【授業のためのICT入門】タブレットを使った授業を考えるときの“初心”

2021年1月18日

 今春、新型コロナの流行がはじまり、全国の学校では休校措置が予想外の長期間実施されました。寒さが本格化しはじめ、またジワジワと増加傾向がみられますが、こうした中「GIGAスクール構想」と呼ばれる誰一人取り残すことなく、子どもたち一人ひとりに個別最適化され創造性を育む教育ICT環境を実現する施策(文部科学省「GIGAスクール構想の実現について」参照)が予定より前倒しですすめられています。

 GIGAスクールのGIGAとは、Global and Innovation Gateway for All(すべての子どもたちにグローバルで革新的な道への扉を)の略で、子どもたち一人ひとりにモバイル端末を持たせることで、自分の特性や理解度に合わせ、創造性を育む教育を受けられるようにすることを意味しています。でも、モバイル端末を使って創造性を育む授業ってどんなものなんでしょう……。

 最初、この話を聞いたときはあまり想像がつきませんでした。なぜなら私にとってPCを含むIT機器は単なるツールであり、「何をしたいか」がわかっていない状態で何かをゼロから生み出すことはできないと思っていたからです。

 私たち大人はICTの技術を自分の学習に利用した、という経験がそれほどありませんので、「タブレットを授業に活用」と言われると、とてもハードルが高い気がしてしまいます。ちょっと想像がつかないし、子どもたちの前で上手に使いこなせなかったらどうしよう……と考えて緊張してしまう方もいらっしゃるかもしれません。

 しかし、すでに幼少のころから(0歳からの場合も!)タブレットやスマホに慣れ親しんでいる子どもたちであっても、「学び」のために自ら機器の特性を活用しているという場合は少ないのです。操作ができるということと、機能を理解しているということは違うので、それほど構えなくてもよいのかな、と思います。

 例えば文字ではわかりにくいから絵にして説明をする、実験の手元が見えにくいから写真にとって見せる、大きな分度器や定規を使って使い方の見本を見せる――より子どもたちの理解が進むように、学校の授業には今までもたくさんの工夫が取り入れられてきました。なぜ文字ではなく絵や写真のほうが良いと思ったのか、小さいものよりも大きいもののほうがわかりやすいと思ったのか。そこには絵なら絵の特性を知ったうえで、子どもたちの学びのサポートに使うというひらめきがあったからではないでしょうか。

 デジタル機器も同じことなのです。「創造性」の前に、モバイル端末では何ができるのか?について考えてみましょう。

 GIGAスクールという横文字からは、なんだか授業のすべてにネットやタブレットを使わなければならないような印象を受けますが、単純にタブレット等の特性を知ることで、「あ、これを使うともっと子どもたちがわかりやすくなるな」というアイデアを増やしていくことができる、その程度に考えるくらいで良いのではないかと思います。

 では、デジタル機器(学校で多く導入されているタブレット)の機能とは何でしょうか。

  • 写真撮影ができる
  • 動画撮影ができる
  • 音が録音できる
  • 大型テレビなどにつなぐことができる
  • データを保存し、共有することができる
  • インターネットにつながる
  • すでにある有料、無料のたくさんのアプリをインストールすることができる
  • (アプリによっては)文字や絵を書き込むことができる

 つまり今まで紙、絵の具、写真、ビデオなど、いろいろなツールに分かれていた機能が、ひとつのタブレットの中にたくさん入っている、といった感覚なのです。そしてこれらの最大の利点は「何度でもやり直しをすることができる」ことと、「一人ひとりの手元で見る(使う)ことができる」点だと思います。

 例えば子どもたちが1枚しかない紙に絶対に間違えないように何かを書く、というシーンがあります。多少のプレッシャーを感じ、真剣に取り組むというとても大切な課題です。でも、練習にタブレットを使って納得いくまでシミュレーションをすることで、自信をもって本番に向かうことができます。写真も、撮影して現像をして出来上がってきたものがうまく撮れていなかった……という経験も大切ですが、すぐに出来栄えを確認することができれば、その次のステップにスムーズに進むことができるでしょう。

 また、動画や友達の作品などを自分の手元でゆっくりとみることで、「見えない!」「もう一度見たかった」という不満や不安を減らすことができます。個人の理解のペースに合わせることができるのです。

 タブレットを授業に使う側の先生方にも同じことが言えます。授業のアイデアを練るとき、「こんなことができないかな?」と何度でも試すことができますし、情報交換の際も自分の手元にデータがあればわかりやすく伝えることができます。

 今のままでも十分に授業は成り立つのだけれど、デジタル機器を授業に取り入れることで、子どもたちの「わかった」「楽しい」「安心」がちょっとだけ増える、子どもたちの理解や課題への取り組みに対する心のハードルを少し下げてあげられるかもしれない、と、そんなふうに考えてみると、タブレットを使った新しいひらめきが生まれるかもしれません。

■この記事を書いたひと
吉田理子(よしだ・りこ)
1971年生まれ。Windows95発売当時に社会人となり、以降パソコン教室講師やITサポート等の仕事に従事。2005年に企業・学校向けのIT、情報教育を目的とした企業組合i-casket設立。2018年には一般社団法人s-netサポーターズを設立し、主に小中学校にて子供・保護者・教員向けの情報リテラシー、プログラミング的思考に関する講座を行う。そのほか地域ボランティアや主権者教育の活動をボランティアで。趣味は料理と読書。