校であったことが高校進学や高校中退になんらかの影響を与えている可能性があります。
20歳時点の就学状況
「20歳現在、どこか学校に通っていますか」という質問に対して46.7%がなんらかの学校に就学していると回答しています。
就学状況としては「大学」がもっとも多く19.0%、次いで「専修学校(専門学校)・各種学校」が14.9%となっています。また、中学卒業から5年経過した時点で、8.9%が高校に就学していると回答しています。
前回調査時と比較すると、20歳現在で「就学している」と回答している対象者が23%から46.7%とおよそ2倍。特に「大学」と回答した対象者は6.6%から19%へと大幅に増加しています。
20歳時点での就業状況
「なにか仕事に就いていますか」という質問に対し、32.2%が「パート・アルバイト」、9.3%が「正社員」と回答しています。
なお、「とくに仕事に就いていない」と回答した対象者が前回調査時の37.6%から45.1%に増えているのは、学生や専業主婦などが含まれている可能性があります。
さいごに
今回の調査では、子どもが「不登校」を選択したときに親に求めているのは「共感してくれる」「登校を強要しない」など、子どもの意見を尊重したり、寄り添ったりすることが大切だということが分かりました。
そして、中学生のときに不登校を経験した人の85%が高校へ進学、さらに大学進学率も増加していることも分かりました。高校や大学の方でも、不登校経験者に対する受け入れ体制が整いつつあることと関係していると考えられます。
また、文部科学省の調査によると、令和元年度に通信制高校卒業者の大学等進学率は17.6%、全日制高校卒業者の大学等進学率は56.6%となっています。ただ、通信制高校で学んでいる生徒の中には働きながら勉強していたり、スポーツや芸能活動に打ち込んでいたりする生徒も含まれています。つまり、そもそも通信制高校卒業時に進学を考えている生徒が少ないことと関係しています。
仮に小学校・中学校で「不登校」を選択したとしても、いまは学習する手段がいくつも用意されています。子ども自身と相談しながら、ゆっくりと進路を探してみるのもいいかもしれません。
koedoでは、今後も「不登校という選択」について観測を続けていきたいと考えています。
【参考】
- 【不登校生の声】保護者の対応で嬉しかったことまとめ /未来予想図
- 不登校に関する実態調査報告書 第1部 調査の概要 ・ 第2部 基礎集計編 /文部科学省
- 平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書 /文部科学省
- 【参考資料2】検討を進めるための参考資料集 /文部科学省
(koedo事業部)