【不登校という選択】令和5年度 不登校児童生徒数346,482人、約2割が「出席扱い」

令和6年10月、文部科学省は児童生徒の問題行動や不登校などの実態を調査した「令和5年度の問題行動・不登校等生徒指導上の課題に関する調査結果の概要」を公開しました。

この調査の結果、小学校・中学校において令和5年度長期欠席した児童生徒は493,400人(前年度460,648人)、高等学校における長期欠席者は104,814人(前年度122,771人)だったことが判明しました。

不登校児童生徒数の推移
不登校児童生徒数の推移/文部科学省(最終閲覧日:2024.11.22)

長期欠席した児童生徒のうち、小学校・中学校における不登校者数は346,482人(小学校:130,370人、中学校:216,112人)で、前年度より47,434人(15.9%)増加し、11年連続で過去最多を記録しています。

令和3年から令和5年までの不登校児童生徒数を学年別に見てみると、中学校に進学した際に急増していますが、全学年において前年度よりも増加していることが分かりました。

 学年別不登校児童生徒数
学年別不登校児童生徒数/文部科学省(最終閲覧日:2024.11.22)

前年度から不登校状態が継続している子どもの割合を見てみると、小学2年生から小学5年生までは4割程度ですが小学6年生で5割を超えています。一方で、中学1年生の不登校生徒数は小学6年生よりも多いものの、中学入学時点で不登校状態を継続する子どもの割合が35%まで減少しています。このことから、それまで不登校状態だった子どものうち一定数は、中学入学時点で一度は登校を決意していると推測されます。ただ、中学2年生に進学する際には6割、中学3年生に進学する際には7割を超える子どもが不登校状態を継続していることが判明しました。

「令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」をもとに作成

不登校児童生徒について把握していた事実とは

文部科学省は、この調査において学校側が不登校児童生徒について、どのような事実を把握していたかも調べています。

それによると、小学校と中学校で多少の差はあるものの、「学校生活に対してやる気がでない等の相談があった(32.2%)」「不安・抑うつの相談があった(23.1%)」「生活リズムの不調に関する相談があった(23.0%)」などが上位を占めていました。

不登校児童生徒について把握した事実
不登校児童生徒について把握した事実/文部科学省(最終閲覧日:2024.11.22)

また、不登校児童生徒に対して指導の結果登校する、またはできるようになった割合は、小学校・中学校いずれにおいても全体の3割程度に留まっていることが分かりました。

人数
(小学校)
割合
(小学校)
人数
(中学校)
割合
(中学校)
不登校児童生徒130,370人216,112人
指導の結果登校する、
またはできるように
なった児童生徒
39,878人30.6%64,789人30.0%
指導中の児童生徒90,492人69.4%151,323人70.0%
「令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」をもとに作成

学校内外の機関等で相談・指導等を受けた割合

不登校を選択した児童生徒のうち、なんらかの機関に相談・指導等を受けた割合はどれくらいなのでしょうか。

文部科学省の調査によると、学校内外の機関等で相談・指導等を受けた不登校児童生徒の割合は全体の61.2%。相談・指導等を受けている児童生徒の割合は令和元年には7割を超えていましたが、それ以降は減少傾向にあります。

不登校児童生徒が学校内外の機関等で専門的な相談・指導等を  受けた状況
不登校児童生徒が学校内外の機関等で専門的な相談・指導等を受けた状況/文部科学省(最終閲覧日:2024.11.22)

学校内外の機関等で専門的な相談・指導を受けた児童生徒の状況を見てみると、教育支援センターやフリースクールを含めた民間団体・民間施設、病院など学校外の機関に相談・指導を受ける割合よりも、学校内で養護教諭やスクールカウンセラー等に相談・指導を受けた割合の方が多いことが分かります。

なお、学校内外の機関等で専門的な相談・指導を受けていない児童生徒のうち9割近くは教職員から継続的な相談・指導を受けていることが分かっています。

「出席扱い」と判断された割合は?

現在、不登校を選択した子どもたちが教育支援センターや民間施設・民間団体に通っている場合や、自宅においてICT等を活用して学習した場合には、校長の判断により「出席」扱いにできるケースがあります。

▍学校外の機関等で専門的な相談・指導等を受け、指導要録上  出席扱いとした児童生徒数
令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要(最終閲覧日:2024.11.22)

今回の調査によると、不登校児童生徒のうち学校外の機関等で専門的な相談・指導を受けて「出席扱い」とされた児童生徒は38,632人、自宅においてICT等で活用した学習を「出席扱い」とされた児童生徒は10,467人でした。

学校外機関等で専門的な相談・指導を受けながら、自宅においてICT等を活用した学習を行っている児童生徒もいるため一概には言えませんが、不登校児童生徒のうち2割程度の子どもが「出席扱い」と判断されているということになります。

また、コロナ禍の影響でGIGAスクール構想が前倒しされたことにより全国の小学生・中学生に1人1台の端末が配布されたことで、自宅でICTを活用した学習活動によって「出席扱い」と判断された児童生徒数が令和3年度から急増していることが分かります。

教育支援センター、スクールカウンセラーの配置状況

政府は不登校児童生徒が増加していることを受けて、全国の教育委員会に対し教育支援センターの設置やスクールカウンセラーの配置を増やすよう通知しています。

教育支援センター設置状況

その通知を受け、都道府県や市町村が教育支援センターを増やしていますが、指導員が常駐している割合が2割程度に留まっています。

一方でスクールカウンセラーの配置状況は、小学校では平成24年度には配置されていない小学校が5割を超えていましたが、令和4年度には8.7%となっています。ただ学校に「週4時間以上」配置している学校は24.4%と留まっているため、いつでも相談できる状態ではないことが伺われます。

また、中学校では平成24年度には「配置なし」だった学校が1割程度ありましたが、令和4年度には2.4%まで減少していて、ほとんどの中学校になんらかの形でスクールカウンセラーが配置されていることが分かりました。

スクールカウンセラーには精神科医や臨床心理士、心理カウンセラーなどが本業の傍らにこなしているケースが多いため1人のカウンセラーが学校に常駐できる時間が限られているのが現状だと考えられます。

学校保健統計調査をもとに作成
学校保健統計調査をもとに作成

さいごに

文部科学省の調査によって、令和5年度の不登校児童生徒数は346,482人であることが分かりました。

不登校の子どもが増えている背景には、「ムリに学校に通う必要はない」と考えている保護者が増えていることが関係していると推測されます。なお、文部科学省が平成18年に行った「不登校生徒に関する追跡調査」によると、中学生のときに不登校を経験した人の85%が高校へ進学、さらに大学進学率も増加しています。

また、スクールカウンセラーの配置も少しずつ増加していて、中学校では「週4時間以上」が64.5%、小学校でも24.4%となっています。

koedoでは、今後も不登校についての定点観測を続けていこうと考えています。

(koedo事業部)

【参考】