【学校3.0】序論:②オンライン授業は学校をどう変えるのか?

2021年1月18日

 前回のコラムで「学校とは国のためにあるものではなく、親の教育権を一時的に預けているにすぎないものだ」と書きました。

 今回のコラムでは、学校には教育のどの部分を預けているのかを考えてみたいと思います。

 子どもが大人になっていくためには、様々なものが必要です。

  • 衣食住をはじめとする生活環境
  • 親子のコミュニケーション
  • 体を強くするためのトレーニング
  • 大人になって仕事ができるようになるための基礎技術(勉強)
  • 様々なコミュニティ(人間関係

 数え上げればきりがありません。

 これらを大きく分けると「心・技・体」に分かれるのではないでしょうか?

心:心の成長です。自分のことを信じられる自信。他人の評価に左右されない、自分の価値を自分で決められる自己肯定感。頑張ればできる、やればできるという自己効力感などがあげられます。

技:大人になったときに仕事ができるようになるための技術です。国数英理社などの科目教育はここに入ります。部活などの人間関係や、学級運営などの民主主義の在り方などもここに入ると言っていいでしょう。政治思想などもここです。

体:健康な身体づくりです。僕は、家庭教師として不登校の子どもも教えていますが、学校の体育の授業がないことが子どもの成長へ大きな影響を与えていることを実感します。また、食生活や睡眠などの健康生活などもここに含まれるでしょう。

 今までの学校が心・技・体のどこを預かっていたかというと、実はかなりの部分を学校が負担していました。

 というのも、今の学校制度の基礎は明治5年の『学制』の発布に由来します。約150年前に今の学校の基礎が作られたんですね。

 当時の日本は江戸時代から明治時代に変わり、文明開化で西洋文明を取り入れようと必死な時期でした。

 当然、ほとんどの人たちは西洋文明を知りませんから、その多くは知識人や学校を通して教えられることになったのです。その当時は、地方の農民が自分の子に西洋文明を満足に教えられるはずもありませんから。

 この学制のはじまりから、日本では子どもの教育の大きな部分を学校が預かるようになってしまったのです。

 あれから150年が経ち、国民の意識は格段に向上しました。教育に関する見識も上がっています。そんな現代だからこそ教育を学校に預けるのではなく、親の教育権を復活させ、「親が受けさせたい教育を子どもに受けさせる」環境整備が大切だと思います。

 では具体的な環境整備について考えてみたいと思います。

 世界を席巻したコロナの影響で、ほとんどの人がテレワークやオンライン授業を体験しました。この変化のもっとも大きなものは、「地理的制約がない」というものです。

 今までの学校制度は「通学」を前提としていましたので、地理的な制約が大きく影響していました。公立の小中学校であれば原則学区内の学校に通っていましたし、私立であっても片道2時間以内の学校にしか通えなかったと思います。

 しかし、オンライン授業であれば、大阪の子が北海道の授業を受けることも、沖縄の子が東京の授業を受けることも可能なんです。

 これは大きな変化です。

 さらに、インターネットの普及で、マーケットが小さいコアな仕事が成り立つようになりました。インターネットがない時代は物理的・地理的な商圏で成立する仕事しかできませんでしたが、インターネットの世界では、日本全国を商圏として仕事ができるようになったのです。

 何が言いたいかというと、教育においても先生を細かく選んで授業を受けさせることが可能な時代になってきたのです。

 例えば、英語はアメリカのネイティブの先生、数学は京都の先生、国語は東京の先生など、科目ごとの先生を地理的条件を無視して選ぶことができるようになりました。

 これは教育方針にも影響を与えます。

 英語の授業一つとっても、文法中心の知識型教育が得意な先生もいれば、コミュニケーションを中心とした授業が得意な先生もいます。今までは(受験を通して)通う学校は選べても、先生一人ひとりの教育方針までは選べませんでした。それがオンライン授業であれば、先生一人ひとりを選ぶということさえ可能になるのです。

 これは教える側にも影響を与えます。普通の学校の先生になってしまえば、学校の方針に従ってある程度普通の教育をせざるを得ません。しかし、オンラインで日本全国から生徒を集めることができれば、特色を出した独自の授業展開が可能になってくるのです。

 そのような流れで増えていくであろうオンライン授業を活用すれば、親が自分の教育方針と近い先生を各科目ごとに選ぶことさえ可能になってくるのです。

■この記事を書いたひと

牧 静(まき・しず)

プロ家庭教師・母親コーチ。法政大学文学部教育学科卒。専攻は教育行財政学。大学卒業後も教育心理学、発達心理学、認知心理学等を学び、子どもの成長についての高い見識を持つ。大学卒業後15年間塾講師を勤め、教えた生徒は3,000名にのぼる。開成高校、慶應女子高校、早稲田実業高校など、名立たるトップ校の合格実績を有する一方で、不登校や学習に課題のある生徒へのサポート活動も行う。近年は「子どもの教育は親の教育から」と考え、母親向けのセミナーなども行っている。