“Anyone can be anything!”を目指して ~NPOエデュケーションキューブの取り組み~
今日はいつも意見交換をさせていただくNPO法人「エデュケーションキューブ」の取り組みを紹介したい。経済的な困難を抱えている子も、様々な要因で学校に行けない子も、自分の夢を諦めず、自ら実現するためのサポートをしてくれる場所である。このエデュケーションキューブが運営するフリースクール・オルタナティブスクール「スタディプレイス」は現在、福岡に3校展開している。
そのうちの1つの校舎に、私も受験指導に行ったことがある。みんな、各々の勉強を黙々と進めている印象だった。スタッフが見守る温かい環境の中で、オンとオフの時間をしっかり分け、ゆっくりとした時間の中で学習を進めている。普段、受験勉強に追われている塾とは対照的な時間の流れで、教えている私も心が癒される時間であった。
スタディプレイスでは積極的にICTを取り入れている。e-learningを活用して生徒の理解度に合わせた個別指導を行ったり、プログラミング教育に力を入れたりと学習支援にICTを活用している。そして、このコロナ禍で一気にオンライン教育へと舵を切り、自粛中も子供たちの学びを止めることがなった。
現在では1人1台iPadを支給し、どの子もオンライン授業を受けられるように設備が整えられている。最初は、いつも使っているノートからiPadにノートを取ることに戸惑っていたようだったが、子供たちも時間と共に慣れたようだ。実際に子供たちが取ったノートが講師の前ですぐに反映されるため、学習の質が上がったとのこと。普段からICT教材に触れ、いつも自分が使っているiPadが採用されていることもあり、コロナ自粛中のオンライン授業も円滑に進んだようだった。
もちろん、少人数であるからこそ可能であり、いまの公教育でここまでは手厚くはできないことは百も承知だ。だが、この取り組みが一人ひとりに行き届けば、「誰一人取り残さない世界の実現」ができると思う。
このコロナ禍では、大人の世界を見てもICT格差を感じた。中小企業の給付金ですらオンライン以外は受け付けられないものがあった。高齢で小さな店を営む店主は途方に暮れていたに違いない。給付金ひとつをとっても感じるこのICT格差は、就労や経済的な自立の格差にもつながると思う。そういった点からも、子供たちにICTの環境整備に手を差し伸べ、子供たちが自分で使えるようにまでスキルを育ててあげる必要がある。
いくら道具があっても、使い方を知らなければただの「モノ」でしかない。そのモノを普段の生活の中で有効活用する方法を教えていくことこそが、私たち大人の仕事だ。私は2人の子供を育てているが、親は、大人は、子供たちが一人で生きていく術を教えることが責務だと思っている。ICTスキルも同様に生きていくための術として子供たちに伝えていくことで、負の連鎖が断ち切れると思う。私のできることと言えばまだまだ小さく力もないが、一つひとつ現実を変えていきたいと思う。
いまやインターネットがあれば、どこにいても、いつでも、誰とでもつながることができる。このコロナ禍で一気に縮まった世界の距離を、子供たちにしっかり感じて欲しい。誰も一人ではい。誰も一人ぼっちではない。孤独ではないということを感じて欲しい。
それは子供たちだけでなく、孤立しがちな母子家庭のお母さんにも言える。経済的な負い目があると、どうしても自分を隠したくなる。手を差し伸べて欲しくても言えないときがある。私も母子家庭に育ち、母子家庭として子供を育てているが、経済的な悩みは誰にも言えない。言えなかった。
どのような家庭環境でも、誰もが夢を持ち、自分の持っている才能や特性を活かして将来への道を切り開く。それこそが“Anyone can be anything!”である。スタディプレイスの取り組みをもっと多くの人に知って欲しい。そして、一人で悩んでいる人がいたらぜひ、手を差し伸べてあげて欲しい。
この記事を書いたひと
松本 正美
(まつもと まさみ)
「学ぶ力は、夢を叶える力!」松島修楽館代表。中学3年生の時に「将来は塾の先生になる!」と決意し、大学1年生から大手個別指導塾で教務に就く。卒業後、そのまま室長として10年間勤務。その後、新興のインターネット予備校で生徒サポートの仕事に携わった後、2013年に松島修楽館を開業。単なるテストのための勉強だけではなく、「どんな夢でも、正しい努力によって叶えることができる」ということを子どもたちに伝えるため、根本的な「学ぶ力」を育むことを重視した指導を行っている。2人の高校生の母。趣味はサックス、タップダンス。