10代を対象にインスタグラムの利用を一部制限、世界各国のSNS利用状況は?

スマートフォンの所有率は低年齢化していますが、現在、日本ではどれくらいの割合でスマートフォンを所有しているのでしょうか。

総務省が行った「令和5年 通信利用動向調査」によると、スマートフォンを所有している世帯の割合は90.6%と引き続き増加傾向にあります。

スマートフォン世帯所有率
主な情報通信機器の保有状況(世帯)/総務省(最終閲覧日:2024.12.06)

同調査によると、インターネット利用者に占めるSNS利用者の割合は80.8%。年齢別にみると6歳~12歳が43.5%、13歳~19歳が90.3%と小学生・中学生のSNS利用割合も多いことが分かります。

SNS利用状況
SNSの利用状況/総務省(最終閲覧日:2024.12.06)

なお、インターネット利用時に感じている不安について複数回答可能な質問をしたところ、6歳~12歳および13歳~19歳の約3割が「ソーシャルメディアでのトラブル」と回答していました。

10代が利用している主なSNSは?

現在、10代が利用しているSNSには、どのようなものがあるのでしょうか。

モバイル社会研究所の調査によると、10代が利用するSNSでもっとも多いのはLINEで94%、続いてX(旧Twitter)が81.2%、インスタグラムが71.2%と続いています。

年代別SNS利用率
年代別SNS利用率/モバイル社会研究所(最終閲覧日:2024.12.06)

10代のSNS利用割合が増加傾向にある一方で、闇バイトの募集をはじめとしたSNSを利用した犯罪行為が増加傾向にあります。

警察庁の調査によると、令和5年、SNSを起因とする犯罪に巻き込まれた18歳未満の子どもは1665人。令和元年をピークに減少傾向にあるものの、依然として高い水準で推移しています。さらに、被害児童数が減少傾向にあるにもかかわらず、SNSを起因とする殺人や強盗、放火などを含む重要犯罪等の被害にあった児童数が増加傾向にあります。

「SNSに起因する事犯」罪種別の被害児童数の推移/警察庁(最終閲覧日:2024.12.06)

10代のインスタグラムの利用に一部制限

SNSを利用した犯罪が増加傾向にあることを踏まえ、令和6年9月、アメリカのIT大手メタ社が、自社が運営するインスタグラムについて、SNS利用の安全性を高める目的で、10代の利用を一部制限することを発表。日本でも令和7年1月以降に移行される見通しです。

メタ社の発表によると、10代を対象に専用のアカウントを導入し、初期設定でつながりのない人と連絡を取り合うことができないようにするとしています。また、1日の利用が60分を超えた場合に通知が届くほか、いじめ防止対策として攻撃的な言葉は自動的に制限するとされています。

各国のSNS利用状況

日本でも10代の子どもたちのSNSの利用割合が増加していますが、世界ではどのような状況なのでしょうか。

令和6年7月、国立青少年教育振興機構が、日本、アメリカ、中国、韓国の4カ国の高校生のSNS利用状況を調査しています。

この調査によると、4カ国とも「SNSを利用している」と回答した割合が9割を超えていることがわかりました。

SNS利用状況(国立青少年教育振興機構)
SNS利用状況/国立青少年教育振興機構(最終閲覧日:2024.12.06)

また、平日の1日あたりのSNS利用時間に関する調査では、日本は「1~2時間未満」と回答した割合が26.7%ともっとも多く、「2~3時間未満」が25.3%、「3~4時間未満」が17.3%と続いています。

これに対しアメリカでは、「5時間以上」と回答した割合が21.8%と4カ国中でもっとも多く、中国では「30分未満」と回答した割合が35.6%という結果になっています。

SNS利用時間(平日)
平日にSNSを利用する時間/国立青少年教育振興機構(最終閲覧日:2024.12.06)

さらに、SNS利用し始めた年齢についての調査によると、日本ではSNSを利用し始めたのは「中学1年~3年」と回答した割合が49.6%ともっとも多く、「高校生になってから」と回答した割合も11.7%とSNS利用開始年齢が4カ国のなかでもっとも遅いことが分かりました。

一方で、SNS利用開始年齢がもっとも早いのは韓国で「小学入学前」が10.1%、「小学1~3年生」が15.3%となっています。

SNS利用開始年齢
SNS利用開始年齢/国立青少年教育振興機構(最終閲覧日:2024.12.06)

SNSをめぐる各国の取り組み

インターネットやSNSは、いまや情報収集やコミュニケーションツールとして欠かせません。しかし社会経験が未熟な子どもたちにとってSNSから受ける影響が深刻です。たとえば暴力的な動画や不適切な広告によって影響を受けたり、SNS上でいじめや詐欺にあったり、個人情報が漏洩されたりなど、さまざまなトラブルが頻発しています。

国立青少年教育振興機構が行った調査によると、架空請求や自分の写真が無断投稿される割合が、ほかの3カ国と比較してアメリカの被害経験率が多いことが明らかになりました。

SNSにまつわる被害
各国の高校生におけるSNS上でのトラブル経験/国立青少年教育振興機構(最終閲覧日:2024.12.06)

加えて、SNS上での悪口や嫌がらせの経験頻度についての質問では、「よくある」「ときどきある」と回答した割合が日本は4.3%、韓国は10.1%、中国は11.8%であるのに対し、アメリカでは約3割にも達しています。

各国の高校生におけるSNS上でのトラブル経験
各国の高校生におけるSNS上でのトラブル経験/国立青少年教育振興機構(最終閲覧日:2024.12.06)

つまり、アメリカの高校生は、ほかの国よりもSNSにまつわるトラブルやひぼう中傷の被害がより深刻であると言えます。日本でもSNSで受けたひぼう中傷によって命を絶つ若者や、SNSで募集された闇バイトに手を染める若者が増加傾向にあります。

SNSにまつわる問題が増加傾向にあることを踏まえ、世界各国でSNSの利用に年齢制限を設けるなどの対応が始まっています。

オーストラリア

オーストラリアでは、世界で初めて国家レベルで16歳未満のSNS利用を禁じる法律が可決されました。

アカウントなしで視聴できるYouTubeやメッセージアプリ、オンラインゲームなどの一部サービスは規制の対象外ですが、X(旧Twitter)やTikTokなどで十分な対策が行われていなかったと判断されたときには企業側に罰金が課されるようです。

アメリカ

アメリカのフロリダ州では令和6年3月、14歳未満のSNSアカウント取得を禁止する法律を制定。14歳から15歳の子どもがアカウントを取得する場合には、親の許可が必要になりました。

アメリカではフロリダ州以外にも、全米50州のうち35州が子どもを保護するためにSNSになんらかの対応策が導入される予定となっています。

さいごに

日本の10代の子どもたちが利用しているSNSにはLINEやX、インスタグラムなどが挙げられます。

これらのSNSには年齢制限が設けられています。
LINEは12歳未満の利用を禁止しているわけではありませんが、利用推奨年齢を12歳としています。インスタグラムは13歳未満の場合はアカウントが削除され、Xは13歳未満の場合はアカウントがロックされます。Xのアカウントを再度有効にするには、保護者の同意を得る必要があります。

世界ではSNSの利用に年齢を制限する動きが出始めていますが、日本では今のところ、そうした動きはありません。

SNSの利用は子どもたちに悪影響を与えているだけではありません。
勉強用のアカウントでつながって情報を共有している友人がいたり、ネット上の関係だからこそ相談できる関係が築かれていたりします。

制限するのではなく、子どもたちが安全にSNSを利用できるような教育を行ったり、環境を整えたりすることも大切なのかもしれません。

koedoでは、今後も子どものSNS利用についての定点観測を続けていこうと考えています。

(koedo事業部)

【参考】